上白石萌音、majiko、瀬川あやか、多彩な女性歌手がステージ彩る

上白石萌音、majiko、瀬川あやからがステージ彩った
メジャーレーベルのポニーキャニオンより今年メジャーデビュー、あるいは近日デビュー予定の個性的な女性シンガーを集めたライブイベント『Girls Pop Collection』が先月27日、東京・青山RiZMでおこなわれた。今年大ヒットを記録したアニメ映画『君の名は。』でヒロイン役を演じ、一躍時の人となった上白石萌音(かみしらいし・もね)を筆頭に、個性あふれる3人の女性シンガーが、この日のステージを彩った。
豊かな表現力を感じさせない、深い歌心――瀬川あやか
この日のトップを飾ったのは、瀬川あやか。今年6月にシングル『夢日和』でメジャーデビュー、さらに10月には2ndシングル『恋の知らせ』をリリースと順調な滑り出しを見せた彼女は、普段は現役看護師として働き、二足の草鞋で奮闘しているという少し変わりダネのシンガーだ。その歌には、混じり気のない純粋な歌心を感じる。ピアノのイントロに合わせて、観衆に拍手で迎えられステージに登場した彼女のステージは「タイムマシーン」でスタート。シンプルにピアノのコード弾きの伴奏のみで歌っていた瀬川だが、そのメロディは不自然になにかに絡むような複雑なラインにはならず、またどこかで極端なテクニックを過剰に見せるわけでもない。豊かな表現力はあるがそれを感じさせない、自然にメロディの中に溶け込ませる歌心が、とても心地よい空間を生み出す。
続いたのは「サンサーラ」。マイナー感のあるサビを、最後にメジャーキーに変えるちょっと変わったアレンジのサウンドだが、そこになにか力強さと切なさ、はかなさが同居する複雑な心情のイメージを表現した曲だ。<生きてる 生きている その現(うつつ)だけが ここにある>。そんなギュッと心を掴まれるような詞がサビに乗り、聴くものの気持ちはさらに歌に引き込まれていく。一方ではMCにて親しみを感じさせるトークを展開し、アットホームな空気を演出するなど、明るい性格を見せる瀬川。アコースティックギターをかき鳴らし披露した、彼女の記念すべきデビュー作「夢日和」は、ポップで明るい雰囲気を見せる。さらに続けて自恋心を表した「恋の知らせ」をプレーし、ラストは観衆全員による手拍子を受け大いに盛り上がりを見せた「The Brightest Woman」と、短い時間ながらバラエティ感あふれるステージを披露し、観衆を魅了した。
広大な広がりを感じさせる表現――majiko
続いて登場したのは、ネットの動画サイト投稿がきっかけで頭角を現したという異色のシンガーソングライター・majiko。キーボードとギターのサポートミュージシャンに囲まれ、ステージの中央に座りたたずんでいたmajiko。ゆったりしたバラード「さよならミッドナイト」でステージはスタートした。絵に描いたようにきれいなものを、きれいに響かせるという表現ではなく、詞にはさりげなく現実的なキーワードをちりばめ、生々しい表現を切々と歌うことでそのコントラストを明確にする。そして一番響く音、言葉を力強く歌い上げる。そんな彼女が歌に描いた構図は、どうしても聴き入るほかない魅力にあふれている。特別にうまい歌い方をするわけでもなく、声質はどちらかというと若干ハスキーな感じもあるが、サビではまるで広大で何もないところで、どこまでも響いていくような、世界観の広がりを感じる。
2年前に亡くなった彼女の母に向けて描いたという「羊水の記憶」、「光の種」など、彼女が詞に描く世界はどちらかというと内向的な思いを綴った、かなり狭い範囲でのものになるが、そのどこまでも響いていくサビ、そしてそのサビを最高に響かせる様々な言葉やメロディなど、歌にちりばめられた彼女自身の様々な思いは、聴くものの奥底深くに積もっていく。MCではたどたどしさすら感じさせるキャラクターも、その歌の表現力の裏返しと考えると妙に納得できるものでもあり、彼女自身の人間性の深さすら感じられる。ファンキーなリズム要素を持った「植物園」でこの日のステージは終わりを迎えたmajiko。2017年2月にミニアルバム『CLOUD 7 』をリリースしメジャーデビューを果たす彼女だが、そのサウンドに触れた人たちが、どのように彼女の楽曲を受け止めるか、その反応も楽しみな限りだ。
歌い手自身を感じさせる声で、思いを表現--上白石萌音
そしてこの日のトリを務めたのは、女優・歌手として活躍する上白石萌音は、今年カバーミニアルバム『chouchou』でメジャーデビューを果たした。今後も女優、歌手と、自身の幅広い表現力を生かし、活躍の幅を広げることは想像に難くない。この日はオープニングでピアノの弾き語りによる「変わらないもの」を披露。自身「とても緊張した」と語っていたが、その歌には上白石萌音という”個人”を認識させる声色が強く感じられ、それをピアノの弾き語りでしっかりと打ち出したことで、ステージの最初からぐっと観衆の気持ちを引き込んでいた。
この日、1曲目以外は、すべてギター一本の伴奏で歌を聴かせた上白石。ピアノに比べ、繊細さも感じられるギターの伴奏は、声質に特徴のある彼女の歌声によく合う。この日は『君の名は。』のためにRADWIMPSの野田洋次郎が提供した楽曲「なんでもないや」も披露。テクニックよりも声に特徴があるだけに、過剰に感情移入をしない中、楽曲のメロディを生かした歌声を披露し、野田が描いた世界観をより深く表現していた。さらにこの日は新たな試みとして、テイラー・スウィフトのヒット曲「YOU BELONG WITH ME」をカバー。普段、この曲のようにノリのいい楽曲はやったことがないという上白石だったが、その楽しそうな歌声に会場は手拍子でサポート、大きな盛り上がりを見せた。
ラストは、喜劇王チャーリー・チャップリンの映画『モダン・タイムス 』の主題歌で、ジャズスタンダードとしても長く歌い継がれてきた曲「SMILE」。人々に向けた自身の思いをそのまま表現したこの曲で聴くものの気持ちを掴み、さらにはアンコールでスキマスイッチの「奏(かなで)」をカバー。かつて自身YouTubeの公式YouTubeチャンネルを持ち、アカペラで様々なカバーを披露していたという上白石。「奏」はその始まりの曲でもあった。その意味でも最後にこの曲を披露したのは、また新たなステップに向けての意気込みの表れであったようにも見える。曲の半分はアカペラで歌い切ったことからも、その思いは強く感じられた。こうして三者三様の女性ボーカルを堪能することができたこの日のステージ。彼女らの2017年の躍進も大いに期待したい、そう思えるステージだった。(取材・桂 伸也)
セットリスト
『Girls Pop Collection』 2017年12月27日 @青山RiZM 瀬川あやか majiko 上白石萌音 |
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