BOYS END SWING GIRL「その時に発したいメッセージを」更なる個性が開花
INTERVIEW

BOYS END SWING GIRL「その時に発したいメッセージを」更なる個性が開花


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:19年12月26日

読了時間:約13分

 4人組ロックバンドBOYS END SWING GIRLが11日、ミニアルバム『STAND ALONE』をリリース。「色褪せない青春を歌いたい」という前作『FOREVER YOUNG』からの変化、「いままで見せなかった部分を見せるようになった」という、更なる個性が開花した現在のバンドのスタンス、そして今作の作詞面からサウンド面、制作のこだわりの点など、あらゆる角度から冨塚大地(Vo/Gt)に話を聞いた。【取材=平吉賢治】

「そのアルバムで思い出ができる」

冨塚大地(撮影=平吉賢治)

――7月の東京・渋谷でのワンマンライブを振り返っていかがでしたか?

 ライブの最後の曲、「フォーエバーヤング」が終わった後、みんなめっちゃ歌っていたんです。あれ、僕らはしっかり聴こえていたというのをみなさんに伝えたいです。ダブルアンコールを期待してみなさん歌ってくれましたし。

――そうでしたね。アンコール2曲が終わった後、オーディエンスが合唱していました。

 僕らはダブルアンコールは出ないんですけど、それでもみなさんの歌が聴こえていたから凄くジーンとして感動しました…「あんなこと起こるんだ」と思って。前作の『FOREVER YOUNG』は色んなことに挑戦したアルバムだったんです。打ち込みもそうだし、そういうのをどうライブで表現するかというのが悩むポイントだったので、上手くそれを混ぜ合わせて、ロックバンドという枠から外れずにできたんじゃないかなと思っています。

――そんなワンマンも経て、メジャーデビューから約半年経って心境の変化はありますか?

 あるほうがいいと思うんですけど、全然ないです。変わらず幸せだし、変わらず楽しいという。あえて変化を探すと、「メジャーデビューしたんだからもうちょっと良い服を買ったら?」と言われて奮発して服を買ったくらいでしょうか(笑)。「見られる存在になろう」という意識の変化はあるかもしれないです! そこは大きいかと。心の中はあまり変わってないです。

――確かに、前回のインタビューの時と良い意味で雰囲気が変わっていないというか。

 取材して頂く時なども楽しく喋るのが好きでして。こういう時でも、どこでも同じことを言いたくないんです。その人としか出せないエアー感というか、その人としかできない話をしたいんです。そういうところを大事にしています。

――その場その時の瞬間やご縁を大切になさっているのですね。そういった面が今作でも出ていると感じます。

 そうだと嬉しいです。

――本作『STAND ALONE』は、前作の1stフルアルバム『FOREVER YOUNG』から、バンドの個性が花開いたという印象を受けました。まず、「ラックマン」がリードトラックという点に驚きました。

 どうしてそう思ったんですか?

――1st『FOREVER YOUNG』を聴いた印象を引き継ぐと、本作の5、6曲目がリードトラックっぽいなと感じたからです。

 そうですよね! 本当にその通りでして。

――でも、「ラックマン」が1曲目のリードトラックにした意図は?

 僕は“アルバム”が大事だと思っているんです。昔からCDで聴いてきたので、「このCDって何なの?」みたいなことを、聴く時に大事にしてきたんです。くるりさんが大好きなんですけど、くるりさんは1作ずつコンセプトが全く変わっていくみたいな。同じアーティストだけどアルバム毎に全く色が違うほうが、そのアルバムで思い出ができるんです。

――そういうバンドは個人的にも好きです。例えばRadioheadとか。

 正にそうです。Radioheadだと3rdアルバム『Ok Computer』を聴く時は暗い気分になったり、他のアルバムでは全然違ったりと。気分によってアルバムを聴きわけてほしいんです。前作は僕らがデビューするし、「がんばろう」と思う気持ちになる時に聴いてほしくて。今作は、人生に負けそうになった時に聴いてほしかったんです。暗い気持ち、苦しい時に手を伸ばしてほしいアルバムにしたくて。

――そうなると「ラックマン」がリードなのは腑に落ちました。BOYS END SWING GIRLは爽やかな楽曲というイメージがあったのですが、この楽曲はマイナー調のコード進行からだったり。

 ちょっと予定調和ではない感じにしたくて。アルバム毎に色を変えると、どこかで「このアルバムは合わないかな」と思ってもいいと思うんです。でも、いつかそれを認める時がくると思っていて。みんなが「名作」と言っているアルバムも自分では「合わない」と思うこともあるんです。でも、大人になったら「なんか聴いちゃう」というアルバムになっていたりと。

――それは凄くわかります。数年後にそのアルバムの良さに気づくという作品はあります。

 そういうのもいいかなと。その時に伝えたいこと、その時に発したいメッセージというのを、サウンド面も一緒に伝えていくというアーティストでありたいなと思っています。

「いままで見せなかった部分を見せる」

――さきほど海外のバンドのアルバムを例に挙げましたが、洋楽もたくさん聴く?

 さっきのRadioheadもそうですけど、そういう感じの音楽を聴いていないように思われるけど、普通に洋楽を通ってきているんです。

――以前、Coldplayの曲を海外で弾き語りしたというお話もされてましたし。

 そう、ビートルズから始まって洋楽をたくさん聴いてと。今作1曲目の「ラックマン」もビートルズの「Within You Without You」のインドな感じを出したくてメチャクチャこだわって作ったんです。

――ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』に収録された曲ですね。そこから改めて「Within You Without You」を聴くのも面白いですね。

 ちょっと「まるまるじゃん」って思うかもしれないですけど、それくらいでもいいと思うんです(笑)。リスペクトのリスペクトなので。

――そんなリスペクトの要素も含まれつつ、今作ではBOYS END SWING GIRLの“らしさ”が広がったと感じました。

 そう言って頂けると嬉しいです。たぶん、いままで見せなかった部分を見せるようになったと言いますか。

――前回インタビューで「僕らは王道、ポップと言われることが多いんですけど、それは僕はエサだと思っていて」と仰ってましたね。

 それ、あの時出た言葉を方々で言うようになっちゃって(笑)。いままで世に出さなかった暗い部分とか、サウンド面も洋楽は好きだけどJ-POP、ロックの中にいるからそっちに寄せていたというのも、ちょっとずつ削いでいって。自分達がもともと目指していたことを混ぜ込みました。青春ロックは今作で終わりにしようと思っていまして。次はもっと自分達のやりたいことを奔放にやってみたいなと思っています。

――今作は、どちらかというと“聴きやすい”と思うんです。いまの話だと、次作は?

 賛否両論もいいのかなと思っています。これからみんなと話し合いをするんですけど(笑)。個人的にはやってみたいなと思っています。

――アルバム毎にテイストを変えていって、その時々の表現をしていきたいというバンドのコンセプトがある?

 そうです。今作のテーマは「孤独」なんです。最初に孤独のアルバムを作ろうと思って。いろんなかたちの孤独を歌詞にしてみました。歌詞的にはコンセプトアルバムくらいの感じで作ったんです。

――歌詞面で気になったのは、3曲目の「毒を喰らわば皿まで」です。前作でもそうでしたが、1曲怖い感じのトラックを挟みますよね。

 『FOREVERYOUNG』でも1曲めっちゃ怒ってるのがありましたし(笑)。

――「毒を喰らわば」だけ一人称が“私”ですが、これは女性目線の歌詞?

 そうです。初めて女性目線で歌詞を書きました。女性のある種ダークな部分を書きたいなと思いまして。書いていて凄く楽しかったです。体験談も含まれているというか。

――1曲こういった毒を含んだようなテイストが含まれているとアルバム全体が締まると思うんです。

 これができるようになったというのは成長したのかなとも思います。いままでは綺麗なところを見せたいという面があったけど、「自分には汚い部分もある」というのを外に出せるようになったというか。正直にリスナーと向き合えるようになったのは大きな部分だと思います。この曲が書けるようになったら、けっこう色んなものが書けるようになるんじゃないかなという感じです。

 これを聴いたら「冨塚さんって…」と、思うようになるかもしれないんですけど、それが怖くなくなったといいますか。この楽曲は、もっと深いことを表現するためのジャブでもあると思っていますので、この曲の立ち位置は大きいです。

――アレンジはベースの白澤さんですが、面白い展開ですね。

 やっぱり白澤は凄いなと思いました。最初は普通にギターロックの感じで作ったんです。だけどそれを白澤に丸投げして送られてきたのが今回のアレンジで、ほぼそのままなんです。

――グルーヴもあるし展開も豊かで。

 レコーディングは大変でした…一番時間がかかって(笑)。白澤のなかにいままであまりなかったスウィングの部分が入ってきたり。バンドだからこそという感じです。歌もこのノリの感じでいままで歌ったことがなかったので練習をして色々試しました。

――けっこう密にやった楽曲なのですね。

 そうです。新しいので作っていて楽しかったです。これがあるからこそ今作が完成したというのもあると思います。

――この曲があるとないのとでは大変な違いがあると思います。

 この曲をどの曲順にするというのも凄く悩みました。どこに置けばフックをかけられるのかと。

――曲順は、個人的には5、6曲目から始まるのが無難なのかなと思ったのですが。

 そう! 5曲目の「クライマー」を1曲目にしようとしていました。でも「ラックマン」のインドの雰囲気から始めようと。一発目で「なんだこれ!」と思ってもらいたいなと。

――確かにそうなりました(笑)。では、4曲目「スノウドロップ」をアルバムバージョンとして再録した意図は?

 この曲はもともと去年、「冬にアルバムを出すから入れよう」と言って書いたんです。本当はメジャーデビューアルバムに入れようと思ったんです。でも6月に出すには違うなと思いまして。その時に出したいという思い、「スノウドロップ」は冬に出したいという思いがあったので、それで今回アルバムを出させて頂くタイミングで入れたんです。将来的に考えたらアルバムを出した時期なんて誰も気にしていないと思うんですけど、それでもアルバムというものが好きな人間としては、冬の曲は冬のアルバムに入れるという変なこだわりですけど。

――その時期に何をするか、何をしたか、という“アルバム感”ですね。それは春夏秋冬を大切に思う日本人の美徳にも通ずるかと。

 春は桜を見て、夏は花火を見て、秋は紅葉を見てと!

――冬は「スノウドロップ」を聴いてと。

 そうなるといいです(笑)。

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