松下奈緒「全て集約されている」主題歌の持つ力、優しさに触れたBEGINの歌
INTERVIEW

松下奈緒「全て集約されている」主題歌の持つ力、優しさに触れたBEGINの歌


記者:桂 伸也

撮影:

掲載:19年02月22日

読了時間:約8分

「人生経験の一つになる」役者という仕事を通じて得られるもの

――それは、この映画に出演したことでそう考えられるようになったのでしょうか?

 そうですね。多分この役を20代で演じていたら、親の死に関して現実味を感じなかったかもしれません。両親も年齢を重ねていく中で、どんな最期を迎えたいと思っているのか知っておきたいと思うようになりました。

――役を演じることはほかの人になることだったり、ほかの人生を経験することになるという意味で人生が広がっているというか…。

 だからこそ新しい考え方が生まれたり、芽生えたりします。“この人のように生きてみよう”というまでではないけど、でもやっぱり何かその役を通じて感じたこととかは今後自分が生きていく中での何かの肉付けにはなっているような感じはしています。そういった経験を積むほど、人生経験の一つになるんだと。その役で歩んだ経験も、人生経験につながっていくと思っています。

――それこそがやっぱり女優として歩いていくことの、醍醐味ですね。

だからこそ、そこに興味が湧いたり、役にのめりこむということがあるのかなと思います。役を好きになるということで、自分の人生が大きく変わったり、エッセンスをもらえたりします。そういう意味でやっぱり女優という仕事は、大変で難しい。違う人になるわけですから。でもそれを受け止めた上で、一緒に歩いていけると、すごくやりがいのある仕事だなとも思います。

――本作は実話で、松下さんが演じたのは結婚する前の恋人というヒロイン。ただし、物語のメインは主人公と母親という、主要キャラクターの中でも独特の立ち位置ですね。

 そうですね。「息子と母親」のお話ではありますが、その中で「サトシさんが決められないことを、私が言ってあげられる立場」なのかなと。

 今回はお母さんが第一ですし、お母さんがいないとこのお話は成立しない。そこにまつわる家族のお話に私も宮川家の一員として参加できたことがすごくうれしかったです。実際の宮川家も男しかいない家族なので、お母さんと真里さんの間では女性同士の考え方とか、女性同士の目線とか、サトシさんたちでは考えもつかないところでの会話なんかもあったんだろうと思います。

――真里さんという方は、よくできた女性というか、人間として立派な人ですよね(笑)

 本当にそうだと思います。実際にこんなことが言えたり、行動できるのかな、と考えたこともありました。

 実際に支えるということは、こういうことなんだな、と思うようになりましたね。何でもイエスと言うのではなくて、やっぱり勇気をもってダメなことはダメ、こうしたほうがいいとアドバイスを言ってあげたり、母を亡くすということはどういうことなのか、もしかしたらサトシさんよりも、しっかり受け止めていたのかもしれないです。そういう気持ちで演じたいと思いました。

――その意味では、共感する部分もたくさんありましたか?

 そうですね。真里はまだ恋人の段階からのスタートでした。いずれは結婚するんだろうなと思いながらも、お母さんや宮川家との距離感をどのくらいとればよいかなど、いろいろ考えました。サトシがいいと言ったらいいと思う、という部分はどこかにちゃんと残そうと思いつつ、でもたまにサトシのお尻を叩いていましたけど(笑)。やっぱり男の人って、お母さんが好きで、でもどうしていいかわからないという風になるんだな、と(笑)、今回演じてみてすごく思いました。

――難しかったシーンはありますか?

 サトシの気持ちはわかっていても、100%理解してあげられているのか、というジレンマはありました。それに、自分の愛する人の母親に対して、どういう励まし方をするのか、それについてはかなり考えました。

 だから“果たして真里だったらどうする?”というところに行きつくんですよね。ここで怒ったほうがいいのか?ここでこれを言ったほうがいいのか?それならばどんな言い方をすればいいのか?という点がやはり難しかったです。今回は人の死がかかわってくることでもありましたし。

 そんな中で、サトシさんをただ叱るわけじゃない、最大限の気持ちはわかる。だけど言わなければいけないという辛さもあったと思います。もう十分頑張ったというお母さんの気持ちもわかるし、もっと生きてほしいというサトシさんの気持ちもわかる。どっちの味方になればいいんだろうなと演じる上で悩むことはありました。

――すごく難しい立場でしょうね。

 そうですね。“あなたは他人なんだから”と言われればそこまでだし、もちろんそういうことはないですけど、どういう風にぶつかったらいいのか、というのは難しいところだと思っていました。

松下奈緒

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