オーラルやフレデリックら７組による競演　「MASHROOM」未来へ紡ぐ熱いステージ

LAMP IN TERREN

　FRONTステージ２組目は７月に日比谷野外大音楽堂でのワンマンを成功させたばかりのLAMP IN TERRENが登場。近年、めまぐるしくライブの精度が高まってきている彼らが１曲目に選んだのは「innocence」だ。シリアスな表情を持ちながらも、感情を高ぶらせるサウンドと歌で、オーディエンスの心を鷲掴みにしていく。

　続いて野音でも披露されたタイトル未定の新曲を届けた。サビでの鬼気迫る松本大（Vo.Gt.Pf.）の歌声にオーディエンスもその場で立ちすくみ耳を傾け聴き入っていた。

　松本は「俺たちも楽しむ仲間に入れてもらってもいいですか？」と投げかけ、「凡人ダグ」や７月に配信リリースされた「ホワイトライクミー」を披露。今のLAMP IN TERRENを見せたい、という思いが伝わってくるかのような選曲だ。「ホワイトライクミー」は、サビまでの助走が長い１曲ということで、松本はサビ前に「サビお待たせ！」と知らせるユーモアも交えながらの歌唱。

　そして、この日は初挑戦もあった。それは「地球儀」の間奏で松本がフロアに初ダイブ。松本は波に乗るかのように、オーディエンスに運ばれていく。「地球儀」を歌い終えた松本は「“ダイブバージン”を捧げちゃいました」と嬉しそうな表情を見せた。

　MCでは昨年の『MASHROOM』でポリープの手術を受けることを決断したことや、音楽を愛し続ける人へ向けて「音楽を愛してここにきた皆さんのことも思いっきり愛したいと思っている。皆さんが聴いてくれている間は全力で背中を押し続けたい、俺の歌で押し続けられるのなら一生押し続けたい」と想いを綴った。

　その言葉を体現するようにラストは「BABY STEP」で、心を震わせる鮮烈な空間を作り上げ、ステージをあとにした。ちなみにサウンドチェックでは「New Clothes」を演奏し、会場を本番前から盛り上げていた。

YAJICO GIRL

　今回の出演者の中でも異彩なサウンドを放っていたのは、活動スタンスを「Indoor Newtown Collective」と表現する５人組バンド・YAJICO GIRLがLEFTステージに登場。シンセサイザーのエピックなサウンドに歪んだギター、そこに乗る透明感のある四方颯人（Vo）が絶妙なコントラストが印象的な、８月７日にリリースされたニューアルバム『インドア』のラストを飾る曲「2019」でスタート。

　＜想いを叫んでみてよ＞と現代への嘆きともいえるメッセージ性を打ち出した「いえろう」からニューアルバムから「ニケ」はイントロの叙情的なギターアルペジオから、グッと緊張感を高め、耳に馴染むメロディと大きなビートで会場を包み込んでいく。目を閉じればそこに歌詞の世界観が広がっていくような感覚があった。６月に先行配信されたオルガンの音色がどこか寂しさを感じさせる「NIGHTS」、そしてニューアルバムから「汽水域」は夜をイメージさせてくれる。緩急をつけたアレンジはバンドのスキルを感じさせた。

　「熱が醒めるまで」はここまでの曲調とは一転した軽快なポップさを提示。エンディングではオーディエンスのクラップと一体となった。四方は「自分らなりのニュースタンダードを作っていきたい」と、これからのバンドの意思を告げ、それを体現したアーバンなR&Bの要素を感じさせる「ニュータウン」を投下。洗練されたサウンドから徐々に熱を帯びていく様は、これからのYAJICO GIRLのアティチュードを表しているかのようだった。

Saucy Dog

　７月に２マンツアーを成功させたSaucy DogがFRONTステージに登場。SEに乗って石原慎也（Vo, Gt）、秋澤和貴（Ba）、せとゆいか（Dr、Cho）が順番にステージに登場。１曲目は「真昼の月」でスタート。スリーピースによるオーガニックなサウンドは、その生々しさでオーディエンスの心を掴んでいく。

　体を動かしたくなる衝動に駆られる「ナイトクロージング」で、オーディエンスは手を振り上げ、３人の音に応えているよう。石原は「どんどんいきますよ！」と威勢のよい声から「バンドワゴンに乗って」は生き物のようにグルーヴを変えていくバンドの面白さをダイレクトに感じさせてくれた。

　せとは「（MASHROOMに出演）３年目ということで大人になって臨もうと思いました。でも、このステージに立ってみて２年前のことが蘇りました。初心に帰れて嬉しいです」と今の心境を語り、新曲の「雀ノ欠伸」を届けた。石原のテレキャスの芯のある音が鳴り響き、カントリーミュージックを彷彿させるアレンジに、伸びやかな歌声が心地よくマッチした、Saucy Dogらしさ溢れるナンバーで楽しませた。

　ガラッと雰囲気を変え、ミディアムバラードの「コンタクトケース」を届けた。失恋の切ない歌詞はその世界観にどっぷりと浸るオーディエンスの姿があった。石原の足を大地に踏み出した、力強いカウントから始まった「いつか」。感情を曲に落とし込むスキル、そしてエモーションが見事なバランスで紡がれる１曲。

　MCでは石原が「自分たちの情熱が受け入れられたことがなかった。でも、『MASHROOM』のお客さんは受け入れてくれることが嬉しかった。そして、みんな音楽がすごく好きなんだとわかりました」と話し、「しっかりと届くように歌います」とラストは「グッバイ」。過去の自分に決別するかのように、高らかに歌い上げ、Saucy Dogの希望の光を感じさせながら、パノラマパナマタウンへと繋いだ。