パノラマパナマタウン

パノラマパナマタウン(撮影=Masanori Fujikawa)

 LEFTステージのトリを務めたのはパノラマパナマタウンだ。“熱狂”をキーワードに展開されるライブはここまで登場したバンドとは、また違ったテイストを見せてくれた。本番前のサウンドチェックではエアロスミスの「Walk This Way」を“パノパナ流”で披露し、会場を本番前から沸かせていた。

 1曲目は「ずっとマイペース」を投下。「マイペースに好きなことをやる」という、自由な意志をキャッチーなメロディに乗せ、岩渕想太(Vo.Gt)のファルセットが印象的に響いた。そして、“PPT”のコール&レスポンスから浪越康平(Gt)のソリッドなギターカッティングが印象的な「世界最後になる歌は」は、音源よりも前ノリで攻撃的なサウンドで会場を巻き込んでいく。

 岩渕は「もっともっと夏が楽しくなる曲です」と紹介した8月9日に配信された新曲「HEAT ADDICTION〜灼熱中毒〜」を初披露。ザ・ベンチャーズを彷彿させるギターのクロマチック・ラン奏法が印象的な、ジリジリとした真夏にピッタリのサーフロックナンバーに仕上がっていた。続いて、ニュー・ウェイヴ色が強い「月の裏側」や、メッセージ性が強い「ラプチャー」は、オーガニックなパーカッションのループがスパイスとなり、これもまた音源とは一味違った印象を与えてくれた。パノラマパナマタウンのステージはワクワクに満ちていた。

 岩渕は『MASHROOM』ということで好きなキノコを発表。「えのき」「しいたけ」と堂々の1位を飾ったのは「なめこ」で、「味噌汁に入れると美味しいから」と会場の笑いを誘い、ライブはラストスパートに突入。

 ラップで一体感を高め、息のあったリズム隊の繰り出すグルーヴが中毒性のある「マジカルケミカル」、<ほっといてくれ>と彼ららしいフレーズが、ホットな空間を作り上げた盛り上がり必至の「フカンショウ」、そしてラストは、自分の意志で考えて生きていく、生きることへのリテラシーを説いた「めちゃめちゃ生きてる」は、ドラマチックな起伏のある流れでオーディエンスを煽り、終始“熱狂”を振りまいたステージで、トリのフレデリックへとバトンを渡した。

セットリスト

01.ずっとマイペース
02.世界最後になる歌は
03.HEAT ADDICTION〜灼熱中毒〜
04.月の裏側
05.ラプチャー
06.マジカルケミカル
07.フカンショウ
08.めちゃめちゃ生きてる

フレデリック

フレデリック(撮影=ハタサトシ )

 トリを務めたのは来年2月24日に神奈川・横浜アリーナ公演も決定しているフレデリック。この日の彼らはまた一味違ったステージを見せてくれた。オープニングを飾ったのはワンマンでは最後に披露されることが多い「飄々とエモーション」でスタート。演奏のキメに合わせて飛び交うレーザーは視覚的にも昂ぶらせてくれる。そして、会場を一つにする三原健司(Vo.Gt)のエネルギッシュな歌声、それに応えるかのようなオーディエンスのシンガロングは圧巻だった。

 「俺たちだけの遊び場を作ろうぜ!」と投げかけた、三原康司(Ba.Cho)もノリノリのステップを見せたグルーヴィーな「シンセンス」からノンストップで届けた「KITAKU BEATS」と、体を揺らさずにはいられないナンバーを立て続けに投下し、新木場STUDIO COASTは“フレデリック色”に染まっていく。

 MCで健司は「音楽は戦うものではない。楽しまなければいけないから、俺らは楽しい背中をみせていけるようなバンドになろうとやってきました。この10年間の背中を見て下さい」と語り、赤頭隆児(Gt)のレスポールから繰り出されるギターカッティングと80’sを彷彿とさせるシンセの絡みが美しい「NEON PICNIC」へ。ミラーボールに反射されたイエローとピンクの光のコントラストは、ネオン街が滲むような幻想的な空間で、楽曲の世界により陶酔させてくれた。

 そして、「みんな音楽好き? このBPMで遊んで下さい、自分なりの楽しみ方を見つけて下さい」と披露された新曲の「イマジネーション」は、一発で覚えられるほどのキャッチーなサビのメロディが印象的なナンバー。しっかりと裏拍まで感じ取れるようなビートに、オーディエンスも身を委ね楽しむ。知らないという壁を壊していく、そんな瞬間を体験させてくれた。ラストスパートはBPMを上げ「オンリーワンダー」。一気にトップギアに上げ、更にエキサイティングな空間に。

 健司は「音楽を始めた時にいろんな先輩の背中を見てきて、一番かっこいいなと思ったのが大舞台で挑戦する人たちで、それに憧れてきたので、だから俺たちまだやったことのない新曲をやって帰ります――」。

「俺たちのこれからをずっと見続けて下さい」と話し、新曲の「VISION」を初披露。イントロでのメロディアスな康司のベースが高揚感を煽り、高橋武(Dr)のタイトなリズム、音と音の隙間をぬうようなソリッドな赤頭のカッティング、健司の歌声が映える切ないメロディが最高に気持ちを上げてくれる1曲。これからを見据えながらも、まだ見ぬ景色への希望を感じさせてくれたナンバーで、ステージを後にした。

「???」はフレデリック主導のスペシャル企画

 続いては事前に発表されていたプログラムで「???」と、謎のベールに包まれたコーナーへ。今回のアンコールはトリを務めたバンドが企画するという試みで、フレデリックが担当。アコースティックセットで、フレデリックが選んだMASH A&Rのボーカリストにフレデリックの曲を歌ってもらうというもの。

 健司は「自分たちとオーラルを第1世代だとしたら、第2世代、もう一回MASH A&Rを引っ張っていてくれる後輩が必要なんじゃないかなと思った。このあと紹介する3組に、引っ張っていてもらいたいという思いがあります」とその意図を語った。

 最初に呼び込んだのはSaucy Dogの石原。緊張すると話しながら、健司と石原の歌いたい曲の見事に意見が一致したという「ナイトステップ」を披露。情熱的なアレンジは真夏の夜にピッタリで、そこに乗る石原の歌も粘りのあるSaucy Dogの時とはまた違った一面を覗かせた。

フレデリック×石原慎也(撮影=Masanori Fujikawa)

 続いてはパノラマパナマタウンの岩渕を招き、「かなしいうれしい」をラップバージョンで届けるという岩渕らしさが出たアレンジ。印象的なフレーズの上で自由にリリックを踊らせる岩渕のスキルを堪能。

フレデリック×岩渕想太(撮影=Masanori Fujikawa)

 最後は「こいつやったら俺らの曲を化けさせてくれるやろ」と、LAMP IN TERRENの松本をゲストボーカルにフレデリックのインディーズ時代のナンバーから「ほねのふね」を披露した。松本の凛としたエネルギッシュな歌声はこの曲の新たな一面を引き出しているかのよう。

フレデリック×松本大(撮影=Masanori Fujikawa)

 オーディエンスも三者三様のスタイルをじっくりと聴き入っていた。ボーカルをフィーチャーすることに重きを置いた、アコースティックにした理由が伝わってくるコーナーだった。

 「今日はMASH A&Rのアーティストだけじゃなくて、ここにいるみんなが主役になって帰りたいと思っているから、俺らの曲をここにいる全員で歌ったらどうなるのかと思っています。歌える曲1曲あるやろ?」

 ラストは健司が「踊ってない“MASHROOM”は気に入らないですか」の問いかけから、出演者全員もステージ上に参加しての「オドループ」。オーディエンスも歌い騒ぎ、ステージ上もお祭り騒ぎの盛り上がりだ。ボルテージは最高潮を迎える中、ライブは大団円を迎えた。

「MASHROOM 2019」(撮影=Masanori Fujikawa)

 このライブで掲げられたコンセプトは次世代へとつなぐというもの。それもありTHE ORAL CIGARETTESとフレデリックで後輩バンドを挟むという出演順となった。先輩たちからの熱い想いを感じながら、それぞれのバンドのパフォーマンスはワンマンとはまた違ったベクトルを見せていた。次回はどのようなシナジーを見せてくれるのか、この7組の進化に期待が高まる。

セットリスト

01.飄々とエモーション
02.シンセンス
03.KITAKU BEATS
04.NEON PICNIC
05.イマジネーション
06.オンリーワンダー
07.VISION

ENCORE

EN1.ナイトステップ(FAB!!)
EN2.かなしいうれしい(FAB!!)
EN3.ほねのふね(FAB!!)
EN4.オドループ

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