レア・グルーヴがレアじゃないじゃない時代
――3曲目に収録されている「HUMAN LOST feat. J.Balvin」は劇場アニメ『HUMAN LOST 人間失格』の主題歌となっていますが、J.Balvin(コロンビア出身のレゲトン/ラテン・ポップ・シンガー)さんとのフィーチャリングはどのように実現したのでしょうか?
☆Taku Takahashi J.Balvinって日本ではあまり知られていないんですよ。でも実は全世界のSpotifyで2番目に聴かれている人で。世界で2番目ってすごくないですか? そのくらい人気のある人なんです。そして彼はめちゃくちゃいい人で。『SUMMER SONIC』のときにVERBALとすごく意気投合して。
VERBAL 去年出会ったんですよ。それで『HUMAN LOST 人間失格』という劇場アニメのお話があったんですけれど、ちょうど彼が日本のアニメだったりアートだったり、すべてにおいて大好きなんだ、と話をしていたので、どさくさに紛れてじゃないですけれど、「この楽曲にフィーチャリングとかしてみない?」と誘ってみたんです。そうしたら「アニメの曲になるということは、アニメのMVとかも出るのかな?」と聞かれて。「そういう話はもちろん」と言ったら、ノリノリでレコーディングしてくれて。
――そういったところから!
VERBAL 海外の人からすると、アニメの楽曲を作るとか、アニメになるとか、そういうことって身近なことではないようで。日本に住んでいると、当たり前というか、そのありがたみを忘れているところがあるけれど、海外の人からすると、「え、本当!?」みたいな感じらしいです。あと☆Takuもさっき言っていましたけれど、今まで会ってきたアーティストの中でも3位以内に入る、ナイスガイなんですよね(笑)。そして周りの人たちも、もれなくみんないい人で。びっくりするぐらいピースなんです。それなのにLISAは同じコロンビアというルーツを持っているけれど、まだあまりしゃべってくれないんだよね(笑)。
LISA そう、まだ彼とはまだしゃべっているかしゃべってないかくらいなので。いつかしゃべりたいなと思いますね。たまたまコロンビア人だったということなんですけれど、今日、いい人だと聞いて安心しました(笑)。
――これは出会いが生んだ1曲だったんですね。
VERBAL すごい縁だったよね。
☆Taku Takahashi そう、友だちじゃなきゃできなかったですね。
――今回のアルバムはかなり幅広い楽曲が収められていますが、配信リリースされた6曲目の「Toxic Sweet feat. JP THE WAVY」は陽気に弾けるナンバーですよね。
☆Taku Takahashi トラックを作ったのが1月1日とか2日だったんですけど、そのときに先にVERBALの<エロスでカオスな 火星のビーチ>で始まるカオスなリリックが入ってきて。それ聞いて(ラッパーの)JP THE WAVYさんを呼びたいなと思って。VERBALに「知り合い?」と聞いたら、「知っている」と言ったので。
VERBAL 現場で会うと挨拶をしていたので、☆Takuから「知ってる?」と聞かれたので、連絡してみたんです。
☆Taku Takahashi 実はその前にJP THE WAVYさんの方からVERBALに「フィーチャーしてほしい」という話もあったんだよね。
VERBAL そうなんですよ。やりたいと思ったけど、このアルバム集中したかったから、ちょっと待ってくださいと言ってたんです。そんな時にこの曲ができて。
――スティールパンも入っていて、夏っぽい楽曲ですが。
☆Taku Takahashi 1月のはじめに作っていたので、夏っぽいのを意識して作っていたわけではないんですよ。だけど何かトロピカルな感じになって。これは僕の裏テーマだったんですけど、普通ドラムはキックとスネアとハイハットがあって、キックは低音が必要だから入っているんですけど、あの曲ってスネアとハイハットの音がないんですよね。スネアの音は水のぴちょんという音で。ハットもボコボコボコボコっていう音で作っていて。
ダンスホールっぽいリズムだから、普通にみんなダンスホールに感じてくれるんだけれど、実はダンスホールで使わないようなシンセ音の使い方とかをしていて。そんなふうに作っていたら、VERBALが<エロスでカオスな 火星のビーチ>と歌詞をつけて。やっぱりあのトラックを聴けば、夏っぽい歌詞になってきますしね。それでJP THE WAVYさんの歌も入ったら気持ちいいじゃないかって思って。さらに6月下旬くらいのタイミングに、「これは夏ソングだよね」となって、急にMVを撮ろうと、僕が言いだしたんですよ。そうしたらVERBALは「いいね! ロスに行くから、ロスで撮ろうよ」と賛同してくれて。
――なるほど。
☆Taku Takahashi でもそこで困るのはLISAなんですよ。「いきなり来週ミュージックビデオを撮るなんて、ありえない!」と怒られて。最終的にはやってくれたんですけれど。
LISA だって準備がいろいろあるじゃないですか。
☆Taku Takahashi 行くまでに1週間もなかったんだよね。
LISA そう。だからカンカンで。「衣装どうするの? メイクアップどうするの?」と訴えたんだけれど、「ごめん。でも録りに行かなきゃいけない」と言うから、「OK。じゃあ自分のメイク持っていくわ」となったんです。
☆Taku Takahashi VERBALと僕はノリノリになって止まらなかったという。
LISA 男性は最後にグラサンをするわけだから、なんだっていいわけじゃないですか(笑)。だから私も今回はサングラスをしました。でも撮影は楽しかったですよ。大変だったけれど、監督さんがすごくステキな人で、すごく安心しました!
VERBAL Zev Yorkくんといって、以前、海外に行ったときに僕たちのライブ映像を撮ってくれた人なんです。そのエディットがすごくテンポがよくてかっこいいから「彼がいいんじゃない?」となって。「MV撮りたいって言ってくれたし、来週行くけどいいかな?」とお願いしたら、受けてくれたんです。
LISA 監督さんの雰囲気が良かったし。おもしろいビデオになったよね。
☆Taku Takahashi やると決めて進めた期間は、今までで最短だよね。<エロスでカオスな 火星のビーチ>というフレーズがなかったら、ロスで撮っていなかったと思います。
VERBAL そんなネタにしてくれてありがとう(笑)。
LISA でもあれは格好良かったよ。
☆Taku Takahashi <奥村チヨが流れてるSPEAKER>とかも、すごいフレーズだよな。
VERBAL みうらじゅんさんの『みうらじゅんのフェロモンレコード』という本読んでいたら、奥村チヨさんとの対談があって。ちょうど奥村チヨさんの曲をガンガンに流して聴いていて、そのときにリリックを書いたの。<奥村チヨが流れてるSPEAKER>とそのまま書いたら語呂がよくて。
――奥村チヨさんについて、若い人はこの歌詞で検索しそうですよね。
VERBAL ちょっとそういうのにも貢献できたらいいな、と。
☆Taku Takahashi 未来で奥村チヨが流れるスピーカーって、すごくありえるよね。
VERBAL 最近、☆Takuと話していたじゃない。アメリカで流行っている。
☆Taku Takahashi 『プラスティック・ラブ』(竹内まりや)?
VERBAL そう。曲がいいから流行っているって、すごくいいよね。
――動画でも気軽に昔の曲を探すことができますし。
VERBAL あとCDショップに行って掘って「すみません。〇〇店舗にはありません」じゃなくて、絶対Spotifyとかであるじゃないですか。それがすごいですよね。レア・グルーヴがレアじゃないじゃない時代になったということなんですよね。
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