元AKB48でシンガーソングライターの長久玲奈(19)が自身初のフォトアルバム『長 久玲奈1stフォトアルバム KURENA』(KADOKAWA)をリリースした。「音楽を探す」をテーマに故郷の福井と東京で撮影。ミュージックカードとも連動しており、撮影の道中で感じた思いを新曲にしたためた。オフィシャルファンクラブも開設した長。卒業後の自身を振り返るきっかけにもなった今回の撮影を振り返ってもらった。【取材・撮影=木村武雄】
彼女の心情が見える「My Own Way」
彼女の楽曲に「My Own Way」がある。「何にも惑わされず自分の道を自分で切り開いていきたい」という思いを込めた曲だ。本作と連動した同時発売のミュージックカードの表題曲にもなっている。
2019年2月に約5年間におよんだAKB48 チーム8としての活動を終えた。小学5年生の頃から抱いていたシンガーソングライター、そして、モデルになる夢を叶えるための決断だった。そして、その年の5月に上京した。「My Own Way」はそんな折、福井で一人歩いていた時に感じたことをしたためた。
「キラキラとした東京にウキウキしていましたが、いざ東京で暮らし始めたら、一人でどうすればいいのか迷ってしまって。当時は東京に友達はいなかったし、もちろん親は福井にいるので東京に頻繁に来ることもできなくて…」
マイナー調にのる、<ずっと探している居場所><偽りのない未来><きっとこの先にMy Own Way>という一節からは当時の彼女の心情が見えてくる。
「音楽を探す」をテーマにした本作は、故郷・福井と東京で撮影。私服は全てセルフコーディネイトし、セルフメイクもした。
話すのは苦手だ。言葉に漏れる思いを、エッセイ、ファッション、曲を通して表現している。
「原宿では目立つフリフリのワンピースにしたり、福井の東尋坊では、あえてヒョウ柄で足を見せました。福井の田んぼのあぜ道では、まわりが緑なので赤と青のファッション、帽子も赤で揃えて可愛めな感じにしました」
原宿ではクールな表情を見せているのに、福井ではどこか穏やか。ファッションもメイクもどこか非対称的だ。表情については意識していなかったというが、見返して気づいたことがあるという。
「最近はあまり笑わない表情を求められることが多くなっていました。アイドルだった当時はずっと笑顔でいたけど、ソロになって『あまり歯を見せないように』とも言われて。でもこうして見ると微笑むこともいいなと思いました」
生まれ育った故郷での撮影で表れたのは「素」の彼女。「流されないように」と力む東京ではクールを装っているようにも感じる。
曲に込めた思い、変化の兆しも
その福井では登校で使っていた「えちぜん鉄道」や母校「啓新高等学校」、友達との待ち合わせにも利用していたショッピングモール「ハピリン」、中学校が近かった「三国サンセットビーチ」などを巡った。
当時を懐かしんだ撮影。ミュージックカードの曲にも当時の記憶が香る。
【1曲目=空想世界】AKB48の時はダンスが苦手で、東京から福井まで電車で4時間ぐらいかかるんです。その移動中に寝られない時に1人で考え込むことが多くて。本当は辛くて逃げだしたい気持ちもあったけど、そういう時こそ逆のこと、楽なこと、現実ではありえないことばかりを考えるようにしていて。そうしたAKB48時代のことを思い出して書きました。
【2曲目=何度でも】学校を卒業した時に書きました。「ハピリン」という場所があって、そこで友達とずっと喋っていました。卒業してからはそこに集まることもなくなって。色々な試練があるけど、またここで出会えたらいいねという思いを込めて書きました。
【3曲目=あの日の景色】福井から東京に出ると決めたときに書いた曲です。福井に住んでいた時に見た東京と、実際に福井から上京して東京に住んだ時の印象が全然違くて。福井にいた時に見た東京の景色をもう一度見たいというか、そういう思いを込めました。思った以上に東京には人が沢山いて、電車もせかせかしている。そのなかで流されないで変わらずに夢を追い続けたいと。
父の影響でアコースティックギターを始めた。憧れは椎名林檎とYUI。最近は表現の幅を広げようと洋楽も聴いている。収録曲「パパ」には父への思いをのせた。
楽曲とエッセイに秘める自身の思い。
「読んで頂ければ分かると思いますが、結構一人で考え込むタイプなんですよ」
明るい表情でそう語るが、彼女が作る曲は暗めのマイナー調が多い。しかし、そんな彼女にも変化が表れた。2曲目の恋愛曲「ねぇ好き」は明るめのアレンジ。「こういう曲も増やしていきたいなと思いました」
葛藤もあったAKB48卒業からの数カ月間を経て彼女は今、しっかりと前を見る。「今は充実しています。久しぶりに福井に帰って思ったことが沢山あって。原点に帰れた気がしますし、やっぱり音楽が好きなんだなって思いました」
新たな歩みを始めた彼女だが、関係者がこうもらした。「撮影が終わった後に髪を切ってしまったんですよ…」
芝居の世界でも作品がクランクアップした後、気持ちを切り替えるために髪を切ることはある。
長久玲奈「いや、あまり意味はないです。髪が痛んでいたので…」
「話すのが苦手」という彼女。本音は、のちに書くであろう曲で確かめることにしよう。
(おわり)