新しい地図「日本が新しく変われるチャンス」ParaFesで見せた未来
新しい地図(提供=日本財団パラリンピックサポートセンター)
ウルフルズやLittle Glee Monster、新しい地図らが11月16日、東京・武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナでスポーツと音楽の祭典『ParaFes 2019~UNLOCK YOURSELF~』(日本財団パラリンピックサポートセンター主催)がおこなわれた。今年のテーマは「応援」。昨年に引き続き、ジョナタ・バストス、わたなべちひろ、酒井響希によるコラボや、新しい地図による「雨あがりのステップ」の歌唱で会場に集まった約6400人を魅了した。無限の可能性を感じさせるエナジーに満ち溢れていた『ParaFes 2019~UNLOCK YOURSELF~』のもようを以下にレポートする。【取材=村上順一】
誰もが生き生きと活躍できるインクルーシブな社会を
オープニングを飾ったのは、パラアスリートによる映像と見事にリンクしたDJプレーを見せてくれたYamatoの熱い演奏で幕開け。和の要素も取り入れたサウンドで会場を沸かせた。
大前光市による健常者と障害者のコラボパフォーマンスは、光と音のフュージョンともいえる、力強さを感じさせるステージ。お互いの良さを引き出したそのパフォーマンスに視線が注がれる。続いて、日本財団パラリンピックサポートセンターのスペシャルサポーターを務める稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾の3人が登場。そして、日本財団パラリンピックサポートセンター会長の山脇康氏は「去年よりももっとパワフルな『ParaFes』にしたい。皆さんが主役となって楽しんで下さい。パラリンピック東京大会が終わった後に一人ひとりが違いを認め、誰もが生き生きと活躍できるインクルーシブな社会を作っていきましょう」と意気込みを話し、国際パラリンピック委員会(IPC)の第3代会長のアンドリュー・パーソンズ氏のVTRメッセージを受け、本編がスタート。
稲垣はパラスポーツについて、「ここで得た感動や興奮を伝えていきたい。魅力は観戦するのももちろんですが、実際に体験してみると面白さは倍増すると思います」と話し、ここから実際にアーチェリー、5人制サッカー、パワーリフティングという3つの競技をピックアップし紹介。
稲垣をナビゲーターに迎え、1つ目はアーチェリー。ダーツや射撃にも興味があると話す稲垣は、アーチェリーを生で観るのが楽しみとコメント。パラアスリートから上山友裕選手と岡崎愛子選手の2人が登場。上山選手は「もし(真ん中の)10点に入ったらドーン! と声援を下さい」と話すと、上山選手は実演で見事に10点を射抜き、約束通り稲垣が観客を率先し「“ドーン”」と盛り上げた。稲垣はアーチェリーを初めて生で見て「僕の心を射抜かれました」と感想を述べた。
ナビゲーターに草なぎを迎え、2つ目は視覚に障害を持った選手が、音を頼りにプレーする5人制サッカー(ブラインドサッカー)を紹介。ブラインドサッカーを実際に体験したことがあるという草なぎは「勇気がいる競技でした」とコメント。パラアスリートから川村 怜選手と寺西 一選手が登場。選手と同じ目隠しをして、草なぎもドリブルにチャレンジすることに。足の裏でボールを確認しながらの、ちょっと滑稽なスタイルに会場からは笑いが起きた。さらにシュートも実際に草なぎが挑戦。ゴールネット裏で待機するガイドの声を頼りにPK(ペナルティキック)を見事に決め草なぎは「奇跡が起きました!」と喜んだ。
最後はナビゲーターに香取を招き、パワーリフティングを紹介。バーベルを押し上げるベンチプレス競技で、上半身の力だけで300キロを超えるバーベルを上げる選手もいるという。香取は実際に体験したことがあり、上半身だけで上げるのは想像以上に難しかったという。この競技は大堂秀樹選手と山本恵理選手が登場し実演。制限時間は2分間というなか、山本選手は60キロを成功させ、大堂選手は180キロのリフティングに挑戦するも、惜しくも判定で失敗してしまう。香取は「2分間という緊張感にドキドキした」と話すと大堂選手は「それは恋だと思います」とユーモアのある返し。最後に香取は「すごい迫力で、必ず応援したいと思います」とパワーリフティングを応援していくことを約束した。
ParaFes UNLOCK LIVE
ここからはアーティストを招いての『ParaFes UNLOCK LIVE』へ。1人目は15歳の全盲のシンガー兼ピアニスト・わたなべちひろが登場。会場の観客は用意されたアイマスクを着用し耳に全神経を集中させ音楽を堪能するという試み。披露したのはジョン・レノンのカバーで「Imagine」。会場の照明も落とされ、暗闇のなか華麗なピアノ演奏と透明感のあるエナジーに満ちた歌声を会場に響かせ、多くの人の感情を揺さぶった。香取は「アイマスクのおかげもあり、より歌に集中できたので(心に)響きました。ちひろさん最高!」と話すとわたなべは「ありがとうございます。でも、すごく緊張しました」と堂々としたパフォーマンスでありながらも緊張していたことを明かした。
続いて、両腕がないギタリスト・ジョナタ・バストスと全盲の12歳ドラマー・酒井響希が登場し、わたなべちひろと3人で演奏。届けられたのはスティーヴィー・ワンダーの「Don’t You Worry 'Bout A Thing」。それぞれのソロセクションも盛り込み個性を発揮しながらも、この3人によるケミストリーを生み出していく。このパフォーマンスに草なぎは「息のあったパワーを感じました」、稲垣は「興奮しました!」、香取も「勝手に体が動き出して、ノリノリでした」と、そのパフォーマンに絶賛。
目標を聞かれたジョナタは「ここにまた戻ってこれたことに感謝しています。ここまで来たからには2020年の東京パラリンピックで演奏することが目標です」と語り、酒井は「ジョナタさんと今度は海外でセッションしたい。僕とちひろさんの中学生コンビで令和という新時代を盛り上げていきたいです。レッツプレイ!」とコメント。
続いて、ジョナタ、わたなべ、酒井に加えLittle Glee Monster(リトグリ)が登場。スペシャルコラボで9月25日にリリースされた「Echo」を披露。体を震え上がらせるほどのエネルギーに満ち溢れた、勇猛な歌声を響かせ、「応援」というテーマを体現しているかのような歌唱で魅了。リトグリの芹奈は「パラスポーツを通して私たちは、好きという気持ちがあれば不可能なことはないと思いました」と述べ、もう1曲、自己肯定を歌った「This is me」を披露。多くのパラダンサーも参加し、ライブを大いに盛り上げた。
ここまでの演奏にスペシャルサポーターの3人がそれぞれ感想を述べた。
香取「2020年のパラリンピックをもっと盛り上げたい、という思いが皆さんの音楽で強くなりました」
草なぎ「いつも僕らが力を頂いている。この瞬間を生きている力強さを感じ、僕自身も頑張って生きていこうと思いました」
稲垣「(リトグリ、ジョナタ、わたなべ、酒井で)バンドを組んでもらいたいくらい。いつまでもこの音楽に浸っていたいと思いました」と、それぞれこのコラボに大満足の様子。
休憩を挟み『SPECIAL LIVE』のコーナーへ。会場が真っ赤に染まるなか登場したのはウルフルズ。トータス松本は「こんにちはウルフルズです。宜しくお願いします」と丁寧に挨拶し、代表曲「バンザイ〜好きでよかった〜」でライブの幕は開けた。<バンザイ>の歌詞に合わせ観客も“バンザイ”で応え、一緒に楽しんだ。
そして、リズムに合わせ観客のクラップが鳴り響くなか、トータスが「一緒に歌って下さい」と投げかけ始まったのは「明日があるさ」。軽快なリズムにのってトータスはハンドマイクで希望を感じさせる歌声を響かせた。「来年いよいよですね。僕らも盛り上げていきますので、一緒に盛り上げていきましょう!」と「ええねん」を投下。バンドから放たれるパワーは、約6400人の観客を煽情していく。
MCでトータスは、耳の不自由な人のために手話でも曲の歌詞を説明してくれていることに、「自分たちの書いた歌が手話になるとこんな風になるんだと、すごく楽しいです」と発見もあった。
ライブもラストスパート。トータスはアコギを手に取りミディアムナンバーの「笑えれば」を披露。心の隙間を埋めてくれるようなエモーショナルな歌を届け、「来年に向けてもう一曲やります!」と、トータスと観客たちとのコール&レスポンスから、ラストはこのフェスのテーマである『応援』にピッタリな大ヒット曲「ガッツだぜ!」。サポートギターの桜井秀俊(真心ブラザーズ)によるワウ・ペダルを使ったカッティングがグルーヴィで、心も身体も躍らせる最高にファンキーなナンバーにオーディエンスもノリノリで盛り上がった。音楽の力を感じさせるなか「来年も盛り上がろうぜ!」とステージを後にした。
そして、全出演者がステージに集まり、稲垣、草なぎ、香取による新しい地図の3人で「雨あがりのステップ」を歌唱。3人の情感を込めた歌声は、ここにいる人たちの絆を深めてくれた。歌詞にある一節<誰もが特別>、まさにそんなこと感じさせてくれた瞬間だった。
稲垣「最高でした。この興奮と感動が世界中に広がっていくように、僕らも応援していきたい」。
草なぎ「選手の皆さんに届いて、最高のパフォーマンスが観れたので、来年に向けて頑張っていきたいという気持ちになりました」
香取「みんなの声援の力が必要なんだと感じました。山本選手が今日60キロ(バーベル)を上げられたのは皆さんの声援なんだと話していました。パラスポーツに皆さんの声援をお願いします」。
さらに香取は「来年の大会が盛り上がるように、パラリンピックの素晴らしさを伝えていけたら、来年の大会が大成功するんじゃないかなと思います。その大成功した後は、この日本が新しく変われるチャンスだと思っています。皆さんの力でパラリンピックを、パラアスリートの皆さんと一緒に盛り上げていけたら」と締めくくった。
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