Rei「時間の尊さや儚さを考えることが多くなった」新譜で示した居場所
INTERVIEW

Rei「時間の尊さや儚さを考えることが多くなった」新譜で示した居場所


記者:村上順一

撮影:

掲載:19年11月13日

読了時間:約13分

リスナーの耳の想像力を信じる

「SEVEN」通常盤ジャケ写

――私は今作の中で「DANCE DANCE」が特に気に入っているんですけど、こういったアコギでベースとギターを両方やるようなアレンジになったのはなぜですか。

 最近、制作をするときに心がけていることとして、「リスナーの耳の想像力を信じる」という部分を大切にしています。ドラムが鳴っていなくてもピアノもベースも弾かれていなくても、想像して頂ける部分というのがあって、それによってそこを信じてあえて音を入れないというのもアレンジのひとつかな、と。

 この「DANCE DANCE」はギターがベースの役割を担っている部分もあれば、実際にギターの部分になっているところもありますし、リズムもドラムの代わりにタップダンスをパーカッシブなリズムセクションとして迎え入れて、きっと皆さんがビートを想像してくれると思いました。

――あのリズムはタップダンスだったんですね。

 音楽を極めている人は、コードを鳴らさなくてもシングルノートにコードトーンを入れて、リスナーにいま曲のどこにいるかということを感じさせることができるんです。自分もそういう境地に達したいなと思って「DANCE DANCE」は削ぎ落としたアレンジに挑戦しました。

――シングルノートでも色々想像させる人は、Reiさんにとってどういう人がいますか。

 ジョー・パスとか、ジャコ・パストリアスです。グルーヴもゆっくりだったり速くなったりジョー・パスはするんですけど、ちゃんとグルーヴの車輪が滞りなく速く回ったり遅く回ったり、グルーヴが途切れない感じがあるんです。

――ズレているとかではなく、ちゃんと周期があるのですね。

 そうなんです。波の満ち引きが速くなったり遅くなったりはあるんですけど、ガクンときたり息が止まるようなことがないので、そういうのは本当に凄いと思います。

――それはメトロノーム(クリック)を聴いて練習していてもできないことですよね?

 これが難しいところですけど…。私はクラシックギターから音楽を始めたんですけど、クラシックギタリストの先生の中にはメトロノーム推進派と反対派がいるんです。グルーヴって「おいしい」という感覚と同じくらい曖昧だと思います。だから一概にメトロノームを聴かないほうがいいとも言えないんですけど。

――ちなみにReiさんはどちら派ですか。

 メトロノームを使用してのテンポキープというのは、アンサンブルのときに凄く役に立つので、基礎練習ではメトロノームはお勧めしますけど、グルーヴの訓練というのは全く別のことかもしれないです。ステディなものもグルーヴと呼べると思いますし、人との会話でも相手の様子を見ながらキャッチボールがあると思います。やっぱり曖昧ですけど、潮流というか川の流れみたいな感じでしょうか。それを塞き止めるようなことがあったら「ちょっとグルーヴ悪いな」みたいな感じという風に捉えています。

――「これだ」という答えがなかなかない感じですよね。ちなみに「DANCE DANCE」はクリックを聴いてレコーディングを?

 これはクリックを聴いていますが、ダビングのパートによっては聴かずに録りました。

――さて、タップダンスも意外性があって面白いなと思いましたが、面白い音という点で他にもありますか。

 「Little Heart」という曲でトロンボーンの間奏が入っているんですけど、それは私が頑張って吹いているんです。

――管楽器も出来るんですね!

 吹けるというほどではないのですが、自分の作品はギターの比率が多くなるので、間奏でもギターソロが多くなったら、一番聴かせたいギターソロに注目してもらえなかったりする可能性も加味して。この曲はソフトなフレンチホルンとか、アタックの柔らかい管楽器のイメージがあったので、それを入れてみました。

――「Little Heart」はどのような心境のときに書かれたのでしょうか。

 自己愛というのは、いつも自分の作品のなかに込めているメッセージで、日々のなかで忙殺されているなかで優先すべき事項というのが色々出てきます。生活を成り立たせなければいけない面もあれば、組織のなかの人間関係で優先しなければいけないこともあったりするなかで、自分というのが優先順位の下に落ちていくということが一生懸命生きている人ほどあると思います。

 そういうときに一番仕事が潤滑に進むときって、自分が一番ハッピーなときだったりするなということに気づきました。自分のことを大切にして、構ってあげられる人が自分の周りの人達も大切にしてあげられるんじゃないかな、と。

――確かに自分の優先順位がどんどん低くなっていくときがありますね。とりあえず周りに迷惑をかけてはいけないとか。

 実際のところ、自分が大切にしたいと思っている相手が、私自身が幸せだということ、お互いに願っていることだってあるじゃないですか? そういう空回りもあると思うので、台風の目じゃないですけど、まず中心から始めるということは基礎かなと思います。

――いまのお話しを聞くと「Little Heart」というタイトルがしっくりきます。

 少女でも少年でも、主人公が毎日泣いていて、その涙によって氷みたいに小さいハートがどんどん溶けていって無くなってしまうというような主軸となるプロットを作りました。その小さいハートが無くなる前に守ってあげようみたいなことで書きました。

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