作曲家・芹澤廣明「売れる歌を作りたい」名曲を生み出す心構え
INTERVIEW

芹澤廣明

「売れる歌を作りたい」名曲を生み出す心構え


記者:村上順一

撮影:

掲載:18年07月27日

読了時間:約13分

テンポ128をどう極めるか

芹澤廣明(撮影=片山拓)

――自身で歌われている「Light It Up!」についてですが、この楽曲はどのような経緯で生まれた楽曲なのでしょうか。

 これはメロディと音が先だから、アメリカのプロデューサーがこれを選んでくれて。そこから詞も頼んでくれて、何回か音が出来たんだけど、紆余曲折あって僕が歌うことになったんです。

――違う方が歌うことになる可能性もあったのですね。芹澤さんもずっと歌ってこられていますよね。

 でも自分が歌手としてアメリカでデビューするなんて夢にも思っていないよ。本当にこれはびっくりした。その前にも違うレコード会社が「出さないか?」と言ってくれていたこともあって、意外に評価があったのかなと。今回は自分が歌った楽曲を聴いて「そのまま出させてほしい」と言ってくれてね。

――それはデモだったのでしょうか?

 そう。デモのまま。

――ダンスミュージックですが、このジャンルに興味を持たれていたのでしょうか?

 こういうのが最近は一番好きなんだよね。けっこういい加減でいいかなと(笑)。これもやっぱりパターンというのがあって、EDMでもハウスでもいいんだけど、要するに電子楽器が鳴ってなきゃいけないんだけど、それにもパターンがあります。そのパターンさえわかっていれば、それをどうするかという組み合わせの問題だから。結局似ているんだよね。歌謡曲も何でもそうだけど、Aメロ、Bメロ…ダンスミュージックってほとんどAメロしかないのよ。A、B、Cって進んで行くダンスミュージックってあまりない。

――Aメロ、Bメロ、Cメロというのは日本の歌謡曲の流れですよね。

 そうそう。ダンスミュージックのそのあたりがわかるのに5年くらいかかったかな。テンポも128くらいがいいとか、速くても130ちょいとか。

――やはりそのあたりなんですね。トランスなどでは140とかもありますけど。

 そこはまた市場が変わってしまうんです。一番大きなマーケットは128なんですよ。そこをおさえていないと王道は行けない訳です。テンポ128をどう極めるかというのが重要。その根拠の一つとして自称ダンスミュージックの王様、ジョージー・ポーギーという人がアメリカにいるんだけど、その人と一緒に曲を書いたときにテンポが128だったの。最初はよくわからなかったんだけど、テンポを指定してきてさ。そういうのがあるんだなと思ってそこから追求し始めました。

――128、これが基本なんですね。さて、全米デビューもされましたが、これからの展望は?

 次はエレクトロダンスミュージックでデビューしたいと思う。このカテゴリーでやりたいなと。

――70代はエレクトロな感じで?

 バラードを歌おうとか、そういう気は全然ない(笑)。

――またアニソンを作るということはない?

 それはわからないけど、このジャンルでやりたいのは何でかというと一日に70万人とか80万人集まる、昔で言うとウッドストック・フェスティバルみたいな野外のDJフェスティバルでかかるような音楽を作りたいと。それが市場は大きいからね。マーケットは重要ですよ。やっぱり何十万人の人が一カ所に集まるんだからそういう所で歌われる音楽を作った方が面白いじゃない。自分のやったことが何十万人に一日で影響されるって凄いじゃない?

――とんでもないエネルギーですよね。

 それに応えられる音楽を作りたいというのが次のテーマかな。僕は売れないと嫌なの(笑)。何故売れないと駄目かというと、認めてもらえないということだから。自分だけで「これはいい曲だ」ってやっててもしょうがないじゃない? 人が聴いて楽しいとか面白いとか言ってくれるものを作るのがプロとして当然の生き方じゃないかな。売れないというのはある意味つまらないということだし。

 もう10年このジャンルでやっているんだけど、何で売れないのかなと考えていて。過去にも『HomeGrownHits』というサイトのダンスミュージック部門で1位とか2位になったことはあるんだよ。だけどそれはちょっとマイナーなところでなんだよね。もうちょっと大きいところで1位とか2位になってみたいし、達成感を得たいんだよね。

――例えばエレクトロダンスミュージックでグラミー賞などを獲れたら…?

 それは言えないな…恥ずかしいじゃん。でもそこまでは……考えているな(笑)。頑張らないとね。まあ、生きているうちは売れる歌を作りたいということだよ。

(おわり)

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