The Wisely Brothers「自分たちのジャンルを作りに」３人が向かう悲しみの先

マーカー・スターリングに送りたい１曲「テーブル」

和久利泉

――皆さんが今作で特に印象的だった曲はありますか。

渡辺朱音　「つばめ」です。アルバムが完成して、雨の日に傘もささずに坂道で今作を聴きながら歩いていたんですけど、その時に「つばめ」を聴いていたら、カッコいい曲に仕上がったなと改めて感じて。そのカッコよさを感じながら、坂道で息を切らしながらも登りきったので印象的なんです（笑）。

　歌詞が決まった時に、サビにある＜太陽 君のうしろ姿 ＞の「うしろ姿」ってあまり歌詞で使わないよねと話していたのも印象的でした。さっきの背中の話にも通じるところがあって、“うしろ姿”も何かを物語る部分なのかなと思います。

　あと、この曲のコーラスは柔らかく最初歌っていたんです。でも、いつも見ていてくれるスタッフさんからこの曲はカッコいいから、コーラスもいつも通りの感じではなく、声を張った感じのコーラスにした方が良いんじゃないかと提案して頂いて。

真舘晴子　私も最初コーラスを入れている時に何か違う感じがしていたんです。それで地声で歌ってもらったらしっくりときて。

和久利泉　イメージとしてはゴスペルのようなコーラスを考えていて、私たちにはそれは難しいなと思って諦めていたんですけど。

――コーラスは確かに印象的です。地声でやったのは初めて？

渡辺朱音　「はなればなれピーポーズ」のような、みんなで歌う箇所で地声はあったんですけど、ウーアー系のコーラスではやったことがなかったんです。意識的にやらないと勝手に裏声になっていってしまうんです。私は高音パートなので、地声で行く場合かなり声を張り上げないと出ないので、自分の殻から出る勇気のいる時間だったなと思います。

――晴子さんの印象的な曲は？

真舘晴子　完成して達成感があった曲は「テーブル」です。この曲は自分が明確に作ってみたいジャンルがあって、それは昨年来日していたカナダのシンガーソングライター、マーカー・スターリングという方なんですけど、その方の音楽性がめちゃくちゃ好きになって、私たちもこういう曲を作ってマーカーに送りたいと思ったんです。

　スリーピースの女の子バンドがR&Bテイストという組み合わせも面白いんじゃないかなと思いました。ダンスっぽくてオシャレな感じの曲を作ってみたかったんです。歌詞もいつもとは違う含みをもたせたくて、いつもとは違う歌詞になったと思ってます。この曲のMVも撮ったので、それをマーカーに送りたいなと思っています。

――MVといえば「気球」も先日公開されましたね。今回11曲もある中でこの曲がリードに選ばれたのは何故ですか。

和久利泉　選ぶのは大変でした。ガラッとイメージを変えたかったというのがありました。今までの私たちらしい曲もレベルアップしているので、それをリードとして聴いてもらうのも良かったんですけど、今までとは違う曲でどのような反応が得られるのか試してみたかったんです。挑戦でもあります。

真舘晴子　もともとこの曲は弾き語りで作っていて、その後に３人でバンドアレンジをして、ライブでもやっていたんですけど、もう一味というのがありました。それでDadaDのShigekuniさんにアレンジをお願いして、この曲の見え方が変わるアレンジをしていただきました。私たちがやったことがない曲調だったので驚いたんですけど、演奏がすごく楽しくて。リード曲として明るい曲を選びたかったので、大人から子どもまで楽しんでもらえたらなと思いました。

和久利泉　私たちの最初のアレンジはけっこう強めで、気球をイメージしていたというよりは、それを見ている誰かの気持ちを表す音の強さだなと思っていて、それも良かったんですけど、新しいアレンジになって沢山の気球が見えたんです。そういう表し方もあるんだなと新鮮でした。

――MVはSUMMER HOUSEさんのイラストを使用して皆さんと融合された作品になっていますが、皆さんからもリクエストなどされたんですか。

渡辺朱音　お任せで作って頂きました。

真舘晴子 制作会社さんは「メイプルカナダ」を作って頂いたときと同じ会社さんで、もう信頼していたので。

――撮影はグリーンバックを使用して？

渡辺朱音 はい。なので、スタッフさんから「緑の服だけは着てこないでね」と言われていたんですけど、晴子は緑の服を着てきちゃって（笑）。

真舘晴子 でも、ちょっとくすんだ緑だったのでギリギリセーフで（笑）。