キンモクセイ「やっぱりこの5人は特別」再始動で気づいたバンドの大切さ
INTERVIEW

キンモクセイ「やっぱりこの5人は特別」再始動で気づいたバンドの大切さ


記者:村上順一

撮影:

掲載:19年12月25日

読了時間:約14分

どうやってキンモクセイのサウンドにするか

キンモクセイ

――その好循環からアルバムまで一気に出来てしまった感じなんですか。

伊藤俊吾 「セレモニー」が完成するちょっと前にお世話になったアリオラジャパンの皆さんに、「こんなのが出来ました」と聴いてもらいたかったのと、相模原市民会館という1270人キャパの会場を押さえてしまったので、埋めるためのノウハウを教えてもらおかなと思って。そうしたら「これは自主で出すのはもったいないんじゃないか」と言っていただけて。最初ミニアルバムを作る予定だったんですけど、お客さんもフルアルバムの方が嬉しいんじゃないか、となってフルアルバムを作る事になったんです。

――フルアルバムということで、1人2曲ずつ作ることに?

伊藤俊吾 そこに関しては、先程もお話した格差が怖かったので、しっかり5等分にしたいなと思ったんです(笑)。

白井雄介 曲は「イトシュンみたいには作れないぞ」と思いながら各々持ち寄って。5人で作るというところで、曲は却下されないというものがあるんです。僕らは基本そういうスタイルなんですけど、その中でバラバラなものを、どうやってキンモクセイのサウンドにするかというスキルがこの10年ですごく上がったと思いました。もしかしたら力技でキンモクセイらしく持っていった曲もあるかもしれないですけど、意外となるもんだねみたいな。

伊藤俊吾 自分たちの作りたいものを作りたいとレーベルの方にお願いして。それを了承していただいたのはすごくありがたかったです。今まではプロデューサーがいて、その方の意見が大きかったのですが、自分たち100%の作品というのは初めてでした。

――楽曲としての振り幅は大きいですけど、ノスタルジックな部分、どこか懐かしさを感じさせるところはキンモクセイらしいなと思いました。

伊藤俊吾 それも意識してそうしようと思ったわけではなく、自然とそうなっていった感じはありました。集まった楽曲が『ザ・ベストテン(TBS系音楽番組)』のような空気感がすごくあって、自然とそういうカラーが出るバンドなのかなと思いました。

――それってすごい武器ですよね。皆さんが作曲されているということで、ご自身が作った曲のこだわったところをお聞きしたいです。

張替智広 キンモクセイは今回のタイトルにもありますけど、ポップスというところにすごいこだわりを持ってまして、自分も楽曲提供をするようになってからもポップスというのは意識していたんですけど、キンモクセイではさらにポップス度を高める、50年代、60年代のアメリカンポップス、3分ポップスと言うんですけど、3分間の中に収めると言うことをテーマに作りました。「渚のラプソディ」と「ダージリン」はギュッと凝縮してその年代の感じが出るようにメロディラインや曲の進め方にこだわって作りました。

――リズムにもその特色は出ていますか。

張替智広 ザ・ベンチャーズなどがやっているズンチャチャズンチャというリズムを取り入れています。

白井雄介 そういったリズムにもこだわりがあるのでドラマーが聴いたら楽しいと思います。

――井上陽水さんのサポートで学んだことも反映されていますか。

張替智広 そこは全体的にすごく出ていると思います。日本を代表する方なので、言っていただける一言の重みがすごいんですけど、陽水さんはストレートには言わないので、その時は理解出来ないことも多いんですけど、1週間ぐらい経つと、そう言うことだったのかとわかることが多いんです。演奏面に関しての影響力は大きいです。

――陽水さんから、リズムに関してはどんなことを話していただいたんですか。

張替智広 “速い”か”遅い”かです。でも、それはテンポじゃないんです。陽水さんは自身が聴いていた50年代のジャズがベースにあるので、その当時のリズムに対しての速い遅いというのがあることがわかりました。

伊藤俊吾 その話をハリーから聞いて、陽水さんのリズムの秘密が分かった気がしました。ライブで陽水さんのギターを聴いていても、いつも独特だなと感じていたので。陽水さんの中には常に16分音符が流れていて、カウント一つとってもすごく細かいんです。

――リズムってすごく深いですね。さて、白井さんのこだわったところは?

白井雄介 細野晴臣さん信者なんですけど、僕はそこから広がっていきました。キンモクセイは日本のポップスなんですけど、日本人が日本のポップスを作るぞと意気込んでいるのはちょっと滑稽で、それが面白いなと感じていて。その中で80年代のエキゾチックミュージックというのがあって、僕はそれに何年もハマっていました。それをキンモクセイでやりたいなと思って。やれるとしたらキンモクセイだと思っていました。マリンバを使いたかったのと、みんなでポリリズムで、サウンドライクみたいなものをやりたかったんです。

――サウンドライクとは?

白井雄介 ボーカルも楽器の一部として捉えた演奏中心の音楽です。日本のロックは作りは歌謡曲がベースになっているものが多いんですけど、歌謡曲じゃないものを僕はやりたいなと思いました。歌詞も深い意味はなくて想像力を掻き立てるものにして。なので、メンバーに手伝ってもらって出来たようなものなんです。

――といいますと?

白井雄介 一回自分でパソコンに打ち込んだんですけど、機材が壊れたので口でフレーズを言ってそれを楽器で再現してもらって。それは最初に打ち込んでいたものとは違うんですけど、その違うというのが大事なことで、すごく楽しかったです。僕が1人で考えたものより、5人で考えたものの方が絶対に面白いので。「あなた、フツウね」の歌詞は一曲イトシュンにお願いしたんですけど、「TOKYO MAGIC JAPANESE MUSIC」はコメダ珈琲で「無理だ」と思いながらも書いてました(笑)。タイトルはキンモクセイをやることで“JAPANESE MUSIC”というところに改めて意識したのかも知れないですね。

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