未来の自分に残し伝えていきたい、暁月凛 負の感情も音楽に昇華
INTERVIEW

未来の自分に残し伝えていきたい、暁月凛 負の感情も音楽に昇華


記者:長澤智典

撮影:

掲載:18年08月16日

読了時間:約11分

負の感情こそが一番刺激的な世界

暁月凛(撮影=片山拓)

――凜さんは、「夜のとばりの中で」で作詞も手がけていますね。

 「夜のとばりの中で」は、わたしが大好きな『文学少女』(作家・野村美月氏による日本のライトノベルシリーズ)にインスパイアを受けて、作中に登場するキャラクターたちをモチーフに書き上げた歌詞です。『文学少女』を読んだのは、わたしがまだ中学生だった頃で、この本を読んだときに「こんな素晴らしいライトノベルがあるんだ」とカルチャーショックを受けました。それくらい、わたしにとって印象深い小説なんです。

――どの辺りに惹かれたのですか。

 登場する2人のキャラクターの関係性にわたしは惹かれました。2人はまだ中学生で、出逢ったのが小学生の頃。その時期からの2人の成長していく過程が物語の軸になっています。その成長していく過程の中でも、それぞれ心に迷いが生じたり、和解できたり…。きっと現実世界では、人と人との関係性ってここまで上手くはいかないかもしれません。むしろ、夢を描いた世界だからこそ、こういう結末に至る2人の関係性にわたしは憧れを抱きました。そんな2人をモチーフにした歌なので、聴いた人たちも自由に想いや想像を膨らませて下さい。

――凜さん自身、負の感情に惹かれていく傾向がありますよね。

 わたし自身が“中二病”だからなんですかね。わたしは負の感情が大好きで、よく大人にそういう感情の話をするたびに、「そんなことで悩んでてもしょうがない」「そんなことで悩むなら解決する術を考えなさい」とよく言われていました。大人はそうやって合理的に物事を考えがちですが、わたしは負の感情に寄り添うことも精神世界を司る一つだと考えているし、負の感情に蓋をして正の感情だけを求めてしまったら、余計に負の感情が大きくなるんじゃないかとも思っています。

 今でこそ、負の感情はあまり現実世界に持ち込まないようにと心がけるようになりましたが、以前は、その痛みに心地よさを覚えたりなど、負の感情に憧れを抱いていました。それは、自分だけが負の感情に浸る分には誰も傷つかないし、そこに妙に安らぎを覚えたことも大きかったんだと思います。何より、創作する上で負の感情こそが一番刺激的な世界でした。

――凜さんの歌にも描かれていますが、多くのアニソンの場合、負の感情を認めたり、そこと葛藤しながらも、しっかり前や未来を見据えていく内容が多いですよね。

 アニソンのどこが好きって、負の感情にもしっかり向き合っていくところです。中には、負の感情を否定して「わたしは悲しくないよ」と、全てをポジティブに捉えていける心の強い方もいらっしゃると思います。でも、わたしはメンタルの弱い人です(笑)。わたしと同じように負の感情と直面することで自分を見据えていける人もいて、だからわたしはアニソンが好きなんです。実際にわたしが歌ってきたアニソンの歌詞にも、負の感情を描きつつも、その中から勇気を見出していく内容も多かったりします。

――アルバムの後半には、「Let Me Freak」や「in the night」のような激しい曲も収録しています、こちらも聞いていて新鮮でした。

 「Let Me Freak」のようなリズムのはっきりしている楽曲、いわゆる激しい“バトル系”の場面が似合う曲って大好きなんです。この手の曲って、みなさんライブでも“ヲタ芸”をしやすいのかなと思います。

――確かに、ライブ向きな楽曲ですよね。

 わたし、ヲタ芸をやっている方々を観ると、すごく心が落ち着きます。わたし自身は、あそこまで激しく動けないので観てるだけなんですけど。あの姿を観ていると、本当にライブを楽しんでるんだなという気持ちが伝わってきて大好きなんです。それに、あの運動量。あれは健康にも良いですし、絶対に痩せますよね。ぜひ、みなさんにヲタ芸はお勧めしたいです。

――Bonus Trackとして収録した「朧月」はカバー曲になるんですね。

 「朧月」は、わたしが中学生の頃に流行っていた楽曲でした。あの当時のわたしは「悲恋」や「片想い」という感情に憧れていました。中でも「悲恋」には、経験したこともないのに不思議と憧れを抱いてたんですね。まわりの子たちが恋愛話をしている中、わたしは「恋愛をするなんてぜんぜん格好良くない、悲恋なほうが格好いい」と勝手に思っていました。そんな時期に出逢ったのが、孤独な気持ちを歌にした「朧月」なんです。

 わたし、当時から「なんでこんなにも神曲なのに、誰もカバーしないんだろう」と思っていたんですけど。オケ自体が出回っていなかったから、誰もカバーしていなかったんですよね。だからこそ、今回わたしが歌うことをきっかけに、もっといろんな人たちに「朧月」のことを知って欲しくてカバーをしました。まさに、念願のカバー曲になりました。

――「悲恋」に憧れる、いわゆる悲劇のヒロインに憧れる時期ってありますよね。

 そうなんですよね。今でも、物語としては悲劇が好きなんですけど。ただ、現実世界に目を向けたら、そこは悲劇よりも幸せの方がいいなと思います。

 よくアニメの世界では、みんないろんな運命と戦いながら。それでも、時には運命に逆らえず、大きな悲劇をもたらしてしまう物語の展開もあるんですけど。それは、物語の世界だからこそ憧れを持って観れることであって、それを現実世界に置き換えたら、そんな悲しいことはないです。今でも悲劇を描いた物語を観て、そこに美しさを覚えることはありますけど。でも、現実世界ではハッピーエンドの方がわたしは好きです。わたしの歌を通して、少しでもみなさんを幸せに出来たらなとも思います。

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