歌手の杜 このみが3月3日、東京・三越劇場で『このみの雛祭りコンサート』をおこなった。公開リハーサルもおこなわれ6日にリリースされる新曲「花は苦労の風に咲く」と民謡の「こきりこ節」を披露。本番ではアンコール含め全20曲を憂いのある声で歌い上げた。本番前におこなわれた囲み取材では「3月3日は杜このみのコンサートの日だと思ってもらえたら」と恒例行事への意気込みを語った。公開リハーサルと本番の模様を以下にレポートする。【取材・撮影=村上順一】

間違いない頑張ろうというスイッチが入ります

杜このみ

 昨年の公演が好評だったこともあり今回で2回目となる「雛祭りコンサート」。公開リハーサルに参加者には桃の花がプレゼントされた。女性津軽三味線日本一の奏者である土生みさおを筆頭に、邦楽レディースと呼ばれる和楽器隊の演奏をバックに「花は苦労の風に咲く」と自身のルーツである民謡から「こきりこ節」の2曲を披露。

 歌唱後におこなわれた囲み取材では、このコンサートについて聞かれると、杜は「3月3日、三越劇場 (午後)3時 杜この“み”で、ひな祭りと認識してもらいつつ、3月3日は杜このみのコンサートの日だと思ってもらえたら」と、恒例行事にしていきたいと意気込みを語った。

 明るくて元気な新曲「花は苦労の風に咲く」について、師匠の細川たかしの感想は「いい曲だな」と言ってもらえたという。新曲を出す度に毎回その言葉とのことだが、杜は「この定番の一言が自分の自信に繋がる、師匠が良い曲だと言ってくれたのだから間違いない、頑張ろうというスイッチが入ります」と話し、平成元年生まれの杜は「平成とともに過ごしてきた人生なので、(平成の)締めくくりを人生の応援歌で過ごすというのは、すごく光栄なことだなと感じています」と想いを述べた。

 今日の衣装について聞かれた杜は「今日はレンタルです」と周囲の笑いを誘い、「新曲が人生の応援歌なので、ハッピーになってもらえるような着物という、こだわりをもって借りてきました(笑)」と、今作「花は苦労の風に咲く」のテーマでもある応援歌にも繋がる衣装を選んだと話し、髪飾りは自前で昔ながらのシンプルさにこだわっていつも選択しているという。

 細川たかしと出演している自身初のCMについて「すごく光栄で師匠のおかげ様だなという気持ちでいっぱいです。いつもは振り袖でCMは制服姿なのでなかなか気づかれなくて、あの店員さんは誰ですか? と、皆さん疑問を持たれたみたいで、『あれは杜このみです!』と宣言したいな」と反響があったことを述べ、「さらに「いずれ私1人のCMも放送になったらいいな…」と密かな夢も語った。

 新曲のテーマにちなんで、「今応援したい人はいますか?」と聞かれると、少し悩んで「今はこのコンサートにのぞむ、必死な自分を応援したいなと思います」と笑顔で締めくくった。

初の早着替えにも挑戦

杜このみ

 開演時刻になり、邦楽レディースによる太鼓の音色が響き渡り、杜このみが赤い着物でひな壇に見立てたステージに登場。福岡の民謡「黒田節」でコンサートの幕は開け、公開リハーサルでも歌唱した日本最古の民謡「こきりこ節」と杜のルーツである民謡を叙情的な歌声で歌い上げた。

 MCでは「開演時間が遅れてしまいましてすみませんでした…」と謝る杜だが、「しっかり3分押しでございます」と“3推し”を強調し笑いを誘った。続いては民謡以外の楽曲を聴いてもらうとどういう反応をしてもらえるのか挑戦の一曲「蘇州夜曲」を披露。初投入となった箏(こと)、尺八、太鼓のアンサンブルに溶け込むような歌声で伝えていく。

 昨年と違うことをやってみたい色々考えながら選曲をしたと明かす杜。懐かしい気持ちで一緒に歌ってもらえるのではないかと、「日本の歌百選」にも選出されている名曲「浜辺の歌」、さらに躍動感溢れる粋な歌声を聴かせてくれた「鹿児島おはら節」では観客も手拍子で一緒に盛り上がり、赤い着物から初挑戦だという早着替えからデビュー曲の「三味線わたり鳥」とバラエティに富んだ選曲で魅了した。

 続いては3月6日にリリースされるシングルから「めぐり雨」を歌唱。しっとりと楽曲の世界観を見事に表現し、観客もその歌声に耳を傾けていた。前半戦の最後を飾ったのは同じくニューシングルから「花は苦労の風に咲く」。初めてこの曲を聴いた時の印象はなんて長いタイトルなんだろうと思ったと話す杜。母親に電話すると「それが印象に残っていいじゃない」というエピソードも明かし、人生の応援歌、自身への応援歌でもあるこの曲を、力強い歌声に乗せて届けた。

皆さまとの思い出が増えていくことが一番幸せを感じる瞬間

杜このみ

 15分間の休憩を挟み、ピンクのワンピースに衣装をチェンジした杜が1階の客席後方から登場。観客とスキンシップを取り、ステージまで「残んの月」を歌いながら移動し会場を湧かせた。「函館夜景」を歌い終え、函館での青函連絡船記念館摩周丸のおこなった暑かったステージでの思い出を振り返り「皆様が日焼けをしながら、『今日は最後まで楽しんでいくよ』と言ってくださったのが記憶に残っております。皆様との思い出が増えていくことが、演歌歌手になって良かったなと一番幸せを感じる瞬間ございます」と想いを綴った。

 衣装を早着替えし、清々しい水色のワンピースで届けたのは、レコード会社の方に勧められた一曲だという、ちあきなおみの「伝わりますか」をステージ初披露。演歌の世界に入り不安もあった杜は「『一緒に頑張ろうね』と言ってくださった皆さまにはなんと感謝を言ってよいのかわかりません。もうすぐ7年こうやって1年1年、大好きな皆さまと一緒に年月を積み重ねていけることは凄く幸せでございます。8年目、9年目、10年目、20年目、30年目、皆さま長生きして下さい」と、ユーモアを交えながらファンに感謝を告げ、香西かおりの「無言坂」を多彩な表現力を見せた一曲だった。

  ここで緊急告知として、10月7日に浅草公会堂でリサイタルを開催することを発表。そして、邦楽レディースによるダイナミックな演奏「Find It」から、黒い着物に着替えた杜が届けたのは「津軽じょんがら節」。三味線の演奏と絡み合い、その土地の情景が浮かび上がる生命力に満ちた歌声を聴かせてくれた。

 札幌で三姉妹で民謡を習っていた時に、三姉妹ということで先生から勧められた一曲で、「こんな曲もあるんだなと皆さんの発見に繋がったら」と思いを語り、色っぽさが際立つ民謡「松前三下り」を披露。続いて、自身のルーツである江差とリンクする「江差餅つき囃子」では、カゴを腕にぶら下げ、間奏で餅まきをおこなった。紅白の餅は、年末の紅白歌合戦への願掛け。

 本編のラストは盛り上がって終わりたいと「このみ音頭」を歌唱。観客も手拍子と威勢の良い掛け声をステージに向かって放ち、杜はステージを後にした。

杜このみ

 盛大なアンコールの声に応え再び白い着物に衣装をチェンジした杜が登場。石川さゆりの「天城越え」をステージ初披露。杜の1stアルバム『いろはにほへと』にも収録されていたが、師匠から「あまりにもまだ早い、色気がなさすぎる」と言われたためステージでの披露は封印していたという。「私も今年で三十路に入ります、平成最後ということもありこれを機に披露させていただきました」と「天城越え」のエピソードを語った。

 「いよいよ演歌歌手生活ラッキー7の7年目に突入しますが、初心忘るべからず前を向いて皆様とともに演歌界を進んでいけるよう一生懸命頑張っていきます」と、もう一度「花は苦労の風に咲く」を歌唱。元気を与えてくれる凛とした歌声を会場に響かせ「素晴らしい春を迎えて下さい」と言葉を残し『このみの雛祭りコンサート』の幕は閉じた。

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