「悔しさをバネにして次に活かしたい」May J.が追求していることとは
INTERVIEW

May J.

「悔しさをバネにして次に活かしたい」May J.が追求していることとは


記者:村上順一

撮影:村上順一

掲載:22年11月17日

読了時間:約8分

 シンガーのMay J.が9日、シリーズ通して累計100万枚を突破したニューカバーアルバム「Bittersweet Song Covers」をリリース。前作から3年7ヶ月ぶりの第6弾作品となった同作はYouTubeチャンネル内で展開中の、スナックのママに扮したMay J.がカラオケで様々な名曲歌ってみた企画、題して“スナック橋本”が好評を博したことを受けて制作された。アルバムには「ロンリーチャップリン with クリス・ハート」や、EPOの「土曜の夜はパラダイス」など全12曲を収録した。インタビューでは、自身の中で新たな一面を出すことができた曲もあったという同作の制作背景を聞くとともに、May J.がいま追求していることなど話を聞いた。

一発録りの時しか出ない声がある

村上順一

May J.

――本作のきっかけともなったYouTubeの企画であるスナック橋本が展開されていますが、スナックのママをやるというのは面白いですね。

 最初は、「えっ!私がスナックのママ役をやるの?」という感じでした。そもそも私がスナックに行ったことはほとんどなかったので、その雰囲気を出せるのか、という不安もありましたが、意外と反響があったのでシリーズ化しています。今ではずっと続けていきたい企画になりました。

――この企画を行うにあたってスナックにも行かれたんですか。

 企画には関係のないだいぶ昔ですが、ツアー中に行きました。四国の土佐清水市のエンペラーというお店で、「フライディ・チャイナタウン」などを歌いました。

――「フライディ・チャイナタウン」はプライベートでも歌われている曲なんですね。

 この曲の出会いは2016年の岡村隆史さんの『ナインティナインのオールナイトニッポン歌謡祭』で、リクエストがあって、そこで初めて歌ったのですが、すごく良い曲だなと当時から思っていて、カラオケに行ったら絶対に歌う曲になって。

――訪れたそのスナックで、スナック橋本をやるにあたって何かヒントを得たり?

 お客さんから「『ハナミズキ』歌って」とかリクエストをいただいて歌ったり、すごく楽しかったのですが、特に得たものはなかったです(笑)。でも、改めて音楽を通して人と繋がれることを実感しました。

――スナック橋本で心掛けていることはあるのでしょうか。

 ママらしく振る舞うことですね。始めてから1年くらいになるんですけど、当時と比べるとママらしくなってきたんじゃないかなと思います。

――これからも楽しみにしています。さて、カバーアルバムも6作目、選曲も難しくないですか。

 今回は自分が通ってきていない年代の曲だったので、特に難しかったです。なので、シティポップに詳しい栗本(斉)さんにお聞きして、私が歌ったら良いのでは? と思う曲を選んでいただきました。

―― May J.さんが歌ってみて難しさを感じた曲は?

 今回、初めて歌った曲はどれも難しかったですね。「ウイスキーが、お好きでしょ」は、出だしで100%出しきらないと、良さが出ないんです。出だしの<ウイスキー>が全てと言ってもいいくらい。それは歌ってみてわかりました。

――石川さゆりさんのバージョンを参考にされていると思いますが、石川さんの歌はどう感じました?

 大人の女性、艶っぽい歌声です。あの声は出せないですよね。今の私が出せる声で歌唱させていただきました。

――ちなみにMay J.さんは、お酒はけっこう飲まれます?

 私、お酒はほとんど飲めなくて、飲んでも一杯くらいなんです。そんな私がこの曲を歌うのもアレなんですけど(笑)。

――カバーされる時は原曲をどのくらい聴き込まれるのでしょうか。

 沢山聴くんですけど、聴きすぎるとオリジナルに引っ張られて自分がなくなってしまうんです。なので、メロディを覚えるくらいの回数ですね。大体50回くらいで、メロディを覚えたと自分で感じたら敢えて聴かないようにしていて。

――レコーディングはどのように進めていったのでしょうか。

 この曲は、バンドと一緒に一発録りで行いました。一発録りはバンドのテンション感も変わりますし、ライブ感がありますよね。緊張感とワクワクがあったレコーディングでした。

――なぜ、一発録りをしようと?

 私、一発録りが好きなんです。なので、今回収録されている「異邦人」「初恋」「メロディー」もそうなんです。一発録りの魅力は「一発で決めるぞ!」という気合いも相まって、何回でも録り直せるという状況とは全然違います。私の場合、一発録りの時しか出ない声があって、それを楽しんでいます。

ビブラートを封印?

――「ロンリー・チャップリン」は、クリス・ハートさんとのデュエットですね。

 この曲との出会いは、18歳、19歳頃だったと記憶しています。『SOUL POWER』というイベントに出演させていただいた時に生で鈴木聖美さんと鈴木雅之さんがこの曲を歌っているのを観たのですが、もう音源とは全然違うアレンジ、フェイクを加えていたんですけど、そのスキルに衝撃を受けました。すごく楽しんで歌っているのが伝わってきて、私もこんな風に歌える大人になりたいと思いました。

 その中で一緒に歌うならクリスしかいないと思って。私がフェイクすることに対して合わせてくれる技術を持っているんです。キーも原曲より上げているんですけど、通常なら男性が高くなりすぎてしまいデュエットするのが難しいのですが、クリスはどんなキーでも歌えるというのも大きかったです。

――同曲のミュージック・ビデオも拝見させていただいたのですが、May J.さんの表情、クリスさんを見つめる目線も印象的でした。

 すごく楽しくて、いつもクリスを見るような目とは違いました。この曲は私の中でストーリーがあって、やりたいことをやって、自由に生きている男性を支えているような、「私はここで待っているからいつでも帰ってきていいのよ」、という懐の深い女性をイメージして歌っています。なので、そういう目でクリスを見ていたんですよ(笑)。

――そうだったんですね。そういえばクリスさん、最近は子育て奮闘中だとお聞きしましたが、撮影の時も仰ってました?

 いつも言ってますね(笑)。

――朝早くから起きて頑張っているみたいで。ちなみにMay J.さんは睡眠よく取られますか。

 私、寝ないと機嫌が悪くなるんです...。ハッピーな気分ではなくなってしまうので8時間は寝るようにしています。そうするとすごく幸せな気持ちでお仕事をすることができます。

――じゃあ今日もしっかり睡眠とられてますね!

 それが今日は深夜1時までボイトレをしてしまったので、8時間は寝れていないんです。スイッチが入ってしまって過去のボイトレをした録音を聴きながら、「これはこういうことだったんだ!」とか答え合わせをしていたら寝れなくなっちゃって。

――今だからわかることもあるんですね。

 そうなんです。今、振り返るとそういうことだったんだと気づきがあります。なので、睡眠時間は少なかったけど、色々わかったことがあったので、今日はハッピーです(笑)。

――本作を1枚作り上げる中でも発見や気づきはありました?

 歌い方なんですけど、「土曜の夜はパラダイス」は迷いました。私の癖として語尾にビブラートをかけることが多いんです。かっこよく決める、そういうルールが私の中にあって...。

――ルールなんですか。

 その方が自分っぽいというのがあるんです。でも、ビブラートがない方が成立するフレーズもあります。なので、オリジナルからは乙女な感じがして、その雰囲気を出したくてビブラートをほとんどしませんでした。今まではストレートに歌うことがなかなかできなかったので、自分の殻を破れた感じがして楽しかったです。

――新しい一面が聴ける曲ですね。MVも煌びやかでゴージャスですね。

 ワンカットで撮影したんですけど、すごく楽しかったです。カメラマンさんやダンサーさんは私よりも大変だったと思います。ダンサーさんは立ち位置など決まっていたのですが、私はある程度自由だったんです。

――でも、リハは大変ですよね?

 私はリハには参加していなくて、本番前に動きの説明を受けただけなので、撮影自体は数回で撮り終わりました。早く終わったので、他のMVも撮影できました。

――なぜ、リハなしということになったのでしょうか。

 私は段取りを覚えない方がいい。覚えたら面白くなくなってしまうとのことでした。おそらく新鮮味がなくなるということだと思います。

悔しさをバネにして次に活かしたい

村上順一

May J.

――「元気を出して」は、竹内まりやさんの雰囲気がすごく出ていますよね?

 まりやさんの歌い方を敢えてマネしてみました。好きだからというのもあるのですが、この曲の特徴はまりやさんの歌い方にあると思ったからなんです。この曲は2014年にレコーディングしたものなので、まだカバー慣れしていなくて、当時は曲から何かを吸収しようと思っている自分がいたと思います。

――過去にカバーしたこの曲を再収録したのはなぜですか。

 今回、8年前に歌ったこのカバーを収録したのも、いまシティポップが改めて注目されている中で、山下達郎さん、竹内まりやさん、EPOさんはファミリー感があるので、外せないなと思いました。

――ところで、May J.さんから見てシティポップというのはどんな風に聴こえていますか。僕なんかは割とノスタルジックな印象があります。

 世代ではないのですが、音を聴くと懐かしい感覚はあります。この時代のサウンド、歌詞の世界観がそれを感じさせるのかなと思います。その時代を反映していて、そこが特に好きなポイントです。

――特にそれを感じた歌詞は?

 沢山ありますけど、「フライディ・チャイナタウン」の歌詞は色々想像させてくれました。大人の夜の遊びと言いますか、当時の女性はこんなに大胆だったのかなとか。私はこの歌詞に出てくるようなことはしたことがないのですが、やれないことを歌で体験ができている気がして、それがまた楽しいです。

――最後に、いま追求されていることは?

 歌です。本当に奥が深いなと感じています。ライブをやるたびに、持っているものを全部出したいと思っているのですが、時には緊張が勝ってしまったり、思うようにできなかったこともありました。それもあって毎回ベストをどうやったら出せるのか、その方法を常に探しています。いろんな経験が自分の判断力を高めると思っていて、失敗したこともその悔しさをバネにして次に活かしたいという気持ちです。

――それがご自身の原動力にもなっているわけですね。

 そうなんです。人生、悔しいことがあった方が楽しいと思っていますから。

(おわり)

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