時空を超えた歌になった「愛が生まれた日」
――今井美樹さんの「PRIDE」はボサノバ風のアレンジで、こちらもとてもスタイリッシュですね。
原曲がゆったり心地良い雰囲気があるので、“ボサノバにすごく合うな”と想像できたんですよね。ただボサノバというと、語りかけるように歌うイメージがあって。でも、そう歌ってしまうと、この「PRIDE」の歌詞が届かなくなってしまうと思ったんです。今井美樹さんの純粋ではっきりとした歌い方がすごく大事だと思ったから、私もストレートに声を張って歌いました。ボサノバだからボソボソ歌いたくなっちゃうんですけど、そこをあえて抑えて、すごくはっきり歌おうと考えたんです。
――「PRIDE」は女性の決意表明のような歌詞ですし。
芯がすごく強い女性の気持ちなんですよね。だからあえて歌と楽器は、別というか。
――10曲目「愛が生まれた日」(藤谷美和子・大内義昭)は、これぞ昭和の香りが漂っている曲ですが、May J.さんはどんな曲だと思っていましたか?
実はドラマ(1994年日本テレビ系『そのうち結婚する君へ』)とかの背景もまったく知らずに最初は聴いたので、純粋にラブソングなのかなと思っていたんです。でも世間の方々はドロドロなイメージを持たれているので、「なるほど。だったらそういう背景で歌ったほうがいいのかな」と思って、想像しました。触れてはいけないみたいな、ちょっと闇を抱えているみたいな。
――デュエットの相手は、これまでも一緒に歌われたことがあるデーモン閣下さんですね。
デーモンさんは同じ地球にいない感じがして、惑星を超えた恋愛観がありました。デーモンさんという存在だからこそ、惑星を超えて、時空を超えて。ある意味遠距離みたいな感覚がありましたね。
――May J.さんとデーモンさんの組み合わせだと、ドロドロな恋愛とは違う感じもあります。
確かに。触れたことがなさそうな感じもしますね(笑)。
―-もう意識交換のレベルまで達しているような(笑)。
デーモンさんの非常に真面目な性格と粘り気のある歌い方が出ていて。ものすごく粘り気のある歌い方をされるんですけど、常に正確に音程を守られる。その両方ができるのがすごい! と思いながら聴いていました。
――12曲目の「Lovers Again」(EXILE)は、歌を引きたせるためにオケをそぎ落とすという作り方だったそうですね。
2000年代に当時に流行っていたR&Bアレンジの代表のような曲だと思います。だから新しい R&Bのアレンジで何かできないかなと思って、最終的にすごく音数の少ない今のR&Bになっていますね。
――この曲のリリース当時2007年はMay J.さんにとってどんな年でしたか?
デビューして1年くらいだったので、海外の曲をたくさん聴いていました。洋楽のR&Bをどう取り入れるか研究していた時期ですね。
――このアレンジで歌ってみていかがでしたか?
すごく難しかったです。ピアノの音数が少ないですしね。裏にちょっとビートがあるくらいなので。その隙間をどういう風に埋めればいいのだろうかと考えました。そして歌がすごくリズムのあるメロディになっているので。でもきっちり歌いすぎても、このピアノの気だるい感じの雰囲気に合わない。リズムを守りながらも声色はこの気だるさに合わせるみたいな感じで、すごく難しかったですね。