オメでたい頭でなにより「思いやりをぶつけ合え」笑顔の繋がりで広げる和
INTERVIEW

オメでたい頭でなにより「思いやりをぶつけ合え」笑顔の繋がりで広げる和


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:20年04月30日

読了時間:約12分

 日本一オメでたい人情ラウドロックバンドのオメでたい頭でなによりが29日、2ndフルアルバム『オメでたい頭でなにより2』をリリース。「楽しく、幸せに騒げる、底抜けに自由でオメでたいバンド」をコンセプトに、ラウドかつポップ、バラエティー豊かな世界観のアプローチで活動する。昨年リリースした1stフルアルバム『オメでたい頭でなにより1』から約1年半。今作は昨年8月にリリースしたシングル曲「乾杯トゥモロー」やタイアップ曲などを含む全12曲を収録。アルバム制作について、バンドの信念やこれからの展望なども含め赤飯(Vo)に話を聞いた。【取材=平吉賢治】

「頑張っていきまっしょい」は凄く大事な子

『オメでたい頭でなにより2』通常盤ジャケ写

――オメでたい頭でなによりの「さくらんぼ」の動画を観ていて感じたのですが、赤飯さんの歌い方のバリエーションは凄いですね。

 大学の時からあんな感じでやっています。あのアレンジは軽音楽部のバンドでやっていた時のアイディアで、それをオメでたい頭でなによりでもやってみようと思って作ったんです。確かに色んな声を使ってライブをやってました。リンキン・パークと松浦亜弥を同じライブでやったり。そのバンドは「ついていけない」って言われて半年くらいで解散しました(笑)。

――極端なセレクトですね(笑)。赤飯さんの音楽のルーツは?

 最初に買ったシングルCDが嘉門達夫さんの「替え唄メドレー2」で、そこからアルバムも買いました。次がとんねるずさんの『みのもんたの逆襲』で、そのあたりから積極的にCD屋さんに行ってました。小学校4年生の頃に家のCDラジカセで録音する遊びをしだして、それが当時の自分にはワクワクでしかなかったんです。ラジオ番組みたいに喋ったり、自分が好きな歌をピックアップして、ベストテンのランキング形式で自分で歌ったり(笑)。あと、CDのカラオケバージョンをバックに歌を入れて、本人とどれだけ相違なく歌えているかチェックしたり、そういう遊びをよくしていました。

――歌のコピーのような感じ?

 そうです! 最初はスピッツさんとかシャ乱Qさんとか。1990年代半ばのオリコンランキング上位のバンドさんなどをいっぱい聴いて真似していました。

――そういったアプローチが今の赤飯さんのボーカルスキルの土台となっている?

 たぶんそうだと思います。声帯模写というか、アーティストさんの声質、癖を真似るということばかりやってきて。

――特に声帯模写をしたアーティストは?

 つんく♂さんはめっちゃ真似していました。語尾の処理の仕方とかビブラートの振り幅とか。でも最初はちりめんビブラートみたいになっちゃうので、つんく♂さんみたいに揺れのビブラートを獲得するために演歌をコピーしてみようと前川清さんの歌を聴いて真似してとか、段階を経てというのもやっていました。和っぽい歌い方は演歌のコピーから得ていると思います。

 あと女性演歌歌手の方、それこそ坂本冬美さんや石川さゆりさんの節回しも無意識に出ていると思います。「演歌風の歌い方」とか自分の中でスイッチがあって、曲によってそれに振っちゃうんです。なりきる気持ちでやった方が上手くいくんです。今作だと3曲目「踊る世間もええじゃないか」とかはそういうエッセンスをめちゃめちゃ入れてます。

――色彩豊かな声にはそういった背景があったのですね。さて、メジャーデビューから2年が経ちましたが、現在までどのような変化がありますか。

 オメでたい頭でなによりを知ってくれる方がだいぶ増えてきたなと思います。それはライブの動員もそうですし、いろんなところから感じます。バンドもこの2年で成長しているなというのはこのアルバムを作っていく中でも凄く感じました。

――今作はサウンドが力強く、聴いていて楽しく暴れたくなるような気分になります。テーマなどはあるのでしょうか。

 ありがとうございます。今作はコンセプトありきで作ってはいなくて、シングルをアルバムに入れようというのはあるから「乾杯トゥモロー」は入れて、あとはタイアップのお話を頂いていたものも作っていたので、それも入れつつとなった時に「あとこういう曲ほしいよね」という感じでバランス良く詰めていきました。

――1曲目「頑張っていきまっしょい」はどのように制作されたのでしょう。

 これは昨年12月末に観たとある映画にインスパイアを受けて、うちのメインコンポーザーの324(Gt)に「こういうのやりたい!」と言って、324の作業場で2人で進めました。オケをしっかり作ってくれて、メロディも最初彼が考えたものをはめてくれて、そこに僕が歌詞を乗せるというのがいつもやっているやり方なんです。「頑張っていきまっしょい」に関しては彼が作ってくれたメロディを最初やった上で何回も試行錯誤して、「メロディも俺にやらせてくれ」と頼んで。歌詞とメロディを同時に体を揺らしながら作っていくみたいなやり方を初めてしたんです。自分の口当たりと体の気持ち良さを最優先、みたいな。

――フィジカル的なニュアンスを大切にしたのですね。

 そうそう! それで構成されているんです。サビをみんなにすぐ覚えて口ずさんでもらえるというのが大前提で。今回はそれに対して、<頑張っていきまっしょい>というのをはめるのが最初に降ってきたんです。これをリピートするのが凄く良いなと思って。

 というのも、僕はもともとモーニング娘。オタクで。モーニング娘。さんはライブ前に「頑張っていきまっしょい」と掛け声をするんです。僕も昔からそれの影響を受けていて今でもライブ前はみんなで円陣を組んで「頑張っていきまっしょい」ってやっているんです。だからこのタイミングでこの曲を作るのは凄く意味のあることだと思うんです。

――すると、かなり大事な曲ですね?

 めちゃめちゃ大事な曲です! 本当は3曲目に入れようかという話もあったんですけど、この曲に込めたメッセージや、我々からの今の世情に対してのメッセージを考えると、頭に一番聴いてほしい曲を置くのがいいんじゃないかということで1曲目にしました。それで2曲目にインストの「今いくね」があるというちょっと変わった構成になっているんです。

――確かにそうですね。1曲目がインストというのはわりとありますけど。

 そうですよね。あと、歌詞の内容に関しては制作中に今の(コロナ)騒動が起き始めたんです。もともと応援歌というか、「みんなで頑張っていきまっしょい」と言いながらチームで鼓舞し合っていくような曲にしたいと思っていたんです。そこに今の新型ウイルスの状況が降りかかってきて、正に今こそこういうメッセージを発信したいと思ったんです。ちょうどそこにリンクしたというか。途中でこの状況に合わせて歌詞も変えてと。そこで最終的な歌詞が出来上がっていったという流れがあります。

――そうすると、今作ではシングル曲やタイアップ曲も並ぶなか、1曲目「頑張っていきまっしょい」は重要なトラックですね。

 僕の気持ちは凄く1曲目に出ています。やっぱり自分のメロディ、歌詞でこれだけ作るのはオメでたい頭でなによりの曲の中ではなかなかなかったことなので。まず、メンバーを黙らせる曲を絶対作ってやろうと思ったんですよ(笑)。

――「これは文句ない」というような?

 そうです。僕がメロディと歌詞を自分で持って行っても誰も文句言わないようなクオリティのものを。凄いプレッシャーもありましたけど、それがちゃんと形になったなと。難産だった曲なので、思い入れが凄く強い曲です。一番伝えたいメッセージというもの含めて「頑張っていきまっしょい」は凄く大事な子ですね。

――曲を聴くとその想いとエネルギーが伝わってきます。

 ある意味“オメでたい頭でなによりらしさ”もありつつ、良い意味で、らしくない部分、初の試みのようなところもあるんです。歌い方も今までなかったアプローチをしているつもりなので。

全部笑顔で繋がっている

――6曲目「SIX ON THE PACK(DJデンジャー◎ティガー feat. ザ・そふとたっち)」についてですが、テレビ朝日系『ワールドプロレスリング』4、5月ファイティングミュージックとなっていますね。

 もともと僕とぽにきんぐだむ(Gt/Vo)が、2018年10月からオメマッチョプロジェクトという肉体改造の企画をやっていたんです。そこに携わって頂いたのがマッチョ29というマッチョアイドルグループの植田さんという方なんです。植田さんが個人で経営してらっしゃるCLOVERというジムに2人で毎週通って、約半年間肉体改造をして、2019年4月4日のワンマンのオープニングでその肉体を晒すという流れがあった中で「筋肉の曲も作りたいな」というのがあったんです。

 あとは、ぽにき君って突拍子もない面白いアイディアをよく放ってくれるんです。「推しごとメモリアル」も彼のアイディアなんですけど。今回「ライブハウスをクラブに変えたい!」みたいなことをいきなり言いだして。「クラブでかかってブチ上がるような曲を作りてえから324頼むわ!」「いいよ!」という感じで出来た曲です。

――しっかりとしたコンセプトがある曲なのですね。7曲目「ザ☆キュ〜ティクルピーポー」についてですが、こちらもタイアップの曲ですね。MVではみなさん女装していましたが、撮影中の雰囲気は?

 まず、そもそも30代の男5人に女性用のシャンプーの話を振ってくるのって面白いなと(笑)。先方さん的には「推しごとメモリアル」とか、ああいうところの自分達の飛び道具みたいなものをできたら面白いんじゃないかということでお話を頂いたと思うので「なるほど」と。じゃあ女装も免れないなと(笑)。この曲に関しては先方さんの注文に添いつつも自分達のやりたいことをブチ込んだという感じです。サウンド面での洋楽からのインスパイアもあったりする曲です。

――女装、似合ってらっしゃいました(笑)。

 それも良いのか悪いのかよくわからないですからね(笑)。

――観ていて凄く楽しめるので良いことかと思います。

 良かったです!

――次に9曲目「哀紫電一閃」について、こちらはアニメ『ケンガンアシュラ』OP主題歌ですね。タイトルの意味が気になるのですが。

 タイトルは歌詞の中から引っ張ってきました。字面を含めて一番格好良かったのを選んで(笑)。これも『ケンガンアシュラ』のお話を頂いて、「“No ボケ”でお願いします」と言われていましたので「わかりました。ボケなしで!」と。歌詞は英語っぽく聴かせるというのをトッププライオリティで作っていて。英語っぽい耳当たりを目指すために、母音をメロにあてて、その前後に子音がくっついたような聴こえ方をする言葉を選ぶ 作業をしていました。

――それもあるのか、サウンドも含めて洋楽テイストを感じました。

 僕がリンキン・パークや(米バンド)リンプ・ビズキット、(米バンド)レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン(米バンド)などのラウドロックが超好きなので、そこから影響を受けたところもあるんです。

――なるほど。11曲目「ピーマン」についてですが、ストレートなロックンロール的アプローチが聴けますね。

 作詞作曲が324なので、彼の世界観の曲に仕上がってます。彼の書く詞って僕やぽにき君には出来ないものなので、それがちゃんとオメでたい頭でなによりの楽曲の幅を広げてくれているというか。より説得力や深みを作ってくれて凄くありがたいなと思っています。

――MVではロンドンブーツ1号2号さんが出演されていますが、この経緯は?

 バンド結成してすぐに『骸骨祭り』というフェスに出させて頂いているんです。そこでけっこう色んなバンドさんと接点が生まれていて、その中の一つにjealkbという田村淳さんの弟さんがやっている(という設定の)バンドがあるんですけど、ちょこちょこ対バンをさせていただいたり、現場でご一緒することもあったりで、誘って頂くことが増えて、その流れで今回「こういう曲があるのでよかったら」という相談をさせて頂いたんです。

――楽曲とMVの世界観がリンクしている?

 そうです。この曲は「大人になるってどういうことなんだろう」という324 の自問自答の曲なんです。歌詞を見て頂くとわかると思うんですけど、彼なりのアンサーを最後に出しています。あのMVはそれをそのまんま表現しているわけではないんですが、曲の持つ意味やメッセージにはしっかりリンクしていると思っています。登場するのはロンドンブーツさんを入れて、同性の友人2人組が5組。時間が経っても変わらないものを表現しています。過去の笑顔の写真と現在が全部笑顔で繋がっているんです。

各々時を経て、しっかり大人になって、見た目にも年齢が刻まれている現在の様子。それと、昔の写真が交互に出てきます。今も当時と変わらず笑顔で再会できる人がいるって、ものすごく尊いことですよね。過去の笑顔から、現在の笑顔までの間にはきっとそれぞれに、辛いこと悲しいこと、絶対にあったはずなんです。それでもなお、それぞれがいろんなことを乗り越えて、また笑顔で一緒の時間を過ごせている。つまり、笑顔で時間と縁が繋がっているというか。それがこのMVのテーマの”変わらないもの”です。

今回、ロンブーさんにはそれを誰よりも的確に表現していただいていると思います。お二人の状況が、大切な人が倒れそうになっていたら手を差し伸べる、っていう歌詞にもリンクしています。ロンブーさんをはじめ、みなさん本当にめっちゃくちゃいい笑顔でなんですよ!

「思いやりのぶつけ合い」の精神

『オメでたい頭でなにより2』初回盤ジャケ写

――そしてアルバムラストはチルアウトなサウンドで締めくくっていて素敵ですね。

 あれはボケですよ?

――あれ? 綺麗に締めくられていると感じたのですが…。

 大ボケですよ(笑)。「何でここでいきなりチルくなるねん」っていう。

――真に受けてしまったのですが(笑)。

 それはそれで全然いいですよ。真に受けてもらったら騙されているというか術中にハマッているので(笑)。

――どちらにとってもいいと(笑)。先ほどのMVの話でも感じたのですが、赤飯さんはきちんとビジョンを持って何事にも対峙していると思います。そこでお伺いしたいのですが、バンドにとって最も大切にしている信念は何でしょう?

 「思いやりのぶつけ合い」です。自分達のライブで毎回必ずお客さんに言ってるんです。エゴであったり、ただ感情に任せてオラァとやるんじゃなくて、思いやりをぶつけ合うことが大事だぞと。うちのライブはお客さん騒ぎはるんで、モッシュだウォール・オブ・デスだとか色々ありますから。それをやるにあたって、ただ体をぶつけ合うじゃなくて「思いやりをぶつけ合えよ」ということを言っています。それを念頭に置いておくだけでだいぶ変わってくるんですよね。

 例えば意図しないで起こることってあるじゃないですか? 無駄に痛くしてしまったとか、足を踏んでしまったとか。そういう時にちゃんと一言「ごめんなさい」と言えるだとか、何かをしてもらったんだったら「ありがとう」と言うだけで、その時の空気は全然変わるし、最終的にちゃんと楽しい思い出としてそれを家に持って帰ってもらえることができると思うんです。

 でも、それが「嫌な思いしたわ!」となったら、みんながみんなすぐ切り替えられる人ばかりではないですから。せっかく時間もお金も割いてうちのライブに来てくれているのに、楽しみが平等に得られないというのは不公平だと思っているので。その空間、時間を一緒に共有して作っていくうちの一人、それを一緒に構成する仲間なんだなという意識を持ってみんな各々思いやりをぶつけ合って、そこで得られる体験、経験というのを家に持ち帰って日常生活でも役に立ててほしいということを言っています。

――素晴らしい信念だと思います。それをバンドという大きなエネルギーで拡散することは素敵ですね。

 ありがとうございます。我々の知名度が上がって、しっかりその考えに共感してくれる人が増えたら、少し世の中優しくなるんじゃないかなとわりとマジで思っちゃっているので、それに協力して頂ければなと(笑)。

――では最後に、オメでたい頭でなによりのこれからの展望は?

 より多くの人に我々の信念を伝えるにはどうしたらいいんだろうというところです。多分それを探していくこと、より伝わりやすい形に変わっていくのがバンドのブラッシュアップかなと思っています。今作は1stアルバムよりもそこがよりブラッシュアップされていると思っているので、それをバンドの成長という風に捉えてもらえると嬉しいです。

(おわり)

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