MONOEYES「最高の1日」アジア各国のバンドと見せた音楽の輪
『Far East Union Vol.3 』に出演したMONOEYES
MONOEYESの細美武士(Vo&Gt)を中心とし、交流のある海外ミュージシャンたちとともに彼らのホームグラウンドをサーキットするイベント『Far East Union Vol.3 』の日本公演が7日に、東京・Zepp DiverCity(TOKYO)でおこなわれた。【取材=桂 伸也】
『Far East Union Vol.3』は細美と、親交のある台湾のバンドFire EX.のリーダーであるサムが中心となりおこなわれているイベントで、これまで2015年と2016年におこなわれている。またこれまでMONOEYES、Fire EX.と、彼らの親交のある韓国のロックバンドを招きイベントを開催していたが、今回は韓国よりTHE SOLUTIONS、さらに新たに香港よりSupper Momentといったフレッシュでビッグな面子が登場。イベントとしてもさらにスケールアップした印象を示しており、音楽を通じて国の垣根を取り払うような、グローバルな様相を呈したイベントとして、この日訪れた観客を大いに興奮させた。
多くの観客がフロアを埋めた会場で、イベントスタートの少し前には細美が登場、今回初登場となったTHE SOLUTIONSのボーカル、パク・ソルを招き入れながら、“ちょっと隣の家にコチジャンを貸してもらえませんか? とか、あるいは八角を借り行くようなもの。そんな堅苦しいものじゃない”とばかりに、気軽に楽しんでもらいたいという思いをコメント。国を超えて集まったフロアの観客にもこのイベントの意義をアピールしていた。
THE SOLUTIONS(韓国)
4年前には日本でおこなわれた『SUMMER SONIC 2014』に出演、6月には、日本でのアルバムリリースが決定と、日本にも縁の深いTHE SOLUTIONSがこの日のトップバッター。ステージ側からフロア側に向けて照らされるライトの中、彼ら4人はステージに登場した。ソルを中心に、力がみなぎってしょうがないという思いを表情に湛える4人。オープニングで披露した、まさにこの日演奏するためのものであるような曲「Sounds of the Universe」では、エンディング間近にソルがフロアに向かって「Hey!Hey!」とリズムを送り煽る。さらに「Can't Wait」では「Let's sing together!」とコーラスをリクエストするなど、積極的に観客とつながりを深めようとアプローチする。
思わずふっと衝撃を受ける、ポップなメロディとハーモニー。J-POPや日本のロックなどの影響も大きく感じられるそのサウンドに観客は、徐々に腕を振り上げそのグルーブに追従していく。しっかりとそのサウンドを受け止めている観客にソルも「You guy's, (You are)Great! ever I see!最高です!」と、感謝と満足の思いを伝える。ラストは日本発売アルバムにも収録される日本語曲「Love Again」で締めくくられた。
FIRE EX.(台湾)
THE SOLITIONSの興奮も冷め遣らず、といったところで登場したのは、Fire EX.の面々だ。シンプルでキャッチーなメロディを持ちながら、サウンドは細美も「ゴリゴリのストロングスタイル。ケガの無い様に楽しんで!」と認める直球勝負。ストレートな8ビートナンバーを炸裂させ、序盤からフロアの観客の注意を、フロアに向けてグイグイと引き寄せていく。これまでMONOEYESと3度のイベントを共にしているだけあり、この日のステージでも観客とはほぼ“勝手知ったるもの”同士といった様子で、派手に叩き出されるビートに観客も一気に熱を上げていく。
捻りらしい捻りなど一切無し、実直にサビに向けてエネルギーをぶつけてくるその様は「これぞロックだ!」と改めて教えてくれるような雰囲気さえ見せてくる。「Tokyo!サイコー!」と叫ぶサムは、今年2月に台湾で発生した地震災害に対し、日本から大きな支援を受けたことにも「本当にありがとう!日本大好き!」と心からの感謝を告げた。またステージでは、細美が2曲でセッション。細美をフィーチャーして作られた「Don't You Fight」と、日本語詞バージョンの「島嶼」。興奮のステージに、フロアからは惜しみない拍手が送られた。
Supper Moment(香港)
そして三番手には、『Far East Union Vol.3』初の、香港発のバンドSupper Momentが登場。もちろんこのイベントも初登場だが、昨年活動10周年を迎えた彼らは、国内でも数々の音楽賞を受賞、ヒットチャートの常連と母国では大きな人気を誇る絶対的な存在となっている。しかし、そんな評価を細美は「俺には数字なんてどうでもいい。SUPPER MOMENTがカッコイイのは、こいつからが熱い漢たちだから」と一蹴、そんな言葉を受けながら、彼らはこのイベントに呼ばれたその意味をはっきりと示す、迫力のステージを披露し観客をさらなる興奮に包んだ。
壮大な空間を表現するかのような、エコーの効いたハーモニー音で彼らはステージに登場した。その時点でフロアからはクラップの嵐。ステージに現れ、曲が始まる前からボーカルのサニーはステージを左へ、右へとせわしなく動き回り「Hands up! Hands up!」とアピール。幅のあるZepp DiverCityのステージが狭く感じられるくらいにサニーが観客へ強烈なアピールを繰り返す。キャッチーな印象を感じさせながら、深さを感じさせるハーモニー、そして情熱たっぷりの歌を繰り出すサニーの、体を大きく使ったパフォーマンスに観客はその興奮の空気の中にただ身をゆだねるほかないという感じだった。
MONOEYES(日本)
『Far East Union Vol.3』の日本ステージもいよいよクライマックス。最期に登場したのは、映画『スターウォーズ』のテーマをSEに、雄大にステージに現れたMONOEYESの面々だ。「OK! 今年の東京一発目! ケガすんなヨ!」細美の開口一番、「Free Throw」をオープニングナンバーとして、ステージはスタートした。聴いているとじっとしていられない気分になる8ビートは、単に聴こえてくるサウンドだけからは見えない、彼らの放つエネルギーがあるからこそであろう。リズムが疾走し始めると、フロアの観客は隅から隅まで両腕を頭の上に伸ばし、クラップで応えた。
さらに「When I Was A King」「Parking Lot」「My Instant Song」「Roxette」とノンストップで飛ばしまくるMONOEYES。リズムが駆け足になるたびに、フロアの前線では、人の上をサーフを楽しむファンが、滝に向かう川のように流れていく。その様子に「最高だね!」と思わず声がこぼれる細美。「東京は俺たちにとっては、別に毎日いる普通の街だけど、海外から来た連中にしたらやっぱりさ、現地の音楽ファンが盛り上がってくれるのってメチャクチャ嬉しいんだよ」さらにこの日イベントを盛り上げたほかのバンドの公演ぶりを称える。
そしてフロアの観客に向けて「お前らみたいなのがファンで本当に良かったよ。今日はお前らのおかげで、出演者みんなにとって最高の1日になったよ!」と感謝の言葉を投げかけ、拍手喝采を浴びる。MONOEYESもまた、ストレートなロック魂が身上のバンドだけに、変化球無しの実直なビートによる猛攻を仕掛ける。観客もまたその音を待ってましたとばかりに真正面から彼らの思いを受け止める。13曲ものプレーはあっという間に過ぎ、アンコールを含め14曲、猛烈な熱気を余韻に漂わせながら、この日のイベントを締めくくった。
MONOEYESにはスコット・マーフィーという国を超えたメンバーも存在するだけに、このイベントのようなシチュエーションを望む思いも強い。「改めて思ったよ。人間って、人間じゃん?」ふと思ったことを、スコットは語った。それはパッと聞けば意味不明の言葉だが、ライブ中に語った細美の「何でこのドアの外では、同じように仲良く出来ないんだろうね」という言葉と重なり、このイベントの趣旨が、単なる音楽のイベントとしてだけでなく、何かもっと大きな意味を持つものであると感じずにいられない、そんな印象を放っていた。