4月27日に26歳の誕生日を迎えた瀬川あやか。誕生日当日に、彼女は舞台の上に立っていた。3月に発売した2ndアルバム『センチメンタル』を手に、瀬川は、4月に全国ツアー『瀬川あやか“センチメンタル” LIVE TOUR 2018~melting music in the mouth~」をスタート。その千秋楽の地を、自らの誕生日に重ねあわせてきた。東京・白金高輪SELENE b2でおこなわれたワンマン公演の模様を以下にレポートする。【取材=長澤智典】

ライターの所感

 なんて、客席から突っ込みの多いライブだ(笑)。その関係を瀬川あやか本人はもちろん、会場中の人たちが微笑ましく楽しんでいる。おかげでMCが長くなる? いやいや、それ問題ないでしょ。だっで、本当に楽しいんだもの。その微笑ましいやり取りって、どこか懐かしいなあと感じていた。

 その懐かしさって何だろうと考えていたら、思い出したよ。これって、クラスの人気者な女の子に、男どもが強い好感を持って突っ込んでいく関係性と同じなんだよな。本当は好きだけど、その気持ちを心に隠し持ちながら、照れ隠し変わりに、憧れの女性に突っ込んではその反応を楽しんでいく。

 彼女も彼女で、天真爛漫でちょっとドジっ子な面もあるせいか、良い意味で脇が甘く、つい突っ込みを入れたくなる親しみやすさを持っている。けっして高嶺の花ではなく、とても親しみやすい憧れ感を持っている。きっと瀬川あやかも、そういう女性なのだろう(自分は一度も会ったことがなければ、しゃべったこともないので想像で書いている)。そんな庶民のマドンナとマドンナに憧れる仲間たちとの集いに触れている間、ずっと笑顔で過ごしていた。瀬川あやかと彼ら彼女たちの関係性に憧れを抱きながら、その空気の中に包まれていれることへ幸せを覚えていた。

歌を通し会場中の人たちの心を握ってきた

瀬川あやか

瀬川あやか

 ライブは、2ndアルバム『センチメンタル』と同じように「マスカット」から幕を開けた。マイクスタンドを握りしめ、少しずつ気持ちに熱を込めるように瀬川あやかは歌いだした。感情の揺れに合わせ、ゆっくりと気持ちも上がりだす。サビで心を一気に開放した途端、そこへ爽やかな想いの風を覚えていた。この出会いを永遠に繋げたい嬉しさを歌ったこの歌詞は、彼女と仲間(ファン)たちとの関係性にも見えてきた。瀬川あやかは、歌を通し会場中の人たちの心を握ってきた。その気持ちに応えようと、満員のファンたちも熱い声を返すことで、彼女が伸ばした心の手をギュッと握り返していた。

 訪れた春の暖かさへ心がウキウキ弾みだすように、軽快にスキップを踏む演奏に合わせ、瀬川あやか自身も心地好くステップを踏みながら歌いだした。「春ヲ想フ」が場内中へ響きだした途端、会場中に咲き誇ったピンクに搖れるペンライトの光。ステージを照らす照明も桜色の輝きを投影し、ワクワクと心騒ぐ気持ちに嬉しい彩りを与えていた。なんて華やかな光景だろう。この歌が流れている間、そこには、心が薄紅色に染まる春真っ盛りな空間が生まれていた。

 華やかさは、さらに彩りを増していく。瀬川あやかの歌いだしたポップチューンの「MIKE」へ導かれ、気持ちにどんどん熱が加わりだした。感情が熱く高ぶりだす? 軽快に走る彼女の歌声と楽曲に合わせ、一緒に駆けだしたい気分だ。

募る想いを届けるように…

 場内から起きた「誕生日おめでとう」のコール。「自分が毎日を好きな音楽をやりながら過ごせている感謝の気持ちが、少しでもみなさんに伝わればと思っています」の声に続き、無邪気で明るい瀬川あやかの気持ちをダイレクトに投影するように歌ったのが「The Brightest Woman」。力強く輝きを放つ歌声を通し、未来を指し示すたくさんの光を集めては、瀬川あやかは熱いロックンロールな演奏に乗せ、その輝きを次々解き放っていく。彼女と一緒に騒ぎたい。何より、ワクワクした気持ちと手を取り合い、ともにはしゃぎたい。

 一変、しっとりとしたエレピの演奏に乗せて始まった『どんなに...』では、心の奥底から染みだす想いをじんわりと伝えてきた。どんなに近くにいても伝えられない想いを歌った楽曲ながら、心に秘めた想いを伝えたいからこそ、瀬川あやかはそのもどかしさを「どんなに…」へ投影しながら歌いかけてきた。言葉にならない想いがあふれだすからこそ、募る想いを届けるように彼女は歌い上げていく。その声に、心が惹かれていた。

 <会えない時間も好きだから 寂しさも勇気に変わる>。続くバラードの「カレイドスコープ」でも、瀬川あやかは切なく揺れ動く気持ちのままに歌唱。彼女の歌声は、何時しか僕ら(ファンたち)に向けた想いのようにも響いていた。<「2人なら大丈夫」>と歌われたら、その想いを信じたくなる。会えない時間や距離さえも乗り越えられる勇気を、瀬川あやかの歌声を通し優しく心へ注ぎ込まれた気持ちになっていた。

未来を照らす眩しい輝き

瀬川あやか

 次のブロックでは、瀬川あやかが初めてエレキギターを弾くことへ挑戦。とはいえ、普段からアコギを弾いているように、どんな風に弾くかよりも、どんな風に荒ぶるかがポイントか? 瀬川あやかの掻き鳴らすギターの演奏へシンクロするように、メンバーたちが音を重ねだした。その表情は、いつしか「クロスロード」へ。演奏はソリッドで力強さを抱きながらも、彼女の歌声や楽曲自体に温かさを覚えるせいか、終始優しくエモーショナル/ハートウォームな肌触りを覚えていた。そんな身近さを持った衝動が、格好いいじゃない。

 続く「夢日和」でも、心地好く駆けだした演奏へ瀬川あやかのギターが寄り添っていた。たくさんの光と熱を集めながら輝きだす演奏。<Shiny day>と歌う声が響くたびに、会場中に未来を照らす眩しい輝きが飛び散ってゆくようだった。光となった歌声のシャワーを浴びながら、心開放する喜びに誰もが満面の笑顔を浮かべていた。

本人には内緒のサプライズ

 4月27日は、自分が生まれた日。誕生日を迎えた自分のために。さらに、同じ4月27日生まれのギタリストのオーケンとキーボディストのケイヤンの2人も一緒に祝おうと披露したのが、「ハッピーハッピーバースデー」。この楽曲では、テンション高い状態のままに歌唱。<ババババースデイ>と歌いながら無邪気に弾け続ける様にガーリーな魅力を覚えれば、仲間たちも一緒に歌いながら、瀬川あやかの生まれた日に喜びとおめでとうのエールを贈っていた。しかもエンディングでは、瀬川あやかがバズーカ砲を手にテープ弾を発射する姿も。撃ち放つまでにちょっと戸惑っていたのも、ご愛嬌か(笑)。

 そのエンディングに合わせ、演奏陣が披露したのがHAPPY BIRTHDAYナンバー。本人には内緒のサプライズ。予想外の展開に嬉しい戸惑いを覚えれば、出てきたケーキに大感激。しかもケーキの表面には今回のツアータイトルのロゴが設えてあり、興奮を隠せない姿も彼女は見せていた。

心一つに優しく溶け合うように…

瀬川あやか

 「出来ればいいことばっかりがいいなとずっと思ってたんだけど、『0+0=0なのと、-1+1=0になるのだったらどっちがいいか』と言われたときに、嫌なことがあって、いろんなことを感じてパワーにして、いいことは喜んで、そのまま素直な気持ちで受け止めてやっていくほうがいいなーって思ったんです。だから自分の嫌なところも良いところもちゃんと見つめてあげて、愛してあげていくのがいいのかなぁと、昨日洗濯物を畳みながら考えてました」の言葉に続き、エグいコーナーということで、ここから盛り上がりナンバーを立て続けに演奏。

 熱い手拍子と弾け飛ぶロックンロールな演奏に乗せ、爽やかに歌った『WAKE UP !!』。どんどん高ぶる気持ちと熱気に拍車をかけるように届けた、ポップなロックンロールチューンの「はりーあっぷ」。触れた人たちをハッピーな心に塗り上げるこの楽曲では、瀬川あやかが、タンバリンを叩きながら歌唱。<Hurry,hurry>と呼びかけるたびに、場内からは<up!>という声も沸き上がっていたように、熱いやり取りも生まれていた。続く「妄想スニーカー」でも、オイオイ叫ぶファンたちと、熱い感情を交わしあうエモーショナルなライブを展開。この日のライブの中、最も熱い光景をこの会場に描き出していた。

 本編最後は、火照った想いのまま心一つに優しく溶け合うよう、切々としたバラード『you & me』を通し互いの気持ちを寄り添いあっていた。全員の想いが一つなったときに感じた、美しい高揚。その関係に嬉しさを覚えるからこそ、また彼女のライブへ触れたくなる。

笑顔に満ちた1日を過ごせるのなら

 アンコール前には、メンバー全員で寸劇を披露。その流れを抱いたまま、アンコールの最初に、仲間たちの手拍子とアコギの演奏を軸に据えたアコースティックスタイルで『ご都合よし子と足りてる男』を披露。楽曲に合わせ、一緒に楽しく弾けた流れを受け、最後に2ndアルバム『センチメンタル』同様に、『Have a good day!』を歌唱。瀬川あやかと会場中の人たちが一緒に「Have a good day」と掛け合う様のなんて楽しかったことか。こんな幸せな瞬間を、笑顔に満ちた1日を過ごせるのなら、何度だって瀬川あやかと<good day>を繰り返したい。

 ダブルアンコールでは、たった一人で瀬川あやかがステージに舞い戻ってきた。彼女は最後に、この会場にいる人たちの心へ明日へ繋がる笑顔を届けようと。何より、自分自身に明日へ向けての勇気を注ごうと、弾き語りで『未熟なうた』を歌いだした。心の奥から沸き上がる気持ちのままに歌う彼女。そのひと言ひと言が、胸にジンッと染みていく。途中からはマイクを使わずに、生声生ギターで熱唱。生身の感情をぶつけた歌声に、胸を熱くした。

 親しみを覚える姿に寄り添い、励まされ、ときには突っ込みを入れながらも、かならず笑顔と勇気を枯れた心へ注いでくれる瀬川あやかのライブ。この嬉しい出会いを、また続きに繋げていきたい。そう素直に思えていた。「したっけね!!」

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瀬川あやか
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