城 南海「今歌える曲が詰まっている」10周年からの“ニュー南海”
INTERVIEW

城 南海「今歌える曲が詰まっている」10周年からの“ニュー南海”


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:20年01月13日

読了時間:約11分

一発録り、一発テイクの収録曲も

『one』初回限定盤

――楽曲面では音楽的に様々なアプローチがありますね。「行かないで」はジャジーな雰囲気でグルーヴを感じました。こういった曲は歌いやすい?

 この曲はレコーディングが一発録りだったんです。それくらいすぐ馴染んだ曲です。気持ち良く楽しく歌えました。川村結花さんが「私こんなのええと思うんやけど」って作詞作曲をしてくれたんです。川村さんがレコーディングでピアノを弾いてくれて、その感じをライブで再現した感じでした。それで一緒にグルーヴを感じてできたのが表れているのかなと思います。

――一発録りだったのですね。それであの臨場感が出たと。

 みんなが演奏しているなかで、私はボーカルブースで仮歌を合わせて歌っていたんですけど、そのテイクが「これでいい!」となったんです。いつもはそのあとにオケに合わせて別で歌を録るんですけど。

――本番テイク前のリハ的な歌でOKが出たと。

 仮歌だからだからといって力を抜いているわけではなく、普通に歌っていたので。その感じが力まずに一緒に乗れていた感じで凄く良かったんです。川村さんも「これでええやん!」って。「1回で出来上がっちゃった」みたいな(笑)。

――1テイクのみの良さ、というのもあるのでしょうか?

 あまり熟れていかないほうがいい曲ってあるじゃないですか? 一回目の歌が一番良いというのがあると思うんです。わりと新鮮なうちに録り終えてという、私はけっこうそういうタイプの曲が多いんです。

――核にあるものがスッと出せれば何度もやるより1回で十分、というイメージはあります。城さんが何度もテイクを重ねるというのはあまり想像できないというか…。

 コーラスものだと重ねたりしますけど、確かに歌いかたとや気持ちの入れかたさえ定まっていればすぐ録れますね。

――気持ちがちゃんと乗っているとすぐできて、逆にどれだけ準備万端でも気持ちが乗っていないと「何か違う」となったり?

 なります。スタジオに行って歌詞の解釈を確認してみたりしますし、声のこぶしやグインの入れかたとか、訴えかける相手への距離感を共有したりします。

――グインは今作ではそこまで入れていないという印象でした。

 今回は少なめだと思います。島っぽい曲もないし(笑)。

――その点も“ニュー南海”かと。

 そうですね! グインは入っていてもナチュラルで、あまり入れていないと思います。全曲を通してドラマーの大島賢治さんが編曲してくださっているので、ビート感とこぶしの回りかたが噛み合わないと上手く乗らないので。言葉の乗りかたもあるので伸ばすところで入れたりしました。言葉のなかで自然と入れようと思うところがあまりなかったというのはあります。今作はこれまでと違って身近なテーマでリアルな言葉が多いので、自然と自分のなかで節回しは少なくなったのかなと。いつも曲の世界観を感じながら自然と入れているので。だから曲によって凄く左右されます。

――意図的にグインを減らしたというわけではなかったのですね。身近なテーマというところでは「タピオカ」という曲がありますね。

 そうなんです(笑)。「2019年はタピオカが流行りだしたな」って思い出せるようなところもあって。この曲は松本俊明さんに作曲して頂いて、先に曲を頂いて「これは言葉遊びをしてみたい」と思ったんです。宇多田ヒカルさんの曲のような。ディレクターさんが「失恋ソング以外ならなんでもいい!」って言って辛島美登里さんにお願いしたらしいんです。それで出来上がったのが「タピオカ」だったのでびっくりして(笑)。タピオカからこんなに可愛い世界が広がるんだと思って目から鱗でした。

――歌詞の可愛い部分と若干シリアスな曲調の対比がいいですよね。

 この曲調にこの歌詞を当ててきた辛島さんの凄さに脱帽です(笑)。

――最後の曲「おやすみ」では三味線の音が入っていますね。それとも三線でしょうか?

 津軽とかの白い三味線は置いておいて沖縄と奄美の話だと、かつての琉球では歌を歌う役職があって、男性に合わせて歌も三味線も弾いているんです。だから弦も皮も緩く張って、牛の爪でダウンピッキングで弾くんです。それで男性の低い歌と女性の1オクターブ上のお囃子が入ったりして。奄美は、女性を神様としている島なんです。だから女性に合わせて三味線も弦も皮もピンピンに張って、細い竹のバチでダウンでもアップでも弾くんです。それで高い声でファルセットを多用します。沖縄では使わないんですけど。奄美は、三味線も歌も高く、という感じです。見た目は似ているんですけど、弾くバチや奏法、音階が別なんです。

――呼び名としては「三味線」で合っていますか?

 三線という人もいます。元はたぶん中国からきているのでどっちでも呼んでいるのかなと思います。意味的には三本の弦の楽器というか。

――そのなかで、沖縄と奄美では三味線の違いがあるのですね。

 そうです。奄美では女性に合わせているんです。グインというのはファルセットを多用したこぶしのことです。だから沖縄とはまた違うんです。私も色んな人に聞いた話をまとめているだけなので、もしかしたら間違っている部分もあるかもしれませんが、そういう歴史があって今残っている民謡のなかでも多いものの定義でお話しました。まだ知らない部分もあるかもしれませんが、私はそういう風に聞いています。

――音階にも沖縄と奄美での違いはあるのでしょうか?

 奄美は日本古来の音階なのでそこも違いますね。琉球音階は「ドレミファソラシド」の「レ」と「ラ」がないんです。奄美は「ドレミソラド」と、日本古来の感じです。

――本作と奄美にまつわるお話をたくさん頂きありがとうございました。それでは最後に、みなさまへメッセージをお願いします。

 “ニュー南海”が詰まった作品になっておりますので是非1曲1曲楽しく聴いて頂けたら嬉しいです。来年もツアーなど準備しているので、コンサートにも遊びに来て頂けたら嬉しいので、ウタアシビしに来てください!

(おわり)

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