松下奈緒「全て集約されている」主題歌の持つ力、優しさに触れたBEGINの歌

共演で得られる大きな経験、音楽は空気みたいなもの「ないと困る」

――主題歌として、BEGINさんが「君の歌はワルツ」を提供されていますが、今回松下さんもコーラスとピアノでご参加されて、すごく素敵な歌だと思いました。

　この映画の最後でエンドロールが上がってきたときに、この曲が流れてまた泣いちゃいます。映画で語っていたことが、すべてこの歌に集約されていると思います。エンディングで、言いたかったことをちゃんとまとめてくれたという印象を、最初に聴かせていただいたときに感じました。BEGINさんの歌声はすごくストレートでシンプルでありながらも、優しくて言葉がすごく心に刺さるな、と思いながらレコーディングをしていたんです。

　でも、レコーディングは一発本番でしたので、あっという間に終わってしまいまいました（笑）。だけどそれが映画を見終わったときにちゃんと感動するのは、曲の持っているパワーがあるからなのかと思いました。

――BEGINさんとの共演という意味ではいかがでしたでしょうか？

　今回はピアノは別のブースに入ってレコーディングしていたんです。BEGINさんはブースの外にいて、録音中はブースは閉め切りなので「OKです」と言われないと、BEGINさんのほうに近づけなくて（笑）。でもそのあとに曲のことや映画のことなど、いろいろお話をさせていただき、お３方の温かな人柄があるから、この曲ができたんだろうな、という感じがすごくしました。お話をしているとすごく穏やかな気持ちになるんです。実際にお会いできて本当にうれしかったです。

――昨年の末にBEGINさんが登壇する本作のイベントがありましたが、現場のエピソードとしてギターの島袋さんが「（ピアノの）上地が、“松下さんと目が合った”って、デレッデレになっていた」と話されて盛り上がっていました（笑）。

　そんなお話もされていましたね（笑）。上地さんはオルガンを弾いていらして、私はピアノ。鍵盤を弾いていたのが二人だったんですけど、“同じラインを弾いても面白くないから、松下さんはそのパートを弾いて”と、上地さんは唯一ピアノのブースに何回か来てくださって、鍵盤同士、いろいろお話をさせていただきました。

――これまでの音楽活動の中でも、他のアーティストの方と共演されていますよね？

　映画の主題歌でBEGINさんと初めてご一緒させていただいて、そのご縁で上地さんに曲を書ただき、今回リリースしたアルバムで歌わせていただきました。あとは古内東子さんや鈴木雅之さんも共演させていただきました。音楽面で先輩方と共演させていただくというのは、なかなかできないことなので、非常にテンションが上がります。

――そういう意味では、得られるものも大きいですね。

　そうですね。手取り足取り教えていただくわけではもちろんないですけど、音楽に対する感覚というものをそばで見られるだけでとても得るものがあります。今回の主題歌でも、歌詞の中で“あなた”と“きみ”という主語の表現に、ボーカルの比嘉さんがすごくこだわられていて、曲の解説などをいろいろと教えてくださったのでとても良い経験になりました。

――今回の共演も大きな刺激になりましたか？

　もちろんです。上地さんと共演できたのもすごくうれしかったです。ピアノ同士ですから（笑）。

――松下さんは音楽家という面もお持ちで、一方で女優としてもご活躍されています。それはどのようなモチベーションで両立されているのでしょうか？

　両立することを特に意識したことはありません（笑）。モチベーション的にはどちらのお仕事も同じです。そのときに必要だと思ったり、やりたいと思ったら音楽も女優もやります。そういった意味では、私って欲張りなんだな、と思うことが両方やれている秘訣なのかなと思うことはあります（笑）。不思議なもので自然とその場に行くと、今日は歌を歌うんだ、今日はピアノを弾くんだ、今日はお芝居をするんだ、という風に現場に順応することができるようになっているんですよね。それが使い分けないのかどうかわからないですけど、自分でも実感しています。

――松下さんにとって音楽とはどんなものでしょうか？

　そうですね…何か空気みたいなものではないかと。無いと困るんです。でもすごく求めるものでもなくて、普通にあるもの。自分がすごく必要とするときには頼るし、欲しいと思うし。

　無いと絶対ダメ。いつも頭のどこかでは鳴っていて、無くてはならないものですが、意識しあうものでもない、さりげなくいてくれ、そんな存在です。

（おわり）