ロイ・ハーグローヴへの想い
――NYでは黒田卓也さんと合流しましたね。
卓也は8年くらい前、都内で何度かジャムセッションしたんです。そこで「いいなあ」と思ってたんですけど、やっと今回初めて共演することができました。彼は日常からすごいエンターテイナーで、関西弁でゲラゲラ笑っているのがそのまま音になったみたいな人。でもどこかすごいおしゃれなんですよね。うわーって騒いで笑っているんだけど、どこか知的で面白いんです。兵庫県芦屋市出身というのもあると思いますけど。多分彼が思っている以上に僕は彼を尊敬してると思います。彼が自分の楽器としてトランペットを選んでくれたことも感謝ですね。あんまりいませんよ、あそこまで自分のパーソナリティが楽器に出る人は。あの人が楽器を吹くだけで卓也の世界になりますからね。
レコーディングは卓也が集めてくれたバンドメンバーたちとも、にぎやかに楽しく録りました。DVDに収録される「“(They Long To Be) Close to You” cover by Yu Sakai」も「ワンループ(数個のコード進行の繰り返し)でできたら面白いよね」「元のシャッフル(ビート)じゃなくて、NYっぽい感じでできたらいいね」と話してから適当にやったテイクなんです。だから1回しかやってないんですよ。
――それから「Brooklyn Sky」は先日亡くなったロイ・ハーグローヴを意識されていたとか。
意識はしていないんですけど、たまたまそうなっちゃったんです。僕はディアンジェロとロイ・ハーグローヴが大好き。卓也も2人がすごい好きなんですよ。だからこうなっちゃったんです。結果的にはロイに捧げる曲みたいになりましたね。ライブは2回くらい観に行ったんですけど、直接会ったことはありませんでした。彼も腎臓(に病気)を患っていたんですよね。透析を続けていれば長生きできたはずなんです。でもライブが終わったあとも、世界の若手ミュージシャンとジャムセッションしたり、無理を続けて亡くなってしまったそうです。ミュージシャンは常に世界に触れる道を選んでしまうんじゃないですかね、やっぱり。ちょっと早すぎました。
――「You're Something」のミュージックビデオは手話が用いられていましたが、あの意図は?
あまり説明しないMVにしたかったんです。そこから監督さんとやりとしてできたのがあの映像なんです。手話じゃなきゃだめ、ということでもなくて。いつも歌詞を書きながら、言葉を超えたがっているところがあるんです。せっかくの音楽ですからね。言葉を超える事が僕の目標なので、そこにいつも挑んでいます。
――「桜の闇のシナトラ」は、ジョン・スコフィールドと共演もさることながら、リリックを日本歌謡曲の名作詞家である売野雅勇さんが担当していて驚きました。
僕は中谷美紀さんの「砂の果実」が大好きなんですよ。それで売野さんにお会いして打ち合わせしたんですけど、30分の予定が2時間くらい話してました(笑)。この仕事に関わることを本当に喜んでくれていましたね。ここまで4ビートの曲に歌詞を付けるのは初めてだそうです。「僕は仕事ではなく人生で音楽をやっています。仕事だとは思わず、そういう気持ちで書いてください」とお願いしたのですが、結果的にすごい曲ができて、満足してもらえた様でした。
ジョンスコには「NYに咲く日本の桜をイメージして演奏してください」とお願いしました。イメージがたくさんあると編集音楽になってしまうし、何もないと実験音楽になってしまうので、毎回1つくらいルールやイメージを課す様にしているんです。この曲に関してはNYと桜だったんですよ。






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