寿君「ごちゃごちゃした考えが消えた」葛藤乗り越えた新作語る
INTERVIEW

寿君「ごちゃごちゃした考えが消えた」葛藤乗り越えた新作語る


記者:小池直也

撮影:

掲載:19年12月08日

読了時間:約8分

攻めている時は色々な反応が集まる

寿君

――寿君さんを知ってクラブに初めて来るファンもいると聞きます。

そうですね。締めのラーメンを食べにいくイメージでレゲエやクラブに行ってほしいです。もともとジャマイカの貧しい街は本当に貧乏だから、道の真ん中にサウンドシステムを立てた。そこに人が集まってきて、ドリンク代を集めて稼いで、また街に配って経済を回したんです。それがあちこちであると「○○がパーティやるらしいから行こうぜ」となる。それは日本でもあまり変わらなくて、今僕らがパーティしたら人が来てくれるじゃないですか。それでうるおってパワーをもらうし、ドリンク代の売り上げが増えたら若くて頑張っている奴らに5000円でも10000円でも渡してあげたい。アメ村もそんな街でした。

――レゲエの歴史と活動がつながっているですね。そういえば現在、LINE MUSICで「寿君のレゲエ講座」を定期的に配信されていますが、こちらもそれと関連しますか?

やっぱりライブ中に盛り上がってくると、どうしても専門用語が出てしまうんですよ。ジャマイカでそういう言葉をたくさん覚えて帰ってきましたから。今はレゲエの知識がないお客さんもいるから控えめにはしているんですけど。みんなボブ・マーリーは知っているけど、ダミアン・マーリー(息子)になると、やっぱり知らないんです。「○○○・マーリーって何人もいるの知ってる?」って(笑)。

 ボブ・マーリー以外にも神様みたいなミュージシャンは何人もいるし有名な曲もあるので、自分や仲間の音楽と一緒に紹介できたらなと思ったんです。ラジオとかでも「最近ジャマイカのダンスホールではこんなの流れてるらしい」と曲をかけたりします。ジャマイカの話をすると、スタッフの人も面白いらしくて喜んでくれるんです。レゲエいいな、と思ってもらえる入口になろうと音楽をずっとやってきたので、こういう作業はこれからもやっていきたいです。

――それではタイトル曲「Life is Great」の制作について、詳しく聞かせてください。

 あえて好きなレゲエのビートに乗せて、今までのことを振り返ってみたのが「Life is Great」です。制作はインディーズ時代の『オレノキュウキョク』(2014年)、『SPECIAL THANX~ありがたや~』(2016年)を作った沖縄でおこないました。大事な曲なので精神統一できる場所で書きたかったんです。

冒頭の部分は難しい言い回しですけど、霧にいる時って霧にいることに気付かないじゃないですか。虹のふもとにいる時も離れてみてやっと「虹やったんか!」と理解できる。人から好かれるだけじゃなくて嫌われることもあるし、もう音楽をやめようかなと思ったこともあるんですよ。でもそういう反応も薄くなればなるほど、さみしくなるんです。

――それは具体的に言うと?

反応を見ているとリリースした曲でディスの多い曲とそうでない曲があるんです。色々な人に聴いてほしくて間口を広くした曲は結構ディスられますが、その代わりYouTubeとかの再生数も多い。逆に自分が本当にやりたい曲は再生数もディスも少なくて「めっちゃいい」という意見ばかり。でも広がりを感じるかと言われたら、感じないんですよ。「あー夏休み」なんかは批判もお褒めの言葉もすごくて、1年で100万再生超えました。

攻めてる時って色々なものが集まってくるんですけど、それってすごい幸せなことだし、自分が輝いている時なんだなと思います。そういう気持ちを「Life is Great」のリリックに反映させました。大自然のなかで東京とか大阪のことを考えて書いたから、<南風に吹かれて>から<満員の終電に揺られて>と流れていくんです。見えている景色はめちゃくちゃ自然なのに、頭は都会だったんですよ。やっぱりゆっくりもしたいけど、それだけだと人間は幸せじゃない。都会で切磋琢磨してから自然のなかでふと幸せを感じるんだなと思いました。

ちょっと内容がわかりにくいかなと思いましたが、ラジオでオンエアした時に「アーカイブを何回も聴きました」とコメントをもらったり、ライブで「めっちゃ好き」と言ってもらえたことが手ごたえになりました。これからライブしていくのが楽しみですね。惚れた腫れたもいいけど、こういうメッセージ性の強い曲があるから僕はレゲエが好きになったんだなと再確認しました。

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