卒業後に目指した姿を実感した新作
――映画『青の帰り道』の公開が徐々に近づいてきています。いろいろな出来事があり一度は撮影も頓挫、でも撮影は再開され…長かったですね。完成してホッと一息、という感じですか?
本当に長かったです。ただ一息つけるかというと、公開されるまでは気が抜けないというか…ドイツの映画祭で上映させていただいたりもしましたけど、ちゃんと公開初日を迎えるまでは、何かまだ達成感というものがしっかり得られないのでは、という気分ですかね。
――この映画のオファーを受け、ストーリーを見られたときにはどのような印象を受けましたか?
そのときは、私が主役というお話をいただけたし、すごく嬉しくて、ありがたい気持ちだったのを覚えています。でも脚本のストーリーを読んだら“あれ?”という印象になり…。
――どのような印象だったのでしょうか?
例えばパンフレットやポスターにある、すごくキラキラした青春の雰囲気でストーリーは始まるけど、話が展開していくうちに、本来はあまり見ることのできない人間の感情や、境遇というものが、登場人物の7人それぞれに披露されるんです。だからポスタービジュアルなんかのイメージだけでストーリーを想像したら、騙されるな、と(笑)
――確かに綺麗ごとでは済まない、痛々しい表情もありますね。その一方で、劇中では真野さんが泥酔している演技が見られるところもありましたが、すごくレアだな、と(笑)
(笑)。でも逆に私は、そんな演技をやりたいと思っていました。もちろん昔は少女マンガ原作のヒロインとか、キラキラして恋をするというイメージなんかにも憧れていたけど、だんだんお芝居をやっていくうちに、例えば私は園子温監督の作品が好きだということもあって、いいところ、綺麗なところよりむしろ人間の奥深くに眠っている、普段は見せることのない感情を出す作品のほうが、いい意味でみんなの心をかき乱すようで楽しいと思いまして。
――役者を務めることの醍醐味ですね。
例えば“楽しい”“嬉しい”“ハッピー”という気持ちは、他で伝えることができるので、逆にこういう作品を通して“ダークな面”や“挫折”といったものを届けたいと思ったんです。もちろんこれまでも目標を掲げてやってきて、いっぱい夢も叶えてきたけど、一番自分がやりたかった表現、お芝居の表現の仕方みたいなものが、この作品では出せたと思います。
――真野さんはかつてハロー!プロジェクトの一員としてデビューされましたが、その頃よりもともと将来的には演じる方向、女優の道に進みたいと思われていたのでしょうか?
いえ、最初はお芝居をしたいとは全然思わなかったです。ハロー!プロジェクトに入ったのも、モーニング娘。が大好き、松浦亜弥さんが大好きと小学生の頃に思って、もう“芸能界はハロプロしかない!”というくらいの勢いだったから(笑)。役者になりたいと思ったのは、本当に途中からでした。
――ではそこから卒業という時点では役者一本で、と? 例えばアイドル時代にやられた歌なども、並行して続けるという選択肢もあったかと…。
その頃にはお芝居の世界を、本格的に歩みたいなと本当に思っていました。好きだったアイドルに自分がなれて、そこで新たにチャンスをもらえて、お芝居を経験してその道に進みたいと思ったときに、物理的にどちらも一緒にできない状況に直面して。
アイドルや役者を一本で頑張っている方々は、やっぱり時間の使い方や覚悟も違う。だからここでアイドルは卒業しよう、と。周りからは結構止められましたね。“何を言い出すんだ!?”って。事務所もそんな感じでした。でも“いや、私は飛び出します!”って。
――ご自身に対する厳しさが感じられますね。
決してみんなアイドル時代を否定して嫌いになったから次に行くとか、それが足かせになってしまうという思いは全くありません。そもそも私がアイドルとして活動した期間は短くて、デビューして5年もいなかったくらい。でもその中で「アイドルはいつまでもアイドルであって欲しい」という心理は、自分としては本当にわかっているつもりでした。もともと私もアイドルが好きで、例えば後藤真希さんの卒業は本当に寂しかった、という感情も経験したことがあるので、みんなに寂しさを与えてしまうだろうな、とも思ったし。