nano.RIPE「初心を忘れない」長年の活動を経たからこそできる新たな挑戦
INTERVIEW

nano.RIPE「初心を忘れない」長年の活動を経たからこそできる新たな挑戦


記者:榑林史章

撮影:

掲載:19年11月09日

読了時間:約12分

 nano.RIPEが11月6日、21thシングル「エンブレム」をリリース。1998年にきみコ(Vo&Gt)とササキジュン(Gt)を中心に結成し、インディーズ活動を経て2010年にシングル「パトリシア」でメジャーデビュー。これまでに『花咲くいろは』『のんのんびより』『食戟のソーマ』など、人気アニメのテーマソングを数多く担当。前回のシングル「ヨルガオ」は、NHK『みんなのうた』でオンエアされ人気を博した。「エンブレム」は、サウンドプロデューサーに出羽良彰を迎えて制作。『食戟のソーマ 神ノ皿』ED主題歌としても話題。「ヨルガオ」でファン層が広がったことを受けてきみコは「nano.RIPEが大事にしている歌、歌詞、メロディを守りながら、どんなサウンドでもアプローチ出来るようにと制作した」と話す。制作における想いやTBSラジオにハマる日常などについてきみコに話を聞いた。【取材=榑林史章】

nano.RIPEらしさを守りながら新しいサウンドでアプローチ

「エンブレム」ジャケ写

――「エンブレム」は『食戟のソーマ 神ノ皿』ED主題歌で、アニメ『食戟のソーマ』シリーズのタイアップは3度目となりますが、前2曲「虚虚実実」と「スノードロップ」はアッパーな楽曲でした。今回はテイストが違いますね。

 『食戟のソーマ』の物語自体が佳境に差し掛かって、アニメ制作側からもアッパーではなくミディアムテンポが良いという要望があったんです。それにアニメのシナリオ的にも「虚虚実実」や「スノードロップ」の時は、バトルの真っ只中で次はどうなるか? みたいなスリリングな展開で。今回はバトルのスリリングさもありますが、未来がすぐそこまで見えてきているという感じなので、広がりがありつつちょっと切なさもある曲が合うんじゃないかと思いました。

――歌詞は、主人公の雪平創真たちが様々なものを失いながら成長していく様子と同時に、出会いと別れを乗り越えて先に進んで行くことの強さといった、誰にでも通じる普遍性も歌っていますね。

 『食戟のソーマ』にはコミカルな表現もたくさんあるけれど、物語はすごく熱くて深みがあるんです。伝えたいメッセージがしっかりあって、笑いながら見ていられる楽しさがありつつ、どこかですごく考えさせられるところもあったり、泣けてくるシーンがあったりします。それは自分たちのバンドの活動とも、すごく重なるところがあると思って。だから『食戟のソーマ』のために書き下ろした曲ではあるけど、これまで以上にnano.RIPE自体のことも言い表した曲になりました。

――曲の頭から高いキーの歌で始まり、サビはずっと高いですね。

 ずっと高いままです。一瞬高くなるという曲はたくさんありましたが、ここまで高音が続く曲は、いままでありませんでした。でも実際に歌うと難しいことはなく、むしろ気持ち良いなと思いました。もともと私の声が高めだし声質的にも特徴があるので、聴いた人はすぐ「きみコの声だ!」と分かってもらいやすいと思います。

――編曲には、amazarashiなどを手がける出羽良彰さんを起用されています。アレンジャーを外部から入れるのは、これまでにも?

 前回のシングル「ヨルガオ」では、兼松衆さんにアレンジをお願いしました。昨年リリースしたアルバム『ピッパラの樹の下で』も、半分くらいの曲でいろんなアレンジャーさんに入っていただいていたので、今は割とそういう流れです。それで今回は、初めて出羽さんに入っていただきました。

――出羽さんとは、どういう繋がりで?

 以前に出羽さんとお仕事をしたことがあるスタッフがいて、そのスタッフから「nano.RIPEに合うと思う」と、紹介していただいて。それにもともとamazarashiの音楽が好きだったので、是非とお願いしました。

――出羽さんのカラーみたいなものは、どういうところに感じていますか?

 きっとamazarashiのイメージで「エンブレム」を聴くと、意外に感じる方が多いと思います。すごく幅広い感性を持った方で、もともと曲が持っているものを大事にしながら、ストリングスや鍵盤を使って、その世界観を自然に広げてくださる感じです。出羽さんご自身は、もともとはギターを弾かれる方なんですけど、だからと言って変にギターばかりが目立つわけでもないし。

――「エンブレム」は、そもそもギターがあまり前面に出ていない感じですね。

 そうですね。今までのnano.RIPEの曲で定番だった、歪んだギターやジャカジャカ鳴っているギターが入っていないし、ディレイもあまり使っていないから、そこは意外だと思う方が多いんじゃないかと思います。

――今までのファンが思うnano.RIPEらしさに、変に固執する必要はない、と。

 前回の「ヨルガオ」から、聴いてくださる方の幅がすごく広がったんです。「ヨルガオ」はNHK『みんなのうた』で流れたことや、カップリング曲の「ローリエ」が夏の高校野球関連の番組テーマソングだったので、今までnano.RIPEを知らなかった方がたくさん聴いてくれるようになりました。nano.RIPEが大事にしているものは、歌とメロディと歌詞なので、そこは守りながらどんなサウンドでもアプローチ出来るようにということを考えて、制作したのが今回のシングルです。

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