猪塚健太「稽古場が好きです」演劇に重ねる青春、美しく咲いて散る花のよう
INTERVIEW

猪塚健太「稽古場が好きです」演劇に重ねる青春、美しく咲いて散る花のよう


記者:木村武雄

撮影:

掲載:19年08月26日

読了時間:約12分

 俳優の猪塚健太が、9月25日から上演されるミュージカル『FACTORY GIRLS ~私が描く物語~』(TBS赤坂ACTシアターほか)に出演する。ブロードウェイの新進気鋭ソングライティング・コンビと日本のクリエイティブ・チームが共作する新作ロックミュージカル。世界に先駆けて日本で上演される。自由を求め闘った女性達の物語で、女性の権利を求めて労働争議を率いた実在の女性、サラ・バグリー役を柚希礼音、サラとぶつかり合いながらも固い友情を結ぶハリエット・ファーリー役をソニンが演じる。猪塚は演じるのは、政治家を志すベンジャミン・カーチス役。ハリエットに恋を寄せるとともに、物語を波乱へと向かわせるきっかけをつくってしまう重要な役どころでもある。憧れは福山雅治で「ああいう大人になりたい」とも語る猪塚は大の演劇好き。短い期間で一つの作品を共に作り上げるところに「青春」を感じるという。そんな猪塚はどういう思いで作品と向き合っているのか、話を聞いた。【取材・撮影=木村陽仁】

憎いけど憎めない、そんな人間になるよう演じたい

――出演が決まった時の心境は?

 ミュージカルに出演すること自体が久しぶりですし、これだけ素晴らしいキャストの方々と、大きな規模でやらせて頂くことが初めてですから、嬉しいです。緊張やプレッシャーもありますが、作品はすごく面白いものになると思います。なので、今は「頑張ろう!」という思いが強いです。主演の柚希礼音さんやソニンさんとは今回が初めての共演となりますが、出られた作品は何度も観ていましたし、柚希さんはミュージカル界のトップスター。「すごい方々とご一緒できるんだ」と、楽しみです。

――演じるのはベンジャミンについてどういう人物だと捉えていますか?

 政治家を目指している青年です。裕福な環境で育ってきて、自分の理想とするアメリカのために、政治家になって夢を叶えたいという思いを持っています。その一方で、ハリエット(ソニン)に恋している人間として、彼女のために何かをしたい、共に良い未来をつくっていきたいと純粋に思っている面もあって。そのために自分ができることを一生懸命にやっていくんですけど空回りして、それが物語で言うところの波乱や問題になる。なので、観られるお客さまからしたら「アイツ何やってんだよ!」と思うかもしれないですけど、あくまでベンジャミンはただただ自分は良いことをしているという。問題を起こすけど、どこか憎めない、そんな人間に見えたらいいなと思っています。

――それをどうやって役に落とし込んでいきますか?

 とにかく起きている出来事より、「自分が何をしたいか」という思いをどれだけ強く持てるかというところだと思っています。そこを一生懸命にやれば自然と物語を壊していく人間にもなるし、何をもって何をしたいという人間なのかということが伝わるのかなと思っています。19世紀半ばくらいのアメリカの、この階級の人間が、どういう暮らしをしてどういうことを思っているんだろうということを学んでいます。

 それとミュージカルですから、技術的な部分ももっと磨いていかないといけない、とも思っています。僕のなかでは、ミュージカルのなかでおこなわれるお芝居、歌も含めて、それらをいかに届けられるかということを、一番重点的に置いています。物語に生きる人物として、歌とお芝居をどういうアプローチでやれば一番伝わるのか。先ほども言いましたが、時代背景や工場で働く女性達とその違いをしっかりと捉えないといけない。そういう働き方ということで言えば、現在と重なる部分もありますし、そういうところも含めて落とし込んでいきたいと思っています。

――ハリエットとの関係が見どころかと思いますが、ソニンさんとはどのように関係値を築いていきますか?

 ハリエットに対しては一目惚れというか、叔父・スクーラーについて工場で一緒にやってきて、ハリエットは編集者として既に有名で、彼女の働いている姿を見て好きになる、という設定なので、ハリエットのことをもっと知って役として好きになっていきたいと思っています。自分の夢と、ハリエットへの思いが重なるというか、自分の夢にとっても絶対必要な存在になっていくと思うので、ソニンさんとはある意味一番コンタクトをとらなければいけない人だと思います。

――恋する役というのはいままで演じてこられたと思いますが、そのときに心掛けていたことはありましたか?

 役とはいえ「本当にこの人は素敵だな」とか「可愛いな」と思えば思うほど、身が入るというか。そこに嘘があるとやり辛い部分が出てきてしまう。なので、本当にハリエットのこともソニンさんのことも、ちゃんと好きにならないといけないと思っています。特にベンジャミンはそういうところにおいても純粋さがあると思うんです。なので、真剣に恋をしたいと思います。

猪塚健太

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