「メリー・ポピンズ リターンズ」試写、子ども心に光を当てる歌の魔法
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忘れていたものを気づかせてくれたような感覚だった。ウォルト・ディズニーの言葉にもある「誰もにある子どもの心」を――。
1日公開された『メリー・ポピンズ リターンズ』は、1964年の『メリー・ポピンズ』の続編。大恐慌時代のロンドンを舞台に、母を亡くし困難に直面したバンクス家が、魔法使いメリー・ポピンズの魔法によって希望を取り戻し、困難に立ち向かっていく姿を描く。
完全日本語吹替版で、メリーの声を担当したのは平原綾香。その平原はエンドソング「幸せのありか」も歌った。そして、マイケルの声は谷原章介が演じた。
君はどこへ、幸せのありか
『――リターンズ』はミュージカル要素がある作品とあって、音楽が様々な役割を担っている。キャラクターの感情やシーンの演出、そして、メッセージなどなどがある。
前作で少年だったマイケル・バンクスは、3人の子どもを持つ一家の大黒柱になった。そのマイケルは、愛する妻を亡くし、更に少年時代から過ごしてきた家を手放さなければならない状況になった。まさに失意のなかにある。
姉のジェーンの支えもあり、普段は毅然と振る舞いながらも、ふとしたときにほころび弱さを見せてしまう。その心情をうまく表現しているのが、屋根裏で歌う「君はどこへ」だ。
歌詞は、亡妻へ語り掛けるようなマイケルの苦悩が綴られている。その歌を、メロディにもなれない音楽とセリフの中間で歌い上げている。その歌声はなんとも悲しい。
楽しい時や嬉しい時にふと口ずさむように、音楽と感情は密接だ。ミュージカル音楽は特にキャラクターの心情を表現するのに大きな役割を果たしている。
感情の高まりが音楽となって現れるのであれば、屋根裏で歌われる「君はどこへ」からは、マイケルの悲しみのほどがうかがい知れる。
そして、エンドソングにもなっている「幸せのありか」。失ったと思っているものは、実は近くにあるのではないか? というヒントを出している。次男・ジョージーが、マイケルに希望の光を当てる言葉として劇中でも語っているので、その点も注目してほしい。
子ども心
歌の役割としてもう一つ。メッセージを届けている点だ。先の「幸せのありか」や、ジャックら街灯点灯夫が歌う「小さな火を灯せ」もそうだ。
そのメッセージは観る者に気づきを与え、そして人生に希望の光を当ててくれる。それに触れた瞬間、きっと心からこみ上げてくるものを感じるだろう。忘れていたものを刺激されるように。それが「子ども心」なのかもしれない。
さて、前作『メリー・ポピンズ』には、「チムチムチェリー」や「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」などといった名曲があった。
記者がこの作品を観たのは今から30年ぐらい前だが、この曲が流れた時に当時の記憶が鮮明に蘇えった。
本作『――リターンズ』で歌われている歌もきっと、今の子どもたちが大人になったときに、「子ども心」に帰られるアイテムになることだろう。
そう考えると、劇中で使われる歌そのものも、メリーの魔法なのかもしれない。
前作の繋がりなど見どころはたくさんあるが、まずは何も考えず、メリーに身を預けて観るのも一つかもしれない。【木村陽仁】
作品情報
『メリー・ポピンズ リターンズ』公開中
ウォルト・ディズニー・ジャパン
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【STORY】
ロンドンのバンクス家は、母を亡くした悲しみから抜け出せずにいた。そんな時、空から舞い降りたのは、魔法使いのメリー・ポピンズ。ちょっと“上から目線”のエレガントな彼女が、一風変わった方法でバンクス家の子供たちの“しつけ”を開始。バスタブの底を抜けて、海底探検に!絵画の世界に飛び込み、華麗なるミュージカル・ショーを!! でも──彼女の本当の魔法は、まだまだ始まったばかりだった…。