自分自身を気づけた作品
――今回の役どころは、斎藤智之の高校時代。その斎藤は野球センスを持ちながらも努力せず挫折、高校を中退したという設定ですが、どのように演じようと思いましたか?
いつも以上に台本を読んだ気がします。セリフの意図を考えながらひたすら読んでいると、次第に役柄に愛着が出てきて、“ただの不貞腐れたヤツ”と見られないように演じようと思うようになりました。努力せずに不貞腐れてやめたんじゃなくて、実は努力していたとか。それが認められなくて、と。みんなとも仲良くやりたいだろうし、監督とも向き合いたかっただろうし、そういうところが見えればいいなと思いました。愛されるまではいかないけど、斎藤が少しでもお客さんに好きになってもらえる役になったらいいなと思い、作っていきました。
――その斎藤はのちに余命半年宣告を受けるという大きな壁に当たります。堀家さんが演じていた時代はまだそれが訪れる前で、なんか切ないですよね。
そうですよね。僕は、その壁にぶつかったときに周りの人からいかに愛されていたかを気づいてグッときました。この映画がクランクアップする時に僕は絶対に泣かないと思っていました。生徒が並んで名前を呼ばれたときに「ありがとうございました」と言うんですけど、その言葉を言った瞬間に大勢のスタッフさんが囲んで拍手してくれて、その時に僕はボロ泣きしました。斎藤じゃないけど、周りの方に支えられて挑めていたんだなと思えて。
壁にぶつかったことは彼の人生のなかではとても大きなことだけど、いかに多くの人が支えてくれたのかということに気づくという点はこの作品の良いところでもあると思います。反抗していたお母さんから「この子の好きなようにやらせてあげてください」と言われたり、監督からは「斎藤のために何かをしてあげたい」とも。妻が斎藤のために「助けてください」とか。ライバルでケンカして仲間に最期は向き合ってくれたり。そういう優しさが出ていると思います。
――「自分を変えたい」と思って臨んだこの作品、堀家さんにとってどんなものになりましたか?
こういう大きな役をやらせて頂いたことで、いかに自分ができていなかったのかを感じました。堤さんや柳楽さんの演技を見て痛感させられるんです。自分ができたと思っていたものが、堤さんと絡んでみると「僕、こんなにしょぼかったの…」と思い知らされて。自分がまだまだだなと気づける現場でした。演者さんだけじゃなくて、監督も助監督もスタッフさんもこだわって作っていて。それを見たら「自分はまだまだだな」と思えて。こういうことを経験したことで、今後より一層頑張らなきゃという思いが強くなりました。こういう作品に出会うためにも、良い作品を作るためにも努力は惜しまないと。
――ご自身でも役柄の背景とか台本を読み込んだりと手を抜かずにやってはいたけど、それを上回ることがあったということですね。
そうですね。そのときは100%をやっていたけど、終わった後にもっともっとできただろうなと思えて。
――だけどはっきりとした課題が見つかったのは大きいですね。
それは大きいですね。本当に成長させていただきました。

堀家一希





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