川口レイジ「音楽は温度」Marty Jamesらとコライトして見えた音楽の表情
INTERVIEW

川口レイジ「音楽は温度」Marty Jamesらとコライトして見えた音楽の表情


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:19年08月20日

読了時間:約12分

共同制作“コライト”の醍醐味

川口レイジ

――洋楽への強い想いが芽生えた流れから、ロサンゼルスへ行こうと思った?

 自分で表現しようとしてもできないので、行き詰まっていたところをスタッフさんが声をかけてくれたんです。アメリカでコライト(曲の共同制作)できる人達がいるんだけど行ってみないか、ということで。

――音楽制作の面で、日本とアメリカとの違いは感じましたか?

 カルチャーもそうですし、人と人との関係性でも感じました。凄く売れている人もそうでない人も対等というか。そこはあまり関係なくて、良い意見だったら通るという感じでした。

――今作でコライトされたMarty Jamesさんとはどのように出会ったのですか?

 僕が日本で、楽曲制作で悩んでいるときに声をかけて頂いたんです。アメリカに行って誰か紹介してくれないかというときに「こういう人達だったら一緒にできるよ」という人達のなかにMarty Jamesさんがいたんです。もちろん僕もMarty Jamesさんを存じ上げていたので、「一緒にできるんですか!?」ということで是非という感じでした。

――Marty Jamesさんとの出会いで大きく影響を受けたことは?

 Marty Jamesさんは凄く決断が早い人なんです。迷っているとは思うんですけど、傍から見たら全然迷っていないスピード感で。「今、考えてました?」みたいな(笑)。でも的確に判断されているんです。そういう姿勢は重要になってくると感じました。音楽制作においても、人生においてもそうかなと。そこはとても影響を受けました。

――『Departure』のコンセプトはあったのでしょうか。

 クレジットにもあるんですけど、全曲「Co-Writing」とあってトップライナーの方と一緒に曲を作るというコンセプトがあります。そのなかでもラテンサウンドを押しています。

――「Summers Still Burning」はサウンドも歌詞も“夏感”が満載ですね。

 これは夏に振り切ろうと思ったんです。好きな季節感は冬だったんですけど、アメリカに行ってコライトという作業のなかで、自分のなかに夏もあるんだなと(笑)。一人で作業していたらそういう発想にすらなりませんでした。

――ひとりでは気付かなかった面が引き出されるのはコライトの醍醐味?

 コライトって日本では普通ではないような感じなんですけど、海外だとけっこう普通というか。全部一人で作っちゃう人の方が少ないのかもしれません。逆に一人で作っちゃう方が凄いと思われるんです。クレジットに対する考え方はアメリカと日本とでは違うみたいなんです。編曲をしたら、その人が作曲のクレジットに入るという場合もあるくらい。日本は歌を大事にしているから、メロディと歌詞というところに重点が置かれると思うんです。アメリカではサウンドの一部分などあらゆる要素込みで「全部で曲だぜ!」という感じで。

――メロディ、ギターのリフ、ビート、それらを一つ考えた人も作曲者としてクレジットされる場合があるのですね。

 そういうことですね。それくらい曲の各要素が重要視されているのだと思います。その点は日本とアメリカの違いとして感じます。

――「Like I do」はラテンの要素を感じるナンバーですね。どういった想いが込められた歌詞でしょうか?

 MVで表現していることが歌詞とリンクしているんです。ガラスの箱の中で過去の自分の恋愛相手だったり、様々なダンサーさんが踊っていたり、光の効果を使ったりして僕の心を表しているんです。その隣りに僕がいて、あまり激しい動きをせずに自分を傍観しているという。そのコンセプトが歌詞そのものになっています。

――歌詞のインスピレーションはどこから湧きますか?

 自分が見たり聞いたり体験したもの、人と話しているときもそうです。「Like I do」では“move”という言葉が出てくるんですけど、この“move”はちょっとエロティックな方の意味なんです。“Like I do”は“自分がやったように”という感じの意味なんですけど、「あいつは自分みたいに動けないだろ?」みたいな、ちょっとエロい表現もあったりとか。そういう方面だけではなくて、「自分みたいに大切にできないだろ?」という風に捉えられたりもするんです。この歌詞は僕だけの力ではなく、クレジットされているみなさんのお力もあるんです。

――歌詞の内容について、「R.O.C.K.M.E. ft. Marty James」の<I want you to rock me>はどういう意味でしょう?

 「来いよ」という意味ですね。これは女の子に向けての歌詞なんです。流れとして、まず始めにクラブに入ったら目が合った女の子がいて、その子は凄過ぎて眩しくてクラっとくるんです。直接話しかけるのではなく、視線を送りつつやりとりをするんです。

――まだ互いにそこまで見えないアプローチ的な?

 そうです。それが向こうも気が付いてきて、「今日イケるかな? 駄目かな?」みたいなのがありつつ<I want you to rock me>と。「こっちから行くぜ!」という曲が多いので、こういうのも面白いんじゃないかなって思いまして。

――トロピカルな曲調のなかにも切なさを含んでいて、確かにその歌詞の内容が合いますね。

 そうですね。ちょっとドラマティックな展開も含んで、という。

――「falling down」の冒頭からピアノと歌というアレンジ部分で改めて気付いたのですが、川口さんの歌唱はどの音域でも声の太さが変わらないですね。

 声が細くならないようには気を付けていたと思います。声楽的なところというよりも、どう歌うかというのは気を付けています。真っすぐなのかビブラートなのか、下からしゃくるのは8分音符か16分音符で下ろすのかとか…。

――ボーカルが凄くリズミカルですよね。

 ノリに関わってくるのでそういう意味では歌い方には凄く気を付けています。まだリズム感が完璧というわけではないんですけど、ちゃんとノリが出るようにと。バラードでもちゃんとメリハリを付けて、そこを大事にすることによって言葉もしっかり入っていくようになるんじゃないかなと思うんです。

――歌唱の地力が際立っていると感じました。それもあって、アメリカのトップライナーの方々と親和性があるのではないかと。

 外国の方と歌ってセッションするときに、似た成分が多いなとは思いました。そんなに驚きもなくというか。もちろん体の大きな人は積んでいるエンジンが違うので「ドン!」と声が出るんです。もしかしたら、自分も少しそういう部分はあるのかなと思います。そんなに意識はしていないのですが。

――ミックスボイスを自然にやっているのかもしれませんね。ボイストレーナーの方に聞いた話なのですが、腹からではなく胸から声を出すなど、声の出し方も色々あるそうなんです。

 確かに胸が凄く響いていました。ミックスボイスで言うと、表の声と裏の声という概念を混ぜるという意識がないというか。表でも裏でもない声の出し方をすればミックスボイスって出るんじゃないかなと思うんです。ミックスボイスって、僕は解釈がちょっとわからなかったので、表と裏の声を同時に出すなんて無理というか。右向きながら左を向く、みたいな(笑)。

――なるほど(笑)。たぶん、無意識でやっているのかもしれませんね…。

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