4人組バンドのフレデリックが2月20日と21日、Zepp Tokyoでワンマンツアー『FREDERHYTHM TOUR 2019~飄々とイマジネーション』の東京公演をおこなった。ツアーは昨年からおこなっている『FREDERHYTHM TOUR 2018~飄々とインセプション~』に続いて、1月26日の北海道・Zepp Sapporoを皮切りに3月3日の沖縄・桜坂セントラルまで7都市10公演をおこなうというもの。20日にリリースされた最新作であり二作目のフルアルバム『フレデリズム2』からの楽曲も披露した。三原兄弟のバースデー当日となった20日『day1』の模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

相乗効果がフレデリズムを生む

三原健司(撮影=ハタサトシ)

 会場は隙間もないほどのオーディエンスで埋めつくされていた。ダンサブルな洋楽をBGMにこの日のステージへのイマジネーションは高まっていく。開演時刻になり暗転すると、「フレデリズムツアー始めます」のアナウンスから、徐々にビート感を高めていくSEをバックにドロップ幕にデザインされたツアータイトルを狙って客席正面からのレーザービームが照射され、あたかもデザインをネオン管かのごとく模して彩っていく。そして、三原康司(Ba.)、赤頭隆児(Gt.)、高橋武(Dr.)がステージに登場。その後にゆっくりと三原健司(Vo./Gt.)がステージに登場し、イントロでの隆児によるソリッドなカッティングが高揚感を煽る「シンセンス」でライブの幕は開けた。自信に満ちた圧倒的なパフォーマンスで、一気にオーディエンスの心を掴んでいった。

 バンドの進化は随所に感じさせた。3曲目に披露された「パラレルロール」の難解な“キメ”の精度を聴いただけでも、現在のバンドの状態が次のフェーズに突入したことを感じさせ、さらに幅広い音楽性を提示した「シンクロック」では、グルーヴのメリハリが心躍らせる。独特な世界観のイントロのフレーズがまさに“桃源郷”へいざなった「TOGENKYO」、懐かしいナンバーの「FUTURE ICE CREAM」は、一際エモーショナルな歌を響かせていたのが印象的だった。

三原康司(撮影=ハタサトシ)

 ここから昨年おこなったBPMを限定した異色のライブとなった『フレデリズムツアー特別公演-LIGHT LIVE ♩=120~140-』を彷彿とさせるセクションへ。「真っ赤なCAR」、「NEON PICNIC」とゆったりとしたBPMでアップチューンとはまた一味違ったグルーヴで楽しませる。そして、アルバムやカップリングの楽曲たちに光を当てるように、フレデリックの核を見せた「LIGHT」は、また別格な存在感を放っていた。暗転の中、最初の1音をきっかけにステージ後方の壁一面に突如銀盤が姿を現し、曲が進むにつれ増していく高揚感とともにミラーボールなど様々な光を受け7色に輝き放つ。その幻想的な空間は我々を楽園へと導いてくれるようだ。この銀盤の幕は無数のCD盤が規則的に配置されたもので、この楽曲だけで使用された演出。「LIGHT」はシングルとしては配信リリース限定だった背景を考えるとフレデリックのユニークさ、アイロニカルな側面を感じとれる演出だといえる。

 この日は三原兄弟の誕生日ということもあって、オーディエンスから「Happy Birthday」の歌がプレゼントされた。隆児と武も2人へお祝いのメッセージを送り、感動と笑顔が混じり合った和やかな空間。健司はそのメッセージを受け「メンバーに恵まれています。1人ひとりに言葉をもらえるだけでも嬉しいのに、それを2000人、3000人が祝ってくれる。その気持ちで後半戦も盛り上がってくれたら俺はもっと喜ぶ(笑)。そこから俺らがもっと頑張る、そして、みんなが楽しもうと思う、その相乗効果がフレデリズムを生む」と述べ、「リリリピート」でライブは後半戦へ。

 続いて披露されたのは、これでもかと浴びせるようなシンコペーションの嵐が、フレデリックの楽曲の中でも新鮮さを与えてくれた新曲の「エンドレスメーデー」、続いて、静と動を匠に操り、バンドの懐の深さを感じさせた「バジルの宴」は、サイケデリックで妖艶な空間を紡ぎ出し、ひとつのフックとなっていた。

Zepp Tokyoでの声は一生忘れません

 ライブはラストスパートへ。届けられたのは盛り上がり必至の「オドループ」だ。曲中で見せるオーディエンスのクラップも、年々シンクロ率が高まっていくのを感じさせるなか、健司は「誕生日、最高のライブにさせて下さい!」と投げかけ、サビではオーディエンスによるシンガロングが会場を包み込んだ。本編ラストはニューアルバムから「スキライズム」を投下。昔からのファンには懐かしさもあるアレンジに、今のフレデリックを投入した温故知新を感じさせる1曲だ。特に隆児のタッピング奏法を使用したギターソロはひとつのハイライトだった。

赤頭隆児(撮影=ハタサトシ)

 興奮冷めやらぬフロアからはアンコールを求める手拍子。再びメンバーがステージに。健司は「ロックスター、ポップスターと色んな1位を獲る人がいますが、僕らはフレデリックという国を作って好き勝手やっちゃおうと、コソコソ楽しんでいるうちにそれが広がって、気づいたら世間を巻き込んでいる、そんなバンドになりたくて『フレデリズム』、『フレデリズム2』というアルバムを作りました。昔を忘れずどんどん進化していくのがフレデリズムという国のひとつなのかな」とバンドのビジョンを話し、届けたのは新曲の「逃避行」。ロック的なアプローチとダンス・ミュージックの要素が絶妙に絡み合ったナンバーは、新しい世界への扉を開けてくれた。

 「僕らの想像を超えてやれているのが嬉しいです。これから1年間色んなライブハウスを回って来年2月24日、横浜アリーナで(関東に)帰ってきます。飄々とカッコ良くやっていく姿を目撃しに来て下さい」と、期待が高まる言葉を投げかけ、ラストは「飄々とエモーション」を投下。この日一番のオーディエンスによるシンガロングが盛大に響きわたった。その声に健司も感情の赴くままにロングトーンを放ち、それに応えるかのようにオーディエンスもさらに声を上げる。まさに、「相乗効果がフレデリズムを生む」ということを実感させてくれた瞬間だった。

高橋武(撮影=ハタサトシ)

 健司は「このZepp Tokyoでの声を一生忘れません」と、メッセージを残し『FREDERHYTHM TOUR 2019~飄々とイマジネーション ~day1』は、フロアから大きな拍手が響き渡るなか大団円を迎えた。4月13日には『フレデリズム2』のリリースを記念したワンマン公演『FREDERHYTHM TOUR 2019〜夜にロックを聴いてしまったら編〜』を新木場STUDIO COASTで開催、6月4日からはアルバムを引っさげた全国ツアー『FREDERHYTHM TOUR 2019~リリリピート編~』がスタートする。

 三原兄弟の誕生日、ニューアルバム『フレデリズム2』のリリース日と奇跡が重なったスペシャルな日。それもあって終始会場は愛で満ちていた。それに応えるバンドの演奏もいつもとは違った感情が滲み出ているようにも感じさせたパフォーマンス。次回ツアーのフラッグとなる横浜アリーナ公演に向け、どのような世界を魅せてくれるのか、2019年の活動に期待は高まるばかりだ。

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