「まずは出会ってください」一歩ずつ大きくて深いバンドに
――ちなみに今作5曲以外に収録曲候補はあったのでしょうか?
津野米咲 めちゃくちゃあったよね? 30曲はありました。
石野理子 曲が沢山あって悩みました。
――その中で5曲目「Yo-Ho」という新たなテイストが収録されたというのは興味深いですね。
歌川菜穂 スッと決まったよね? 「これは入れるでしょ」って。
津野米咲 そこまで違うことをしたとあまり思っていなかったかもしれません。
――いままでの赤い公園を聴いてきた聴き手としてはびっくりしましたが。
津野米咲 そうですよね。普通に考えたら音が違いますもんね。
――「Yo-Ho」のエレクトロアプローチは、レトロな点と近代的な点が上手く合わさっていると感じました。
津野米咲 勉学的にHIP HOPを習ってきたわけでもないので、HIP HOPをやろうとも思っていなくて。いつもデモを作るときに使うLogic(Macの音楽制作ソフト)で、これまで何百と赤い公園のデモを作ってきた私にしかできない打ち込みを、と思って。ノージャンルのつもりで作りました。
――確かに、何かの要素に寄っている感じはしません。コーラスのような、人の声をサンプリングしたような上モノが入っていますが、あれはどういった着想で?
津野米咲 あれは、声だとわからないくらいビットクラッシャー(bit数を落としてローファイにするエフェクト)をかけて歪ませているんです。シンセの音源でバイオリンとボーイズコーラスみたいなのが一緒になっている音源があるんですけど、それをバキバキに歪ませて。
――この上モノのアプローチはかなり独自的かつ重要かと。
津野米咲 私もそこはとても気に入ってます!
――新しさとレトロ感の混合に加えてオリジナリティが出ていますよね。この「Yo-Ho」はかなりキーとなる楽曲がゆえにツアー名『FUYU TOUR 2019“Yo-Ho”』に含まれている?
津野米咲 そうです。ライブ乞うご期待ですね。大事な曲なんです。
藤本ひかり ツアーでこの曲をやらないということはないよね。
――この曲は凄く後を引きます。また聴きたくなるというか。
津野米咲 書きたいことを書いているし、歌いたいように歌っているし。凄く自然なんです。
藤本ひかり おいしい水みたいなね。
津野米咲 ありがとう。というと?
藤本ひかり 奥多摩の川の水とかおいしいんだよ。高い水だからおいしいっていうわけじゃなくて。水って欠かせないし、何度でも飲みたくなるほうがいいじゃない?
――なるほど。ナチュラルに湧き出た自然な音楽、という解釈もできますね。水のように人にとって基本的に必要なものがごく自然に、そして洗練されていると。
津野米咲 そうなんですよね。でもおいしくない水道水とかでもここまで育てますから。
藤本ひかり 水道水もまた奥深いんですよ。
津野米咲 ひかりさんが言ってることはどんどん意味がわからなくなってくるから。
藤本ひかり 水に流しましょ!
――(笑)。それでは最後に、『FUYU TOUR 2019“Yo-Ho”』についての意気込みをお願いします。
歌川菜穂 「Yo-Ho」とか、いままでやっていない曲がどうなるのか私達もわからない曲があったり、また全然違う何かをぶっ込みたくなっています。どんどん挑戦することは忘れず、お客さんにワクワクをお届けできるツアーにしたいです。いまの赤い公園が出るツアーになったらいいなと思います。
石野理子 一つ前のツアーとは全然違う状況の中で、会場も前よりも大きな場所になっているので、とにかく期待してくださる方がたくさんいる状況でのツアーになると思うので、みなさんを最大限楽しい世界に誘えるように、私達も色んな挑戦をしつつ、楽しいライブにしたいと思っています。
藤本ひかり 冬にツアーをまわることがいままであまりなかったんですけど、私達を観に来る人だけが集まるという空間なので、フェスに出させて頂く時って数ある中の一つだけど、自分達を目的として足を運んでくれるからには、何が起こるかわからないような濃厚なお化け屋敷にしていきたいです。
津野米咲 私たちがバンドを何故続けているのかと、言葉では説明しきれないんですけど、歌詞に書いてある言葉では説明できない理由とか、それは姿を見てもらうことで何か伝わるものがあるのかなと思っているんです。この1枚のEPがより深く楽しめるツアーになると思います。今回行けない所にも行きたいし、ここから各地のみなさんと一緒に一歩ずつ大きくて深いバンドになっていきたいと思っています。「まずは出会ってください」という感じです。
(おわり)
作品情報
『消えない - EP』
2019年10月23日リリース
品番:ESCL-5167 価格:1500円 (tax out)
<収録曲>
01. 消えない
02. Highway Cabriolet
03. 凛々爛々
04. HEISEI
05. Yo-Ho


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