KALMA「何年経っても愛されるバンドに」10代が鳴らす等身大のサウンド
INTERVIEW

KALMA「何年経っても愛されるバンドに」10代が鳴らす等身大のサウンド


記者:榑林史章

撮影:

掲載:20年03月08日

読了時間:約11分

ここまで追い詰められたのは初めて

『TEEN TEEN TEEN』ジャケ写

――「雪のまち」という曲もあって、これは地元・北海道のことを歌っている。

 「雪」というワードを使うことで特別感が出るのは、北海道在住のバンドの特権です(笑)。きっと東京の人が歌う「雪」というワードは、きっと東京は雪がめったに降らないから、雪が特別なものだと映るんだと思うし。北海道民にしたら、雪は日常生活には当たり前にあるものだから、雪と共に生きている僕らの日常が、この曲から少しでも伝わったら良いなと思います。

――サウンド面からも、キラキラとした雪の情景が表現されていますね。

 そうですね。スレイベルのシャンシャンという音を入れたり、イントロのギターのフレーズも、雪を意識しました。音でちゃんと雪を表現しようと試みたことは今までなかったし、ラブソングにも聴こえる歌詞なんですけど、ラブソングっぽいものは初めてだったので、新しいことに挑戦した曲になりました。

 今までは「アルバム1枚全部元気で行こう」とか思って作っていたけど、今回は元気にもなるし、懐かしい気持ちにもなるし、お母さんありがとうの気持ちとか、雪って良いねとか。すごくバラエティに富んでいて緩急がある作品になりました。

――KALMAのいろいろな面が観えるアルバムになった。一発録りでレコーディングした曲もあるとか。

 ほとんどそうですけど、一発録りは勢いが出せるので好きです。3人で一つの部屋に入って、僕とベースはクリックを聴かず、ドラムだけクリックを聴いて録ったのが2曲くらいあって。他の曲は、ドラムもクリックを聴かないでフリーテンポで録ったので、そういう曲は曲中でテンポが変わったりしているんです。そういう曲は聴いて面白いと思うし、生感も伝わると思うし。そういう部分でも、聴いていて飽きないと思います。

――レコーディングは北海道ですか?

 基本的に北海道で、1曲目と2曲目は東京で録りました。地元のスタジオはちょっと町外れにあるんですけど、エンジニアさんとも顔馴染みだし、休憩で外に出ると、北海道を中心に展開しているセイコーマートっていうコンビニがあって。やっぱり地元はリラックスして落ち着きます。その一方で東京でのレコーディングは新鮮だし、良い刺激や緊張感がありますね。

――そういうメリハリもKALMA感ですね。作詞作曲はすべて畑山さんが担当していますが、全曲書き下ろしで、作るのは大変でしたか?

 今回全部で7曲収録しているんですけど、レコーディングの初日にあと1曲が完成していなくて、ギリギリ最後に出来たのが「TEEN」です。でもそれはそれで、レコーディング中に思ったことや感じたことが、書けたので良かったです。他の6曲でやっていないアプローチや、まだ歌詞にしていない言葉もあったし。だからこそ、とても僕ららしくて、言葉も真っ直ぐだなって思います。

――このアルバムを、まとめて表しているような曲になりましたね。でも他の曲のレコーディングと並行して曲を書くのは、焦らなかったですか?

畑山悠月

 とても焦りました。期間中に出来なかったらどうしよう! と思って。それで、レコーディング最終日前に、徹夜で仕上げたんです。スタジオで作って、スタジオでメンバーに聴いてもらって、「よっしゃ録ろう!」って。さすがにここまで追い詰められたのは初めてでした。

――そういう制作の気分転換にやることとか、音楽以外での趣味はありますか?

 映画が好きなので、映画館に行って観たりDVDを借りて観たり、最近だと映画館で『パラサイト』を観たんですけど、とても面白かったです。他には、スキーとかスノーボードとか。スキーは普通に小中学校の時に習うし、高校から趣味でボードを始めていて。

――意外とアクティブなんですね。

 よく意外だって言われます。子どもの頃は野球もやっていたし、メンバーにはバスケをやっていたやつもいて。他にもお笑いが好きで、札幌よしもとのお笑いライブをよく観に行きますね。お笑いは、やっぱり言葉のセンスが面白いから、作詞の参考にもなります。それをメモしているというわけではないけど、自然と吸収されていて、お笑いを観た後に良い曲が書けることもあるんです。

――吸収されていたものが、ふとした時に出て来て曲になるんですね。

 メロディも、ふとした時に出て来ることが多くて。今作の「これでいいんだ」を始め、これまでの作品のリード曲はほとんど、ふと浮かんだものばかりです。今作で言うと、ギターを持って作るぞ!という意識で作ったのは「TEEN」くらいで、他の曲は全部ふと思いついたメロディをボイスメモで録っておいたものが元で、そこからコードを起こして作っています。そういうメロディをつなぎ合わせたほうが、意外性のあるコード進行になったり、予想していなかったものになったり、すごく面白い曲になるんです。イロ色なアーティストのインタビューを読んでも、そういう人がけっこう多くて。今作は、意図的にそういう作り方で作りました。

――どういう時に思いつくことが多いですか?

 一番多いのは、バイト帰りのバスの中です。他の人に聞こえないように、バスのエンジン音が鳴っている時にコソコソっと録るんです。友だちと公園で遊んでいる時とか、学校で授業中に思いついたこともあって。授業中の時は、机の中に携帯を隠して頑張って録ったんですけど、後で確認したら先生の声のほうが大きくて、まったく聞こえなかったです(笑)。

――じゃあストックがまだまだたくさん?

 あります。だから次のリリースの時も、楽しみにしていて欲しいです。

――さてメジャーデビューを機に、今後はどんな活動をしたいですか?

 フェスに出たり、大きなステージにも立ちたいですけど、一番はどの世代にも、何年経っても愛されるバンドになることです。Mr.Children、サザンオールスターズ、スピッツ、みなさん上の世代からも若者からも支持されていて、長年そういう存在でいるのは本当にすごいことです。僕らもそういう風になりたいです。そうなるためには、背伸びをせず等身大でいることが大切なのかなと思っていて。ティーンである僕らの等身大を歌うことで、年下の子は「こんな高校生活を送りたい」とか「こんな十代を過ごしたい」と思ってくれれば良いし、大人の人からは「懐かしいな」とか「こんな頃があったな」とか思ってくれたら嬉しいです。

(おわり)

作品情報

KALMA
2nd Mini Album『TEEN TEEN TEEN』
VICL-65327 2000円 + 税

[収録曲 ]
01. これでいいんだ
02. 素晴らしい毎日
03. 1 分間の君が好き
04. コーラ
05. 雪のまち
06. わがまま
07. TEEN

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