Ivy to Fraudulent Game「不完全さの中で価値を見いだす」音楽に見る人生観
INTERVIEW

Ivy to Fraudulent Game「不完全さの中で価値を見いだす」音楽に見る人生観


記者:榑林史章

撮影:

掲載:19年09月12日

読了時間:約14分

不完全さの中で価値を見いだしていく

――アルバムの最後の曲「賀歌」は、最後のほうに合唱しているイメージのところもあったり、行進するような音が入っていたり、すごく壮大なイメージですね。

福島由也 「賀歌(がか)」は、和歌のジャンル分けの一種で、お祝いの言葉が多く入っている歌なんですけど、長寿を祈る歌が多いみたいです。

――どうしてそれをタイトルにしようと?

福島由也 自分の中のテーマの一つとして、“今を生きる”というところにスポットを当てて書いている曲が多くて、その一環として書きたいと思ったんです。

――「Memento Mori」や「Carpe Diem」が象徴的ですが、すべてには終わりがあるのだから、今を大事に生きるみたいなことが、このアルバム全体で歌われていますね。

寺口宣明 それはバンドのテーマとして、以前から一貫して歌っていることでもあります。だからこのアルバムにも、それが色濃く反映されています。俺たちはいろんなジャンルの曲をやるし、いろんな声で歌うけど、一番大きな軸の部分にあるのが“生きていること”だと思うので。終わりがあるからこそ、生きていることを意識できると言うか。

――そういうのは、結成した時にみんなで話したりしたんですか?

寺口宣明 実は、こうだよねって話をしたのはつい最近で、それまで話したことはなかったんです。ある時、“俺たちって結局、生きてることについて歌ってることが多いよね”って感じで、答え合わせが出来た感じ。だからこれからも、そういう曲をたくさん歌っていくと思います。他に歌いたいことがあれば、それも歌っていくと思うんですけど、今のところバンドとして一番大きいのは。そういうことですね。

――アルバムタイトルの『完全が無い』は、どういうイメージで付けたのですか?

福島由也 「Memento Mori」を作った頃から、今という瞬間をより意識するようになっていて。生まれてもいつか死ぬという人間の不完全さの中で、価値を見いだしていくと言うか。そういう完全という概念がないことを前提にすると、人々の選択や行動は変わって行くんじゃないかと。

――不完全とは違うんですか?

福島由也 不完全とまでは言い切らないと言うか、それを把握できないことすらも、完全性がないことの一つだし。だから、自分の理解の範疇を越えたタイトルかもなと思っています。

寺口宣明 僕的には、例えば数年前に自分が行きたいと思っていた場所に辿り着いたとして、着いたら着いたで、もっと違うとこに行きたいと思う自分がいて、人生はそういう繰り返しだと思うんです。一流のアスリートでも一般の働いている人でも、きっとそうなんじゃないかなって。そういう意味で、すごく前向きなタイトルだと捉えました。

――もっと先に行きたいと、常に前を向いているみたいな。

寺口宣明 少なくとも、僕はそう思う人間です。『完全が無い』って言うと、ちょっとネガティブな印象も受けるけど、僕はそういう風にポジティブに受け止めていますね。

大島知起 目標って、一生持ち続けられるものだし。僕もそういう風にありたいって思います。

カワイリョウタロウ バンドのことで言うと、最近ボーカルの寺口も作曲するようになって、二人作曲者がいる状態です。作曲者が一人だったら、その人にとって完全なものは作れるかもしれない中で、二人の作曲者によるバラエティに富んだ曲が並ぶことで、良い意味で不完全なものになっているんじゃないかって思うんです。それを『完全が無い』とタイトルを付けることで、自己肯定しているんだと俺は解釈しています。

福島由也 完全性って、きっと人の視点によって違うものなのかもしれないですね。

――日光東照宮の柱は、完全=終わりを意味するという考えから、一か所だけ模様を逆さに彫ってあるところがあるらしいです。

寺口宣明 ああ、あえて完全にしていないんですよね。ちょっと通じるところがありますね。まさか昔の人と、考えが合うとは(笑)。

――常に新しい目標を持ち続けるというところで、Ivy to Fraudulent Gameにとっての今の目標は?

カワイリョウタロウ 今は、このアルバムを一人でもたくさんの人に聴いてもらうことです。俺らのことをまだ知らない人にも、アニメがきっかけでもいいのでアルバムを聴いてもらって、“こういう曲もやるんだな”って知って欲しいです。バンドファンの人に限らず、いろんな音楽のファンに聴いて欲しいですね。

寺口宣明 俺はボーカルとして、もっとそのままの自分でステージに立ちたいって思います。もっと声に乗せて自分をさらけ出したい。自分の奥底にある、隠したいような部分までも声に乗せることができたら、聴く人のもっと奥深いところまで入っていけるんじゃないかなって。そんなボーカリストになりたいです。

――11月からは、全国ツアー『Ivy to Fraudulent Game One Man Tour“One Complete”』を開催されます。今ライブをやっていて、手応えとかどうですか?

寺口宣明 楽しいです。ライブの規模感はジワジワ上がってきている感じですけど、お客さんとの距離間は、今すごく良い感じです。近づいてもいるし、一歩引いて観てもらっても成立していると思うし。前よりハッピーな空気で終われることが多いから、シンプルに楽しめていますね。

――Ivy to Fraudulent Gameのステージの魅力は、どういうところだと思いますか?

寺口宣明 曲によって空気がまったく違っていて。表情も違うし。とても幅広い楽曲が揃っているので、お客さんそれぞれでテンションがアガるポイントが変わってくると思うんです。俺たち自身も、どの曲でどんな反応が起きるのかを楽しみながらやっているし。だからお客さんも、それぞれのポイントを見つけて楽しんで欲しいなと思います。

――11月から来年2月までと、けっこう長いですけど。

大島知起 年末年始はイベントもあるので空きますからね。

カワイリョウタロウ 楽しみたいですね。

――アルバムのタイトルは『完全が無い』なのに、ツアーは“One Complete”という。

福島由也 完全は無いけど、視点の置き所では、一つの完成形みたいな感じです。

寺口宣明 完全が無いという中で、それでも完全を目指すという意気込みも込めています。

(おわり)

作品情報

Ivy to Fraudulent Game
2nd Album『完全が無い』
9月4日発売
【完全生産限定盤】CD+DVD VIZL-1620 4600円(税抜)
【通常盤】CD VICL-65228 3000円(税抜)

▽CD収録曲
01. Carpe Diem
02. Memento Mori (TBS系テレビ「CDTV」1月度EDテーマ)
03. blue blue blue
04. 無常と日
05. 真理の火
06. 無色の声帯
07. Only Our Oath
08. Parallel
09. Oh, My Graph
10. 模様 (日本テレビほかTVアニメ「トライナイツ」EDテーマ)
11. 賀歌

▽完全生産限定盤 LIVE DVD
「Only Our Oath Live at Zepp DiverCity -20180701-」の模様を収録

公演情報

▽Ivy to Fraudulent Game One Man Tour“One Complete”
11月24日 北海道・札幌BESSIE HALL
11月29日 石川・金沢vanvan V4
11月30日 新潟・新潟CLUB RIVERST
12月08日 宮城・仙台darwin
12月15日 香川・高松DIME
01月11日 広島・広島SECOND CRUTCH
01月13日 福岡・福岡INSA
01月18日 大阪・大阪BIGCAT
01月26日 愛知・名古屋CLUB QUATTRO

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