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『ターミネーター2』の正統な続編として描かれる、シリーズ新作『ターミネーター:ニュー・フェイト』が全国公開された。『ターミネーター』の生みの親でありながら、シリーズ最大のヒット作『ターミネーター2』(T2)以降、シリーズへの直接的な関与がなかったジェームズ・キャメロンが製作に復帰。更に『デッドプール』の大ヒットで知られるティム・ミラーがメガホンをとった。また、リンダ・ハミルトンがサラ・コナー役として『T2』以来の同シリーズに復帰。アーノルド・シュワルツェネッガーとの黄金コンビが復活した。本作に新たに加わったのは、人類の命運を握る少女ダニー役を演じたナタリア・レイエス、ダニー守る謎の戦士グレース役のマッケンジー・デイヴィス、そして少女の命を狙う凶悪に進化を遂げた最新型ターミネーターREV-9役のガブリエル・ルナ、ディエゴ・ボネータ。プロモーションとして来日していた新キャスト3人にインタビューする機会を得た。それぞれハードな撮影を振り返るなか、ガブリエルはREV-9の動きとして参考にしたのは「日本のカルチャー」だったことを明かした。【取材・撮影=木村武雄】
グレースのスタントに優雅さを、マッケンジー
マッケンジーが演じたのは、ターミネーターに命を狙われる少女ダニーを守る為に未来から送られてきたグレース。人間の運動能力の限界を超え、過去最凶のターミネーターREV-9にも怯むことなく驚異の戦闘力で戦う。そのアクションシーンの数々は、本作一番の見どころと言っても過言ではないほどの迫力だ。
マッケンジー「ウエイトを使ったトレーニングは直線的な道のりだったので、そこまでは大変ではなかったんだけれども、手慣れたスタントマンのような優雅さもってスタントするのは一番の挑戦だったの。小さい頃からスポーツや武術などをやっていたらまた別だけど、私は一切そういうのをやってこなかったから体が効率よく動けるように見せるまでには大変だった」
殺人兵器のREV-9に対して、グレースは運動能力を強化された人間で、いわばサイボーグ。ロボットと人間の中間にあたるグレースを演じるにあたって精神面での役作りはどうだったのか。
マッケンジー「演じるのはそれほど難しいものではなかった。それはキャラクター造形がしっかりできてきたからだと思う。人間として子供時代を過ごし、想像できないような経験した。愛情や傷跡、一人の人間としての心を持っていてそれを強化されたから、私は好きに演じてよかったの。逆にガブリエルの方が大変だったと思う。もともとマシンであるものに人間味を持たせる必要があったし、見ていて関心を持たせなければならないから。だから私の場合は軍人や強靭であることの信ぴょう性を持たせること以外、人間味という意味では好きに演じることができたのでそれほど難しいものではなかったの」
REV-9に日本を取り入れた、ガブリエル
マッケンジーから「大変だったと思う」と言われたガブリエル。彼が演じたのはターミネーターREV-9。吸い込まれるような優しい笑顔を見せたと思ったその直後、衝撃的なその戦闘能力で観る者を恐怖のどん底へと誘う。まさに“全身凶器”といっても過言ではない。
ガブリエル「やっぱりトレーニングは大変だった。1時間半のウエイトトレーニングに加えてスタントワーク。撮影が入ってからも肉体を維持しないといけないので、撮影中のトレーニング、それに武器の扱い方も。その中で一番辛かったのが、最高のジェラート屋さんがあって、そこに入れなかったこと。僕自身は甘党で、おいしそうなドーナツ屋さんがブタペストにあって、シリアルなクランチーなもの。12個ぐらいいけそうだったのに(笑)」
インタビューでは茶目っ気も見せつつ応じていたガブリエル。REV-9は、『ターミネーター2』で「T-1000」が見せた液体金属の特性を活かしながら、今回はその能力が更に進化。外骨格と内骨格の2体に分離が可能になった。その強さは尋常ではない。演じるにあたっては、演出家・鈴木忠志氏の演劇訓練法や『子連れ狼』を参考にしたという。
ガブリエル「鈴木忠志さんという演出家がいて、彼が提唱する演技法を学んだことがあったんだ。REV-9を演じる時にそれを応用することができた。彼は歌舞伎の演出もやっていたんだ。彼のは肉体的な役者としてのトレーニング方法で、感情というものは脳で考えるものではなくて、肉体的なものであるというもの。肉体を居心地の悪い状態してからセリフを言うことだった。ただ、REV-9はセリフがあるわけではないけど、自分が注視したことは目線を変えるだけで表現したり、『静』の状態だけどエネルギーを感じさせる、まるで弓を放つ前の弦のような緊張感をどう思てるか、『スズキ・メゾット』では究極的には人の肉体だけで十分なんだとも言っていて、それだけで観ている者に興味を持たせることができる。それに加えて、『子連れ狼』の原作者・小池一夫さんにもインスピレーションを受けた。侍というのは戦う時に効率が良くて立ち位置から始まり、つま先が少し地面にめりこんで、戦うときは一刀両断。それだけで戦いを終わらせることができる。REV-9を演じたときは常にそれが脳裏にあった。分離するときはモーションキャプチャーでも演じていて、さきほどのメゾットはそこで応用したんだ」
また、『T2』でT-1000を演じたロバート・パトリックも参考にしたという。
ガブリエル「『ターミネータ』はすごく見ていたし、アーノルドは出会う前から刺激を受けていた。それと、T-1000を演じたロバート・パトリックさんもすごく参考したんだ。彼はアーノルドの肉体は持っていない。でも恐怖感や容赦なく追ってくることができた。それは僕も見せたいと思った。REV-9は800と1000の良い所を組み合わせたもの。その両方を見せたいと思ったんだ」
境遇が重なったダニー、ナタリア
ナタリアが演じたのは人類の命運を握る少女ダニー。普通の少女として暮らしていたダニーだが、グレースとともに、REV-9と戦っていくなかで戦士としての力強さが身についていく。ナタリア自身もスタントは大変だったと言い、来日会見中でも「ブダペストで撮影した水中シーンはつらかった」とも振り返っていた。
ナタリア「6カ月の撮影期間を生き延びるための体づくりをしなくてはならなくて(笑)。ただ、トレーニングはマッケンジーとガブリエルよりも短かったの。撮影に入る1カ月前から武器や水中のトレーニングを積んで、もちろん撮影中も走っていたし、ヘリや飛行機、ハマーなど車両の中に居続けていたから撮影中もトレーニングをしていたの。自分にとってはハードな現場だった。でも一番つらかったのが、夜間撮影を1カ月半にわたってやったとき。朝の6時から夜の6時まで12時間以上、ダムのシーンだったので水浸し。その期間は一番疲れて大変だったの」
一人の少女から戦士へと変わっていくダニー。終盤に向けて顔つきが変わっていくところも印象的だ。
ナタリア「彼女が辿る道のりのなかでどう変化していくかは大事なところでもある。でも登場した当初から勇気を持つ、コミュニティのなかでもリーダー的な存在だった。そこから未来の世界でとても重要な人物になっていかないといけない。それを演じるときは、私の道のりと重なるところがあったので演じやすかったの。初めてのアメリカ映画、シリーズものの大作。その世界を感じて身を置くという道のりは一緒だった。そのなかで強さを手にして自信をつけていくそれは私の境遇にも似ていた」
そのナタリアは会見ではこうも語っていた。「ラテン系の人間として代表としてこのシリーズに参加しているのは責任を感じている。多様性、ハリウッド映画も変わってきている。色んな人に入る余地があることを示している」
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