竹達彩奈「本当に戦うべき相手は自分自身」人気声優が楽曲に込める想いとは
INTERVIEW

竹達彩奈「本当に戦うべき相手は自分自身」人気声優が楽曲に込める想いとは


記者:榑林史章

撮影:

掲載:19年02月10日

読了時間:約11分

 声優で歌手としても活動する竹達彩奈が6日、11枚目のシングル「Innocent Notes」をリリース。アニメ『けいおん!』の中野梓役をはじめ、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の高坂桐乃役など、数多くの人気アニメに出演し声優として活躍する一方で、2012年にシングル「Sinfonia! Sinfonia!!!」で歌手デビュー。アーティストとしても人気を得ている。最新シングル「Innocent Notes」は、放送中のTVアニメ『グリムノーツ The Animation』OP主題歌として話題の楽曲で、本人も「格好いい曲で歌うのが楽しみだった」と話す。また、カップリングにはつけ麺専門店「三田製麺所」とのタイアップソング「年中・愛は・無休」を収録。インタビューでは楽曲にまつわる話と、彼女が今愛を注いでいることについて話を聞いた。【取材=榑林史章】

主人公が葛藤する人間味のある童話が好き

「Innocent Notes」初回限定盤

――「Innocent Notes」は、すごく格好いい曲になりましたね。

 今までは自分で曲を選ばせていただいたり、歌詞のイメージなども自分から提案させていただいたのですが、今回はそれらすべてをプロデューサーさんやスタッフさんにお任せして作っていただきました。曲が全部できあがった状態で初めて聴いたときは、「すごく格好いい!」と思い、歌うのが楽しみになりました。

 ただ、格好いい曲はあまり歌い慣れていないこともあって難しかったです。力強さや格好良さを出すために普段よりキーが低めに調整されていたのですが、低いキーを歌うことに慣れていなくて、自分の歌として表現するのに少し時間がかかりました。

――全体に力強い曲ですが、Dメロで雰囲気が変わって。ここからは、主人公の心の揺らぎみたいなものが感じられました。

 私もDメロがすごく好きで、きっとこの曲の芯になる部分だと思いました。主人公の本音の部分と言うか、いちばん大事なコアな部分になるのではないかと思ったんです。レコーディングでも、葛藤や心の弱さ、不安定さみたいなものを表現したいと思って。ディレクターさんとディスカッションした上で、私の意見を受け入れていただいて、自由に表現させていただきました。

――「Innocent Notes」がOP主題歌になっているTVアニメ『グリムノーツ The Animation』はグリム童話がモチーフで、歌詞にも『シンデレラ』や『白雪姫』をイメージさせるワードがたくさん出てきます。お好きな童話はありますか?

 童話の『人魚姫』は、子どものころから大好きでした。人魚姫ってすごく人間らしいんですよね。純粋に人を好きになって、その想いを叶えるために魔女から足をもらう、それも自分の声と引き換えにして。そういう自己犠牲も厭わないひたむきさに惹かれました。人魚姫は歌うことも大好きだったから、声は彼女にとってのアイデンティティでもあったわけですが、それを失っても王子様に会いに行きたいと思う。やっとの思いで会いに行ったら、王子様にはすでに婚約者がいて…。王子様を殺すこともできず、人魚に戻ることもできず、最終的には泡になって消えてしまいます。最初は好きという純粋な気持ちから、人を愛するということを学ぶ成長物語です。人魚姫の葛藤や人間らしさを感じて、すごく好きなお話です。

――女の子が好きな『シンデレラ』や『白雪姫』には、憧れませんでしたか?

 う〜ん、あんまりです(笑)。『シンデレラ』は、アニメや絵本によって物語の展開がいろいろあるのですが…継母がシンデレラに嫉妬して、王子様が持ってきたガラスの靴を割ってしまうというパターンもあって。そのお話では、すかさずシンデレラが「もう片方持ってるわ!」と、サッと取り出して履いてみせるんですね。そこに女性としての逞しさやしたたかさを感じて、それは悪いことではないんですけど…その逞しさや強さがあれば、そもそも継母に虐げられることもなかったと思うんですよ。

――それだとお話が始まらないですから…

 そうですよね(笑)。ガラスの靴を落としたのもわざとで、すべて計算だったんじゃないかと、子どもながらに思ってしまって。『白雪姫』も、もちろん毒リンゴを食べさせた魔女が悪いんですけど、あれだけ生まれ持った美貌を持っていたら、そりゃあ魔女も嫉妬するよな~って、魔女の気持ちになって読んでいました。

――ずいぶんと大人の視点で読んでいたんですね。

 子どものころから、大人が読むようなマンガを好んで読んでいたので、視点がちょっとませていたのだと思います(笑)。

――映画『マレフィセント』など、悪役側の視点で描かれる作品も最近はあります。そういうほうが、お好きなんですね。

 『マレフィセント』は、根っからの悪ではない視点で描かれていたので、そこに人間味を感じましたね。魔女側の気持ちで作詞をさせていただいたことがあって。そのときに、魔女も好きで魔女に生まれたわけではなくて、本来なら魔女もヒロインになる可能性があったのでは? と思いました。それから魔女に対して、気持ちが増えた気がします。

――ミュージックビデオは、洋館を舞台に撮影しています。魔女ではないですが、大釜を持った死神が出てきますね。

 MVは、私からダークファンタジーの要素を入れたいとお話をして、作らせていただきました。運命に抗って戦う女性をイメージしたのですが、じゃあ何と戦うのか? 先ほどの魔女の話ではないですけど、それぞれの正義があって、生まれながらの悪はいないのかもしれないわけで、本当に戦うべき相手は自分自身なのではないか…。そこからヒントを得て、MVのストーリーができあがりました。最後まで観ていただけると、死神の謎も明らかになります。初回盤限定盤の特典DVDには、MVのフルバージョンとメイキングが収録されているので、それもぜひ観ていただきたいです。

――何か撮影中のエピソードはありますか?

 衣裳が薄かったので寒かったのと、郊外にある洋館をお借りして撮影をさせていただいたのですが、持ち主のおじいちゃまのお話では、ヨーロッパにあった古いお屋敷を買ってそのまま船で運んで移築したそうです。確かに日本ではない雰囲気があって、歴史を感じる建物で撮影させていただけたのは嬉しかったですね。内装の雰囲気なども楽しんでいただけると思います。

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