ACIDMAN「これからもポジティブなメッセージを」“創、再現”ツアーに幕
ACIDMAN(撮影=AZUSA TAKADA)
スリーピースロックバンドのACIDMANが12月12日、東京:新木場 STUDIO COASTで全国ツアー『ACIDMAN LIVE TOUR “創、再現”』のファイナル公演をおこなった。デビューアルバム『創』のアナログ盤リリースを記念して、10月30日のZepp Tokyoを皮切りに、12月12日、東京:新木場 STUDIO COASTまで全国6公演をおこなうというもの。約17年前におこなわれたON AIR WEST(現Shibuya O-WEST)でのセットリストをそのまま再現し、アンコールでは新曲「灰色の街」を披露した。過去と現在のACIDMANを存分に打ち出したライブの模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】
感動を共有して最高の1日にしたい
デビュー当時にタイムスリップさせてくれたプレミアムなライブツアーも、この日ファイナルを迎える。当時はCDの売上枚数に反比例し、200〜300人ほどのライブハウスでのライブだった。その時に体感したファンも、行けなかったファンもいたことだろう。様々な想いが交差するなか、『ACIDMAN LIVE TOUR “創、再現”』は開演時刻を迎えた。
ソールドアウトということもあり、フロアは隙間も見当たらないほどのオーディエンスで埋め尽くされ、ライブハウスは既に熱気で満たされている。オープニングSEは「8to1 completed」だ。カウントに合わせ照明がリンクする中、ACIDMANの3人がステージに登場。
「造花が笑う」、「FREE WHITE」と立て続けに演奏。オーディエンスも腕を降り上げ、序盤からクライマックスのような盛り上がり。オーディエンスの拍手に大木伸夫(Vo,Gt)は「感動しちゃうよ」としみじみ。
大木は「本当に感慨深いです。僕たちの音楽がみんなの人生の一部になってくれているというのは宝物です。それぞれの過去を思い出すのでもいいし、その時代を思い出すのでも良い、感動をみんなと共有して最高の1日にしたい」。
その言葉に続いて届けられたのは「シンプルストーリー」。ソリッドなギター、ドライブ感のあるベース、ダイナミックなドラム、三位一体のサウンドの中に、エナジー漲る大木の歌がオーディエンスの心を打つ。止まらない衝動は次の「SILENCE」へと託される。高まるテンションはオーディエンスの掲げる拳が物語っていた。演奏をバックアップするライティングもドラマチックに楽曲を彩っていた。
まだここまで4曲だが後半戦、ラストスパートに向かっているかのような状況だ。佐藤雅俊(Ba)のピックの擦れる音まで聞こえてきそうなイントロがけん引する「バックグラウンド」で、フロアの熱気はうなぎ登り。浦山一悟(Dr)のドラムビートに合わせ、シンクロしたオーディエンスのクラップから「to live」を披露。大木のアグレッシブでヒステリックなギターカッティングが絶品。ベースのリフの上で宇宙を感じさせるディレイを使用した間奏パートも、沸々と感情を盛り上げていく。
大木は「色褪せない」が今回のサブテーマだと話す。色褪せない、その理由は、敢えて流行りや時代に乗らなかった、自分が好きなものしか作って来なかったからだという。実際に17年前にリリースされた曲とは思えない輝きを今も放っていた。
ライブはここから中盤戦へと突入。インストナンバーの「at」は、言葉だけではない、音のみでの音楽の魅力を十二分に伝えてくれた。聴くものそれぞれの情景を映し出してくれる、想像力を掻き立ててくれるのはインストならでは。そして「spaced out」へと紡がれていく。
どっぷりとACIDMANの世界へと誘うサウンドは、心地良い風を運んでくる。そして、切ないイントロでのギターが印象的な「酸化空」、ボサノバのようなコンテンポラリーなコードワークが光る「香路」といった、じっくりと音を楽しませてくれるミディアムナンバーは、一時の安らぎを与え、ライブをメリハリのあるものにしていた。
これからもポジティブなメッセージを紡いでいきたい――
ここで一悟のMC。ダジャレを交えたトークで楽しませ、大木にMCのホストをチェンジ。大木は過去には尖っていた自分もいたと話す。しかし、世界が滅びれば良いと思っていても、実は光に満たされたいと思っていた、と素直な想いを綴った1曲「今、透明か」へ。キャリア、経験を積んだ今だからこそ、より強い光を放っているようにも感じさせてくれた。
そして、大きな歓声が上がった「アレグロ」は迫真のパフォーマンスだった。それに応えるようにオーディエンスも身体を前へ前へとステージに向かって投げ出すよう。音楽ならではの昂揚感を与えてくれた。続いて、ゆらゆらと身体を心地よく揺らしてくれた「赤橙」は、映画を見ているかのような秀逸なストーリーを音で描き、感情を揺さぶりかけた。
大木が奏でるリッケンバッカーの弦の音が生々しくスピーカーから放たれる。「揺れる球体」は天井から音が降り注ぐような感覚を与え、オーディエンスもその歌と音を浴びるかのように、耳を傾け聴き入っていた。
当時のライブではここで本編は終了。大木はここからアンコールの体(てい)で聴いて欲しいと、当時新曲として演奏された疾走感のあるロックナンバー「飛光」を投下。オーディエンスもそのサウンドに声を上げ、身体を弾ませ、リミットを突き破るかのような盛り上がりを見せた。
そして、ロックの持つ衝動というナイフを突きつけられたかのような感覚もあった「培養スマッシュパーティー」は、ド派手なライティングも我々のボルテージを高め、大木は「皆さん一人ひとりのおかげです!」と、声高らかに感謝を告げ、ラストは「Your Song」へ。
希望にもつながる眩い光の中、全霊のパフォーマンス。金色のテープがキラキラと宙を舞うなか、ツアー『創』の再現を締めくくった。ちなみにこのテープに書かれたメッセージは大木自らが前日に5時間掛けて判を押したスペシャルなもので、手作り、アナログが好きな彼の思いが、こんなところにも反映されていた。
「これからもポジティブなメッセージを紡いでいきたい」と、アンコールの1曲目には、当時の「飛光」と同じように新曲を届けることに。タイトルは「灰色の街」。音源でのリリースはまだ未定で、大木はライブでこの曲をもっと育てていきたいと話す。ミディアムな1曲はモノクロの景色に色をつけるように、情感あふれるサウンドと歌で鮮やかな光を放っていた。そして、ラストはここに生きていることを証明する、強い意志を感じさせてくれる「ある証明」。オーディエンスは一丸となって叫び、腕を振り上げ、明日への活力に繋がるかのような、最高の一体感を作り上げた。
音楽の持つ力を感じさせてくれたステージで、この場にいた十人十色の感情や想いが飛び交っていた空間。今だからこそ意味のあるものになった、と言い切れるものがこのツアーにはあった。切実に2ndアルバム『Loop』も再現して欲しいと思った一夜であった。それはきっと多くの人が望んでいるはずだ。
セットリスト
『ACIDMAN LIVE TOUR “創、再現”』
12月12日@新木場 STUDIO COAST
01.造花が笑う
02.FREE WHITE
03.シンプルストーリー
04.SILENCE
05.バックグラウンド
06.to live
07.at
08.spaced out
09.酸化空
10.香路
11.今、透明か
12.アレグロ
13.赤橙
14.揺れる球体
15.飛光
16.培養スマッシュパーティー
17.Your Song
ENCORE
EN1.灰色の街(新曲)
EN2.ある証明
- 1
- 2
- この記事の写真
ありません