ハナレグミが23日、大阪・オリックス劇場で『THE MOMENT』のツアーファイナルを行った。

(撮影=渡邉一生)

 ハナレグミ最新ツアータイトル『THE MOMENT』は、これまで永積 崇が積み重ねてきたキャリアの中で、その時々に“音楽からもらった感動の瞬間を思い起こし、観客と音楽を通じた感動の瞬間を共有すべくという意味を込めて名付けられている。全3公演あり、2月7・8日は東京のNHKホール、2月23日は大阪のオリックス劇場。2月7日は“HORN NIGHT”と題し、東京スカパラダイスオーケストラとの編成で行ない、2月8日・23日は“STRINGS NIGHT”と題し、LITTLE CREATURESの鈴木正人がバンマスを務めるバンドに美央ストリングスを迎えた編成で行なう。

 ツアー最終日でもある2月23日オリックス劇場。舞台が明るくなり、鈴木含む4人のバンド、そして後ろに8名の美央ストリングスが見えた瞬間、その壮大な編成に客席は思わずざわつく。軽快な感じで永積も登場するが、照明が暗くなり、1曲目「光と影」を歌い出した瞬間、また客席が大きく歓声が湧いた。観ただけで圧巻な12人編成を見事に従えて、その歌声で一瞬に場を掴んでしまう凄みに、我々観る側は驚かざるを得なかったったのだ。初っ端から瞬間、瞬間の魅せ方に感服する。

 まだ、1曲が終わっただけだというのに割れんばかりの拍手に口笛まで鳴るわと大盛りあがり。この時点で今日のライブが良いものになるという確信を誰もが持ったであろう。続く「あいのわ」では照明も明るくなり、ゆったりとしながらもどっしりとした演奏と歌が響き渡る。ホールの会場中に真っ直ぐに届く永積の伸びやかな歌声がとても気持ち良い。

 MCで改めて永積が今回のツアーコンセプトとして、影響を受けた音楽で過去現在未来を繋げたい事を明かし、井上陽水のカバー「いっそセレナーデ」を披露。小学校の時に家族で行ったスナックのカラオケで歌ったが、その際のイメージビデオがエロかったという何でもないミニ解説が付く事で、この曲を知ってる世代も知らない世代も想像力が膨らみ、より楽曲の世界を楽しめるように想えた。また、人気曲「明日天気になれ」では、「明日の天気が気になってます。こういう始まりでいい?!」なんていうフランクなノリによって、観客とのコール&レスポンスも生まれやすくなり、まるで共鳴するかのような一体感が出る。

 永積ひとりによる弾き語りのパートでは「大安」、そして、ナイジェリア出身のシンガーであるアシャ「360°」のカバーが歌われる。先程までの13人による大所帯から、たったひとりになったというのに何も凄みが変わらない上に、これまで以上に歌がはっきりくっきりと届く。そこに鈴木のベースが加わり、これまた影響を受けたというボブ・マーリー「No Woman, No Cry」へ。椅子を使った小芝居を経て歌い出すが、高校受験時の母親や先生や親戚や近所の人とのやり取りを即興で歌詞にしていく様は、他のミュージシャンのライブでは中々観れない光景であった。ただ歌うだけでなく、ここまで永積のアドリブや表現力が増しているのかと驚くしかなかった。

 このライブについて、驚きの連続と言葉にすると陳腐だが、キャリア20年以上あるミュージシャンのライブで未だに驚きが連発される事は誠に喜ばしい事だし、何よりも歌の最後に永積が「MOMENT!」と叫んだのが、とてつもなくエモーショナルだった。まさに人生の瞬間を切り取って歌われた楽曲でもあった。この後、ウィスキーとおぼしきものを呑み、カランカランと氷の入ったグラスを鳴らし、CM曲でもお馴染みの「ウイスキーが、お好きでしょ」や「音タイム」、「Peace Tree」を挟み、このツアーに合わせて作られ、会場で限定販売された新曲「独自のLIFE」へ。「Peace Tree」と同じ様にラップも入る楽しいナンバーで、続く「オアシス」まで陽気なムードで包まれる。そこから「おあいこ」、「家族の風景」、「きみはぼくのともだち」と一転して、しっとりとしたモードで、じっくりと聴かしていく。この振れ幅が本当にたまらない。

(撮影=渡邉一生)

 本編ラストナンバーの前に、ボーカリストの声がデビューから月日が経つと高い声から柔らかい声へと変わっていく事や、そのキャリアの中で、いつかジャズスタンダードを歌いたかった事が語られた。そして、チャールズ・チャップリン作曲で近年では映画「ジョーカー」でも注目された「SMILE」へ。舞台後ろには電飾で星空が演出される。ロマンチックな雰囲気で終わり、アンコールへ。

 1曲目は再度ひとりによる弾き語りで「ハンキーパンキー」。「この会場、気持ちいいんですよ! 音が降ってきて!」と歌う前に言っていたが、まさしく音が降ってくる気持ちよさが伝わってくる楽曲。2曲目のポール・サイモンのカバー「Still Crazy After All These Years」では、ボブ・マーリーのカバーの時の様に椅子を使った小芝居が入るが、ストリングスによってタクシーのクラクションを表現したり、男と女をひとりで演じたりと、どんどん小芝居がドラマチックに進化していく。最初は笑ってみていたが、あまりの憑依っぷりに真剣に見入ってしまうし、その自然な流れで楽曲が歌われた時はゾクッとしてしまった。アンコールラストナンバーは、SUPEER BUTTER DOG時代から歌われる「サヨナラCOLOR」。全て観終わっての感想は、本当に質の良い素晴らしいホールコンサートを観れたというのが率直なところである。その想いは、観られた皆様も変わらないはずだ、

 また、4月4日東京は日比谷野外大音楽堂と4月29日大阪は服部緑地野外音楽堂での弾き語りワンマン野外ライブ「THE MOMENT~acoustic with moon light~」も発表されている。

セットリスト

「THE MOMENT ~STRINGS NIGHT~」With 鈴木正人(from LITTLE CREATURES)、美央ストリングス

2月23日(日)大阪・オリックス劇場

01. 光と影
02. あいのわ
03. 眠りの森
04. いっそセレナーデ
05. 秘密のランデブー
06. 明日天気になれ
07. レター
08. 大安
09. 360°
10. No Woman, No Cry
11. ウイスキーが、お好きでしょ
12. 音タイム
13. Peace Tree
14. 独自のLIFE
15. オアシス
16. おあいこ
17. 家族の風景
18. きみはぼくのどもだち
19. SMILE
-Encore-
01. ハンキーパンキー
02. Still Crazy After All These Years
03. サヨナラCOLOR

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