洋楽でも邦楽でもない「飽和していない音楽」
――「Flame of Love」はネイティヴな海外のサウンドに聴こえます。どちらかというと洋楽志向がある?
僕は洋楽を作っているつもりもないし、邦楽を作っているつもりもないんです。ロサンゼルスに行ってセッションをして制作をするなかで、ここに着地したというか。僕のなかでは洋楽でも邦楽でもどっちでもないもの、ちょうど飽和していない場所に着地できたというか。
――特に狙ったわけではなく、自然なのですね。「Night Divin’」は比較的シンプルでポップな楽曲ですね。歌詞の当て方が面白いです。
ありがとうございます。この曲は歌詞もメロディも各々独立したものがあったんです。それとは無関係なアプローチがあって、そこでふと「あの歌詞を入れてみたら面白いんじゃないかな」ということで投入しました。自分のなかでマッチングが良かったので。歌詞が先か、曲が先か、というところで言ったら、これは曲が先という風になると思います。
――歌詞が先か曲が先か、というのは決まってはいないのですね。「two prisoners」は歌詞、あるいはタイトルの“two prisoners”というワードから広がった?
“two prisoners”は“二人の囚人”という意味で、曲はサウンド・メロディ・リフなど色々な要素がありますけど、組み合わせのなかでより自然な形を探していった感じの曲です。サビの裏拍から歌が入る部分などもそうですね。
――歌詞の<偽りの自由>という部分が気になりました。
状況としては、2人が閉じ込められるんです。何に閉じ込められるかというのが“偽りの自由”なんです。それは色んな意味にとれまして。自由を享受できる環境でも、自由であるがゆえに分からなくなってしまうことがあると思うんです。自由にやったのに、その責任が自分にふりかかってきたり。本当はこうしたいけど、できないとか。自由のなかで何でもできるはずなのに、見えない縛りがあって何かができなくなることってあると思うんです。例えば「今から会社辞めてフリーになる」とか、そう簡単にはできないじゃないですか?
――確かにそうですね。辞めるのも独立するのも現状維持も、選択するのは自由だけど決断は難しいところですね。
それはもう“偽りの自由”そのものだと思っていて。そういうことにも繋がるし、生きている限り何かと繋がっているので、自分を縛るものがあって、そのなかに閉じ込められているという。
――完全な自由というのは難しいことなのかもしれませんね。
“偽りの自由”だけだとダーティー過ぎる物語なので、そのなかで一人、理解してくれる人がいるということで“two prisoners ”なんです。そういう光的な存在なんです。
――今作収録曲全てについてお話いただき、バックボーンを知ることができました。今作は川口さんの様々な想いが詰まっている音楽ですが、川口さんにとって音楽とはどんな存在ですか?
「温度」です。悲しいことは冷たくて、楽しいときは温かくてというように、誰かの優しさが染みたりすると温度感として凄く温かかったりすると思うんです。僕も音楽を聴くことによって、自分の身に起こったことを温度として感じるんです。なんと言うか、たまに人の感情がわからないという場面があると思うんです。
――言葉だけだったり、動作や表情だけでは感情が伝わり切らないときがありますね。
でも、音楽にするとその感情がよりはっきりわかるというか、掴めるんです。そういう温度感みたいなのが自分の心のなかにあります。
――ご自身の心のなかにある音楽を形にするわけですが、方向性としてこれからチャレンジしていきたいアプローチは?
今作の方向性でもやってみたい方法がもっと見つかると思うので、今作以上に自信が持てる曲を増やしていきたいです。それに伴って、活動の規模や聴いてくださるみなさんの数を、自分の曲の良さに比例させていけるように頑張りたいと思っています。もっとたくさんの人に届くように作ったはずなのに、自分の活動が駄目で届かないというのは悔しいので…自分の作った曲のためにも、周りの方々のためにも、なるべく多くの人達に届けば良いなと思います。
(おわり)