歌っているときの本当の表情が出ているMV
――今回「M」(PRINCESS PRINCESS)と「また君に恋してる」(ビリー・バンバン)の2曲がミュージックビデオになっています。2つともかなりMay J.さんの歌っている顔に近寄った映像になっていて、すごく臨場感がありました。
同時録音する時に、やはり映像も同時が良くて。先に音を作って、後でその音源に合わせてやるというやり方もあるんですけど、それだと本当の表情ではないじゃないですか。本当の表情を見て欲しかったというか、その方が見てる人が、何か感じるものがあるんじゃないかなと思って。だからより近くなったんだと思います。
――歌っている姿をこんなに近くで見せてもらえる機会はそうそうないと思います。
自分でもすごく緊張します(笑)。実際に映像を見て、“こんなふうに歌っているんだ。すごくリアルだなあ”と思いました。歌に必死になっていたので、顔も全然作っていなくて。歌っている本人としては見づらいです(笑)。
――そうですよね。でも歌い手さんの覚悟を感じました。
見てくださる方には、何か伝わるものがきっとあるんじゃないかなと思います。私が見たくないものだからこそ(笑)。
――PRINCESS PRINCESSの「M」はMay J.さんが生まれた頃の曲ですね。
そうなんです。この曲は私は年齢的に通っていなくて、後からいろんな人がカバーをテレビなどで歌っているの聴いて、馴染んで来た曲でした。「M」はロック調の曲じゃないですか。私が歌っても違和感がないように、かなり考えて歌いましたね。
――え! この曲はストレートにMay J.さんに合っている、と感じたのですが…。
自分のスタイルには難しい曲でした。心の叫びを抑揚つけて歌うというか。私は結構計算して抑揚をつくるタイプなので。かなり考えながら歌いました。会っていると言っていただけてとても嬉しいです。
――「また君に恋してる」には、どのような思い出がありますか?
坂本冬美さんバージョンが出たときに私も聞いていました。当時、R&Bや洋楽を中心に聞いていたんですが、この曲は何度も聞いていましたね。マネージャーさんとかに「私、この曲大好き!」と言って歌っていました。この曲には日本の一歩引いた女性の控えめな感じ、控えめな美しさをすごく感じるんですよね。
――いろいろ要素が入り込んでいる曲ですが、どう歌っていこうと考えましたか。
その雰囲気を守りながらも、ストレートに歌う感じにしました。あとはジャズのテンポに合わせて。でも日本のその風景をしっかりと伝えて、言葉の大切さも守りながら。あと、歌う時には熟成されたというか、60代ぐらいの夫婦をイメージしていました。「また君に恋してる」だから子どもが生まれて、子どもが独立して夫婦だけの時間に戻ったときの“また恋してる気持ち”を想像してみたんです。
――恋がよみがえるというニュアンスですね。ラストは「糸」(中島みゆき)で締めくくられます。
やはりこの曲が最後だな、という雰囲気があったんですよね。最初アカペラで始まっていますし。最後はしっとりと、声だけで入って終わりたいなと思いました。
――「糸」の詞からは、どんなことを思い浮かべますか?
私は彼氏彼女とかそういう関係じゃない、もっと広く自分が関わっていく人たちとの愛を歌っている曲だなと思いましたね。イメージでいうとライブ会場でその日に出会った人たちのことを思いながら歌う感じ。今日という日にみんなと会えたこと。それは本当に奇跡のようなことだといつも思っています。
――弦の印象が強いアレンジですね。
これは新録ではないんですが、弦カルテットでやりたいと思い始めた頃の曲でしたね。
――今までもカバーアルバムを制作されてきて、その経験はたくさん蓄積されていると思うのですが、今回のカバーアルバムのレコーディングはMay J.さんにとってどんな経験だったと思いますか?
自分が得意なものと、新しくチェレンジした曲がありましたね。苦労した点もたくさん会って、色々な経験ができたと思います。自分がすごく好きな感じの曲とか、向いてるなと思う曲がはっきり分かることができたし、逆にこんな曲も歌えるんだ!と幅も広がったかなと思います。
――カラオケというカテゴリーでセレクトしたという影響も大きいかもしれませんね。
そうですね。いろいろな方の好きな曲がこうやって集まっているので。自分が歌うとは思わなかった曲も入っているし。いろいろ挑戦させてもらった中で、もちろん得たものもあったりました。例えばラップが苦手だから歌にするとか。そういう色々な工夫をしてきましたので、すごく勉強になりました。平成31年間の中で、それぞれの曲にきっと自分が聞いていた頃の自分の思い出とか、経験してきた恋愛だったりそれぞれのストーリーがきっとあると思うので。そんな過去を振り返りながら聞いていただきたいです。改めてその曲をカラオケで歌いに行ってくださったらいいな、と思います。
(おわり)