中島愛「人と人が顔を合わせて積み上げて作る温かみ」歌謡曲に感じる魅力
INTERVIEW

中島愛「人と人が顔を合わせて積み上げて作る温かみ」歌謡曲に感じる魅力


記者:榑林史章

撮影:

掲載:19年02月03日

読了時間:約14分

念願だったNegiccoとのコラボ

中島 愛

――次に、河合その子さんの「青いスタスィオン」。この曲は、後藤次利さんの作編曲ですね。

 後藤さんとその子さんにお会いすることが人生の目標です! と言えるくらい好きです(笑)。1万曲聴き返すまでもなく、これは絶対に入れたいと思っていました。

――河合その子さんは、どういうところがお好きなんですか?

 ルックスのかわいさもありますけど、歌も上手くて、声をいろいろと変えて歌われる方なんです。中学生の時に初めて聴いたのですが、歌い方ひとつでこんなにも雰囲気を変えることができるのか! と、本当に驚きました。そうしたその子さんの歌い方は、中島愛の歌を作る部分ですごく根っこになっていますし、当時は声優になる前でしたけど、今の声優という仕事にも活かされていると思います。なおかつ、その子さんは松田聖子さんのファンでもあって、線が繋がっているものを感じて、聖子さんとその子さんの曲は、絶対にいれようと思っていました。

――「スタスィオン」は「ステーション」のフランス語風の読み方らしいですね。動画を検索すると、当時の歌番組の演出で、駅のセットで歌っていると横に汽車が止まるというものがありました。

 あの時代はすごいですよね。原曲は、汽車のガタンゴトンという音をリズムで表現しているのが肝になっているので、そこは崩したくなかったので、tofubeatsさんにそこは残して欲しいとお願いしました。原曲ではパーカッションで鳴らしている部分が、tofubeatsさんのアレンジでシンセの音に差し替わっていて、これこそ骨組みは原曲と変わらず、音でtofubeatsさんらしさや、2019年らしさが出ていると思います。

――また、安田成美さんの1984年シングル「透明なオレンジ」は、相当レアな曲ですね。

 安田さんと言えば、細野晴臣さん作曲、松本隆さん作詞の「風の谷のナウシカ」が有名で、実は私もそれくらいしかちゃんと聴いたことがなかったんです。それが数年前に松本隆さんのインタビューで、安田成美さんの楽曲について語っているものを読んで興味が沸いて、聴いてみたいと思って探しました。だから、この曲を知ったのは、わりと最近なんです。

――2013年に、1stアルバムにシングル曲を加えた『安田成美コレクション』が出ていて、そこにも入っていました。

 それで聴いたんです。この曲は、船山基紀先生がアレンジした曲なのですが、安田さんの曲で船山先生の編曲ものは多くなくて、そのうちの1曲で個人的にいちばん好きだなと思ったのが「透明なオレンジ」でした。みなさんにもぜひ聴いてほしいと思って、自分のラジオ番組で流すなどしていて。

――今回は、フジファブリックの金澤ダイスケさんの編曲ですね。

 2年前に「サタデー・ナイト・クエスチョン」という曲で、フジファブリックのみなさんとレコーディングさせていただいたご縁もあって。当時のフェアライト・シンセサイザーのサウンドを、2019年版にしてくださるのは「金澤さんしかいないだろう!」と。

――今井美樹さんの「雨にキッスの花束を」は?

 この曲はアニメ『YAWARA!』の主題歌でもあったので、幅広い世代で愛されている曲だと思います。原曲ではシンセなのが生ピアノになっていて、よりAOR色が強くなっています。ポップな要素を抑えて、より大人っぽい雰囲気にしました。

 1990年にリリースされた今井美樹さんのアルバム『retour』の1曲で、父が今井さんの大ファンだったので、小さい頃から家でよく流れていたんです。『retour』には、他にも好きな曲がいっぱいありますけど、「歌いたい」という観点で「雨にキッスの花束を」を選びました。セリフも入っていて、「私もあのセリフを言いたいな」と思って。ぜひセリフも聴いてください!

――「無言のファルセット」は、CoCoの1992年のアルバム『Share』に収録された楽曲で、これもマニアックですね。

 CoCoを知っていらっしゃる方からは、「EQUALロマンス」でもなく「はんぶん不思議」でもないんだ! と、意外だという反応をされますね。CoCoのアルバムは高校生のころから集めていて、一人ひとり声質が違うので、とても聴き応えがあって、中でも自分の推しがこの曲です。

――原曲は、“羽田惠理香with CoCo”という名義の曲で、今回“with Negicco”と、表記もしっかり踏襲していて。

 CoCoさんが「with ○○」なのだから、ここはそれにならうべきでしょうと思って(笑)。追っかけコーラスのパートがあるので、Negiccoさんと一緒に歌いたいと思ってお声がけさせていただいて。わざわざ新潟から東京のスタジオに来ていただいて、全員のレコーディングも立ち会わせていただきました。

――Negiccoさんも15周年だそうで。

 私よりもずっと先輩です。個人的に大ファンで、昨年は朱鷺メッセで行われたライブに自分でチケットを買って観させていただいた程です。最初は単純に私がファンだったことに始まり、少しずつ交流させていただくようになって。2年前にはNegiccoさん主催の『NEGi FES2017』に出演させていただき、昨年はNegiccoさんのアルバム『MY COLOR』に収録の「硝子色の夏」という曲を作詞させていただきました。でも一緒にレコーディングしたことがなく、一度ご一緒したいと思っていたので、それが今回ついに叶いました。

――プロデューサーとして、何か指示を出したんですか?

 トークバックで「素晴らしいです!」としか言ってなかったです(笑)。それくらい、本当に素晴らしかったんです。歌割りとテイク選びをさせていただいたのですが、ありがたいことに本当にいいテイクがありすぎて、どれをOKテイクにするかですごく悩みました。

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