「KYO-TO-KYO」では2人が違う時空にいるのを表現したかった
――5曲目「juXtapoz」はしっとりしたLISAさんのボーカルで始まりますね。
☆Taku Takahashi 始めてデモタイトルがそのままタイトルになったのが、この曲なんです。
――タイトルをそのまま使うことになったのは、どうしてでしょう?
VERBAL “juxtapoz”って相反する者同士が対面する、またはその他と比較するために並べる、という意味なんです。歌詞の中でもLISAの歌詞と僕の歌詞で、男性と女性が向かい合っているんですけれど、ちょっとかみ合っていないので、この言葉がすごく合うかなと思っていて。でも、LISAはこのタイトルは嫌だって言っていたんだよね。
LISA いつのタイミングで言おうかなと思って。私だけすごく“NO”“NO”と言っていたよね?
VERBAL でも、これは歌詞の意味がはまるんだよ。
LISA それも分かってはいたんだけれど、本当にこのタイトルでいいのかしら? とも思っていた。
VERBAL LISAの中ではどんなタイトルを入れたかったの?
LISA いや、でも今日VERBALの話を聞いて、納得しました。もう好きになったから大丈夫よ(笑)。これから、いっぱい言うわ。
☆Taku Takahashi 次元が合っていると同じ空間にいて、次元がずれると、うっすらと見えなくなる。SFぽいんですけれど、「juXtapoz」は次元がずれている人同士の話でもあるし。
――恋愛の歌でも次元が違う、パラレルワールドな世界の話なのですね。
VERBAL 今回のアルバムの制作のときに「『もしかして違う次元だったら、一緒だったかもしれないのに』とか『違うパラレルワールドだと、もしかしたらかみ合っていたけれど』とか、そういうのもあるよね」とかいう話をしていて、それにインスパイアされました。
――アルバムのタイトルも入った13曲目の「KYO-TO-KYO」は幻想的な楽曲ですね。
☆Taku Takahashi 本当はイントロで作ろうと思っていた曲なんですよ。でも2人が作ってきたものがすごく良くて。さらにイントロにするには長かったから、もったいないなと思って、ここに持ってきました。しかもこの曲のおもしろいところは、VERBALはスタジオで録っていて、LISAはiPhoneで録っているんですよね。
LISA 何台かでね。
☆Taku Takahashi とにかくラフに録ろうと思って。だからゴーというエアコンの音が聴こえちゃっているし。
LISA 自分では今回メロも歌詞もすごく素敵なのを上げたつもりだったから、VERBALのちゃんとレコーディングしたのを聴いたときに、「私もしっかりレコーディングしたいわ」と思ったんだけれども、レコーディングスタジオに入ったときに、なんとなく☆Takuの言っている様子も分かってきたんです。あと、ちょいちょい聴きながらやっていると、すごくノスタルジーを感じて。ちょっと不思議なんですけど、自分で自分が恋しい、とか自分で自分が懐かしいといった感覚になったんですよね。
☆Taku Takahashi すごく良かった。2人が違う時空にいるのを、表現したかったんですよ。
LISA レコーディングは難しかったけどね。ミスしてはいけないので、1テイクなんですよ。だから音程もテンポもちゃんとしなきゃならないし、でも伝えなきゃならないし。でもすごくいいアイデアでした。
☆Taku Takahashi マイクの場所を変えたりしながらやりました。しかもLISAはフリーで歌っていて、VERBALのテンポとまったく違うテンポで。
LISA ボーカリストとしては、すごくハードルの高い歌でしたけど、いい経験をしました。☆Takuもこのレコーディングのときにそばにいたんですけれど、私の背中を見て泣いてくれたんだよね。
☆Taku Takahashi ピアノとLISAの声の響きがぐっときて、泣けました。
LISA そばにいたからね。ただ私もそばにいることを意識しちゃうと、笑っちゃったり、集中するのがすごく難しかったりするから。
☆Taku Takahashi いつもスピーカーで聴いているんですけど、アコースティックで聴くと、「やっぱりいいな。人間の温かさが伝わるな」と感じました。
LISA いいレコーディングだったよね。
☆Taku Takahashi LISAが真面目に歌っているのを、マイクなしの環境で、隣で聴くのは初めてだったんです。そもそも、そういう機会って少ないじゃいないですか。
LISA 生声はね。
☆Taku Takahashi 街でもマイクでやっているし、弾き語りを生で聴く機会は意外とないんですよ。今までずっと一緒にいてレコーディングはいつもマイク越しだったけれど、本当の響きを聴くのは初めてだったんですよね。
LISA 私もすごく泣いた。VERBALもいて欲しかったな。
VERBAL 僕も泣きたかった。
☆Taku Takahashi でも、VERBALがいたら泣かなかった。笑っちゃう。
LISA あ、そうそう! VERBALがそばにいると笑っちゃうのよね。
VERBAL じゃあ、いなくてよかったんだ(笑)。あとこの曲はラップがずっとぶっつづけなんですけど、途中で切れてLISAの歌になるのは、☆Taku Takahashiがエディットして。
☆Taku Takahashi もともと前半と後半はVERBALが1つのヴァースだったけれど、切っちゃったんです。
VERBAL びっくりな展開だし、唐突なんだけれど、すごく格好良くて。
☆Taku Takahashi 唐突だったよね。
VERBAL でもそれがよくて。僕たちはそういうのが多くて、途中で切ってほしくないとかもないですし。
☆Taku Takahashi そこは任せてくれていたよね。
LISA しかも私はすごくビューティフルなリリックを書いて、自信があったからVERBALにそれを送ったら“That’s dope”って一言。すごく美しいものを書いたのを、“That’s dope”よ!
☆Taku Takahashi 誉め言葉なんだよ(笑)。
LISA でも内容もよかったよね。
――アルバムタイトルは「KYO」ですが、この曲を「KYO-TO-KYO」にしたのはどういう理由からなのでしょう?
VERBAL いろいろな漢字になる、と言いますか。“TODAY”から“響”、なのか、“響”からクレイジーの“狂”なのか。いろいろな“KYO”にトラベルするっていう意味ですね。
LISA “It’s so free”な。どのように捉えてもいいよね。
VERBAL “KYO”って不思議だよね。いろいろな意味になるじゃない。
☆Taku Takahashi いわゆる“同音異義語”だね。
VERBAL そう、同音異義語なんですよ。今日は一つ日本語勉強になりました(笑)。
――まさにアルバムコンセプトがここにある、と言えそうですね。
LISA 押しつけがないよね。「こういうふうにして“KYO”を捉えてくれ」というところがないから、すごく感動して。こういう言葉を持ってきたのは、すごいなと思いました。
VERBAL 異次元に行くとか、次元を超えるとか、自由度があるテーマなので。だからすごくおもしろくて、いい意味で“なんでもアリ”な作品になったと思います。
(おわり)
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