LAMP IN TERREN「もっとすごい景色をみせていく」野音で見せた次フェーズへの意思
LAMP IN TERREN(撮影=浜野カズシ)
4人組ロックバンドのLAMP IN TERRENが7月28日、東京・日比谷野外大音楽堂でワンマンライブ『Moon Child』をおこなった。昨年、松本大(Gt.Vo)の声帯ポリープの切除手術の為バンドは活動休止。その復活のライブとなった『夏の野外ワンマンライブ「ARCH」』から約1年、再びこの野音に戻ってきた4人。ある意味昨年のリベンジとも言えるステージは、タイトル未定の新曲や先日配信リリースされた「ホワイトライクミー」などアンコール含め全18曲を熱演。そのライブの模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】
去年を超えなければいけない
「満足のできるライブではなかった――」小媒体のインタビューで松本が話した言葉。これが昨年初の野音でのライブで感じたことだったという。
昨日から関東に迫っていた台風6号による悪天候も予想されていたこの日、当日の朝は嘘のように晴れていた。蝉の声が盛大に鳴り響く中、開演時刻になり、川口大喜(Dr)が1人ステージに登場し、ダイナミックなドラムサウンドで我々を迎えた。そのドラムをSEに中原健仁(Ba)、大屋真太郎(Gt)、最後に松本がステージに登場し「Dreams」でライブの幕は開けた。まだ緊張感が残る序盤は、後半へのウォーミングアップともいえる雰囲気もあった。
「eve」では静かながらも内に秘めた熱いものを感じさせてくれる演奏と歌に、バンドの核を見せてくれるよう。松本の「緊張してますか」と自身にも言い聞かせるような言葉をオーディエンスに投げかける場面や、ライブを通して何度も「宜しくお願いします」と話す姿勢に、デビューしたてのような初々しさを感じさせてくれた。
この日最初のMCで松本は「去年を超えなければいけない、というところでめちゃくちゃ緊張しています。でも自由に楽しんでもらっていいです。俺らもわんぱく小僧になった気分で楽しんでやろうと思っています」と、昨年の公演のリベンジという複雑な思いもありながらも、このライブへの意気込みともいえる言葉から「ヨッシャーかかってこいや!」と「凡人ダグ」、盛り上がり必至の「innocence」でオーディエンスを煽情させた。
松本は軽く歪んだギターで「ラララ」でメロディを歌い始め「新しい曲やります」と、ぽつりと呟き始まったタイトル未定の新曲を披露。川口のリズムは絶妙なアンニュイさをサウンドに与え、ロック魂を感じさせるクールなリフもグッとオーディエンスの心を掴む。そこに乗る松本の鬼気迫る迫真な歌声は、悲痛な叫びにも聴こえる。
中盤戦はメロウなナンバーで構成。日没に向けてムーディーな空間を作り上げていく。まずは「イツカの日記」はゆらゆらと心地よいゆらぎを与えてくれる。野外で聴くこの曲はまた一味違った印象を与えてくれていた。
松本は「いい感じで涼しくなってきた」と日も落ち、ちょっぴり冷たい風が野音を通り過ぎていく。そこで届けられた「Water Lily」は大屋の流美なギターソロが楽曲を彩り、続いて松本は「ライブハウスっぽい感じでやりたいと思って組んだセットです。やっぱデカイね」と野音の大きさを改めて実感している様子。
「言いたいことは沢山あったはずなんだけど…言葉にならないと言うか...」と、言葉ではなく音で感じてほしい「いつもと同じ歌詞だったとしても、いつもと違う気持ちが届きますように」と奏でられた「pellucid」。その歌と演奏は野音の空に溶け込んでいくかのような一体感を感じさせた。蝉もその演奏に歓喜するかのような声を響かせていた――。
緊張感のあるピアノの旋律がクールな1曲「I aroused」。このあとのMCで明かされることになるが、この曲で松本の緊張感が解けたと明かしてくれた。演出も印象的で、月が浮かぶ宇宙空間に4人が浮かんでいるかのようなライティングで、より楽曲の世界観を盛り立てていた。
もっとすごい景色をみせていく
「New Clothes」でライブは後半戦へ。ここからよりオーディエンスとの一体感が高まっていく楽曲たちを演奏。「涙星群の夜」に始まり盛大なシンガロングが日比谷の夜空に響き渡った疾走感のある「オーバーフロー」、野音という広い会場だが心は近くに感じたいと願い演奏された、ライブでの定番曲「地球儀」と最高の流れでボルテージは最高潮。
松本「ここで聴くこの曲すごいよ――」
眩い光がステージを包み込んでいく。届けられたのは「BABY STEP」。小さな一歩がどんどん大きくなっていく、バンドの成長をこれからも感じさせてくれる1曲、彼らのアンセムになるのではないかと感じさせてくれた演奏だった。ありのまま姿を見せてくれたよう。
そして、このライブのタイトル『Moon Child』に繋がる1曲「月の子どもたち」。セットに描かれた月が存在感を放ち、星のような光が瞬くなか演奏。ほとんどの照明は消されメンバーの姿はハッキリとは見えず、ただただ音だけが響き渡る。それは昼間太陽に隠れている月のよう。その暗闇の中、4人から放たれるその音を、オーディエンスも静かに耳を傾け、メッセージを受け止める。
「自分は後悔の多い人生だと思う」と話す松本。「本当はみんなの背中を押すような言葉を話さないといけないのかもしれない。でも自分の人生からはそんな言葉はポンポンと出てくるわけではない...」と吐露。続けて「自分が大好きなものを沢山曲にしよう、このステージでは話していこうと思っていて、それが結果的に皆さんの背中を押せたらいいな、糧になれたら」と想いを綴った。
「音楽をやっている自分が大好きです――」
そう話した松本は「愛している、信頼している皆さんに届けていきたい曲が出来ました」と、この野音の公演のために制作された7月17日に配信された新曲「ホワイトライクミー」を披露。不思議なスケール感を感じさせてくれる。サビまでの長いタームはより爆発力を高めてくれる。何色にも染まらず、気負わずによりナチュラルな方向に向かっていることを示してくれているようだ。
アンコールで松本は「また(野音で)やりたい。もっとすごい景色をみせていくので」と意気込みから、「あっさりと曲にいった方が次に繋がるような気がする…」とラストは「緑閃光」を投下。次に繋がる光の欠片を歌と音に乗せて、情感を込めた演奏で2回目の野音のステージの幕は閉じた。
昨年とは臨む姿勢が違ったこのステージで演奏する彼らを観て、まだまだ彼らは真っ白なキャンバスなんだということを実感させてくれたようなパフォーマンスだった。バンドはまたここから全国ツアーへと旅立っていく。様々な光に照らさられて、その都度輝きを変えていく事が出来るLAMP IN TERRENのこれからに期待が膨らんだ。
セットリスト
『Moon Child』
7月28日@東京・日比谷野外大音楽堂
01.Dreams
02.eve
03.林檎の理
04.凡人ダグ
05.innocence
06.新曲
07.イツカの日記
08.Water Lily
09.pellucid
10.I aroused
11.New Clothes
12.涙星群の夜
13.オーバーフロー
14.地球儀
15.BABY STEP
16.月の子どもたち
17.ホワイトライクミー
ENCORE
EN1.緑閃光
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