筆者には5歳を満たない子供が2人いる。その子供が<ウララ ウララ ウラウラでウララ ウララ ウラウラよ♪>と山本リンダさんの「狙いうち」のサビを歌っている。1人は保育所でも<ウララ♪>と歌っているそうで、先生から「なんで知っているの?」と言われたそうだ。

 2人がこの曲を知ることになったのは、テレビの番組がきっかけだった。それも、30数年前に放送された『ウルトラマンタロウ』。ベロンという超獣がいるのだが、酒好きのベロンを倒すために、酒を飲ませて陽気にさせ、踊り疲れ寝かせるという、一風変わった手段が用いられる。町で暴れるベロンを踊らせるために少年たちが歌ったのが「狙いうち」とフィンガー5の「恋のダイヤル6700」などだった。

 筆者も同じ歳の頃、父に連れられた喫茶店でその回(再放送)を見て「恋のダイヤル6700」を知った。今でもあの時の記憶、あのメロディは頭に残っている。それが、30数年の月日が流れてまさか自分の子供が同じことをしているとは夢にも思わなかった。こうして音楽は受け継がれていくのだろうと改めて感じた。

 時代や世代を超えて知られる傾向について、デーモン閣下が以前、自身の経験談を踏まえて語っていたことがあった。

 インタビュー取材で小媒体の記者は、聖飢魔IIが魔暦元(1999)年の解散以降も信者(ファン)が増え続けている要因は何かと質問した。これに対し、閣下は「テレビ(の影響)もあるかも知れんが、インターネットだと思うな。あれは何年も前の映像も関係なく上がっている上、連続していくらでも見続けられるじゃない? そうすると、自分がいつの時代に生きているのかが麻痺してくるんだと思う。あたかも今活動しているグループであるかのように勘違いしちゃうわけだ。頭では分かっていてもそう感じないというか。そういう事で、若年層の信者が増えたりとかね」と語っていた。

 先の『ウルトラマンタロウ』は、定額制サービスのサブスクリプション(サブスク)で配信しており、最初は「子供が」、というより「懐かしい」という思いで筆者が見始めた。それが、子供にも伝播して、今では子供が釘付けだ。家では『ウルトラマンタロウ』を見るか、あるいは「狙いうち」や「恋のダイヤル6700」をかけて踊るか、というのが一つの楽しみになっている。

 「狙いうち」に関しては、野球の応援歌などで使われることも多いうえ、「恋のダイヤル6700」も含めてカバーされることもあり、触れる機会はある。ただ、数十年前の楽曲や映像作品が再び注目集めている機会は、ネット、そして、サブスクによって増えているというのも一つの傾向だろう。

 そう思うと、作品において「今と昔」という時系列もこの先の将来、無くなるのではないか、というとんでもないことも考えたくなる。ともあれ、作品がこうして世代を超えて生き続けるのは作品にとっても、作者にとっても嬉しいことだろう。【木村陽仁】

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