デビュー20周年を迎えたシンガーソングライターのaikoが12月9日に、大阪フェスティバルホールで全国ツアー『aiko Live Tour 「Love Like Pop vol.20」』のファイナル公演をおこない、ツアーの幕を閉じた。ツアーは6月6日にリリースされたアルバム『湿った夏の始まり』を引っさげ6月8日の神奈川・川崎市スポーツ・文化総合センターを皮切りにスタートし、自身過去最多となる全国27カ所45公演をおこなうというもの。(10月22日に行われた神戸公演が中止となり12月11日に振替公演を実施。)11月30日に東京・NHKホールで開催され、アンコール含め全24曲を熱演した東京公演の模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

皆さんに会えるのを楽しみにしてきました!

aiko(撮影=岡田貴之)

 11月も終わりを迎えるこの日、このツアーで8回目となるNHKホールには多くのファンが集っていた。間もなく開演を告げるアナウンスが流れると、開演を待ちわびるオーディエンスから手拍子が巻き起こり。aikoの登場を待ちわびた。開演時刻になると美しい映像と高揚感を煽るSEが心躍らせる。幕の向こう側にaikoのシルエットが浮かび上がる。そのシルエットでも彼女のアクティブさが伝わってくるなか、「ストロー」でライブの幕は開けた。彼女の凛とした歌声と軽快なビートに、オーディエンスもスタンディングで大きな盛り上がりをみせた。

 カラフルな衣装も相まって、エネルギッシュな歌とパフォーマンスで圧倒した「エナジー」、続いて、ブラス隊によるきらびやかなサウンドが彩った「あたしのせい」とアップチューンでライブならではの躍動感でホールを満たした。鮮やかにスカートを翻し回転するaikoの姿も印象的だった。

 「皆さんに会えるのを楽しみにしてきました!」とフランクなトークで沸かせ、このライブへの意気込みから、伸びやかな歌声とコンテンポラリーなサウンドの「くちびる」、オーディエンスも静かに耳を傾けた「二時頃」、目を閉じればそこに情景が浮かんでくるかのようだった「雨フラシ」と、aikoの表現力豊かな歌声を堪能。

 MCではオーディエンスと会話をしながら、アットホームな空間を作り上げる。そして、天井からピンクのレーザーが放射状に降り注いでいたのが印象的だった「瞳」。aikoは両手でしっかりとマイクを握り、しっとりと丁寧にメロディに言葉を乗せていく。現実を忘れさせてくれるような空間に酔いしれた。

 11月22日が誕生日だったaikoは、オーディエンスから「おめでとう」と祝福されると、aikoは誕生日当日は一人で過ごしていたことを明かした。10月22日におこなわれた神戸国際会館こくさいホールでのライブで声の不調で中止を余儀なくされたこともあり、静養しながらの誕生日だったという。そんな中、ファンからのSNSでのメッセージが嬉しかったと話した。

 ここからはより歌声が際立っていたaiko一人による弾き語りのコーナーへ。「恋人同士」と「ずっと近くに」の2曲をキーボードを使用してしっとりと歌い上げた。弾き語りならではの声と楽器の呼吸があった演奏は、フルバンドとは違った一体感を我々に与えてくれた。

 紅白歌合戦の話題から、今年リリースされたアルバム『湿った夏の始まり』のオープニングを飾る「格好いいな」は、ストリングスのサウンドがアクセントになり、後半戦の幕開けに相応しい楽曲。続いて、ウキウキさせてくれる「ドライブモード」では、センターステージで見せたaikoの軽快なステップに魅了され、「ライブの恥はかきすて、嫌なことはおいて帰ってや!」と投げかけ「未来を拾いに」、「恋の涙」とポップチューンで、会場のテンションもさらにアップ。

みんなと楽しく過ごすことが自分にとって生きがい

aiko(撮影=岡田貴之)

 銀テープが宙を舞うなか始まったのは「夢見る隙間」。ビッグバンドのようなゴージャスなサウンドとaikoの活き活きとした歌声がホールを包み込んだ。aikoは「次で最後の曲です。後悔しないように」と投げかけ、本編ラストは「ハナガサイタ」を披露。歌いながらオーディエンスの側まで訪れ握手、ステージを動き回りながらコミュニケーション。aikoらしさを出したパフォーマンスはステージと客席の距離感をゼロにしてくれる。

 深海のように青く染まるステージアンコールに応え、再びステージにサポートメンバーとaikoが登場。どこか懐かしい雰囲気を持つ「うん。」は、aikoの突き抜けるようファルセットが圧巻のナンバーでアンコールをスタート。

 MCでは今の心境を語った。

 「ステージに立てるのが本当に嬉しいし、歌えるのが楽しいです。暗い話として捉えてほしくないんだけど、いつかは歌えなくなる日がくるかもしれないと思うことがあります。でも、こうやってライブで歌っていると、たまらなく気持ちがいいんです。こんなに幸せなことはないです。歌えなくなったらと考えるとすごく怖いけど、そんな日が一日でも先になるように、一生懸命頑張って、みんなと楽しく過ごすことが自分にとって生きがいだなと」思いを告げる。

 更に続けて「(歌うことを)長く続けたいし、みんなもこのライブに来てくれたことが明日、明後日、一週間、二週間後に楽しかったなと、ひとつの思い出として残ってもらえたらと思うし、次のライブに向けて些細なことが楽しく進んでくれたらいいなと思います。私はみんなからその気持ちをもらっています。だから私もみんなに楽しい気持ちを伝えていけるように頑張ります」と決意とも言える言葉を述べ、「向かい合わせ」、「milk」と2曲を披露した。ステージ前方にサポートメンバーも集合し、ラインナップで終了かと思いきや、冷めやらぬ会場の熱にダブルアンコールに突入。

 「あたしの向こう」、「相合傘」、「be master of life」とaikoの全身全霊のパフォーマンスにオーディエンスもボルテージは最高潮。ここで全てが終わっても良いと言うくらいの渾身の歌唱、スクリーンに映るaikoは恍惚の表情でまさにクライマックスといった盛り上がりを見せ東京公演は大団円を迎えた。aikoがステージを去ったあとは、その熱をクールダウンさせるかのようにスクリーンにはエンドロールかのようにセットリストなどが流れ、ライブの余韻に浸った。最後まで全力疾走。終始温もりに溢れたステージの幕は閉じた。

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