左から成井豊氏、久住小春、猪野広樹、西銘駿、納谷健、白又敦(撮影=木村陽仁)

 男劇団 青山表参道Xのメンバーで俳優の西銘駿(にしめ・しゅん)らが2日、東京・池袋のサンシャイン劇場で初日を迎えた初主演舞台『おおきく振りかぶって』の公開舞台稽古と会見に臨んだ。

 月刊漫画雑誌『月刊アフタヌーン』(講談社)で連載中のひぐちアサ原作漫画。高校硬式野球部を舞台に、中学生時代は野球部のエースながらも「ヒイキ」と疎まれ暗い性格になった主人公・三橋廉が、進学した高校で女性監督・百枝まりあ率いる硬式野球部に入り、チームメイトに支えられながら成長していく物語。西銘はその主人公を演じる。脚本・演出を手掛けるのは演劇集団・キャラメルボックスの成井豊氏。

しっかりとした口調で意気込みを語った西銘駿

 公開舞台稽古前におこなわれた会見には、西銘ほか、女性監督を務めた久住小春、西銘とバッテリーを組んだ阿部隆也役の猪野広樹、三塁手・田島悠一郎役の納谷健、外野手・花井梓役の白又敦、成井氏が出席した。

 野球ユニフォームに袖を通し、軽快な足取りに登場した西銘ら。小学生時代は野球を、中学生時代はソフトボールをやっていたという西銘以外は野球経験はゼロ。主演という立場だけでなく、経験者という観点からも“チーム”を引っ張る西銘は当初こそ「まわりにお兄さんたちがいて僕が千秋楽まで主演でやっていけるか不安」と思っていたようだが「稽古が始まって優しく接してくれて今は不安なく、千秋楽まで突っ走っていけると思います」と自信をのぞかせた。

 多くの報道陣がいたため緊張したのか「稽古してきたことを舞台上で、良い雰囲気で…ちょっと待ってください…」と言葉に詰まる場面もあったが、それでも「原作では表せきれない部分を舞台で表現するシーンもたくさんあるので、見どころは全てのシーン。三橋廉は内気で弱気なところもあるんですけど、それをみんながバックアップしてくれて人間性がどんどん変わっていくその姿は凄く好きで(そういう変化も)見どころ」としっかりとした口調で見どころを紹介した。

共演者の話に顔をむける久住小春

 一方、“女房”役の猪野は「絵が可愛らしいタッチが、その物語は熱く、凄く青春。いろんなスポーツ漫画があるなかで、色が確立していてそれを舞台でどうやるのかが課題でした。あとはキャラメルボックスさんという僕が憧れていたところで(できるのは嬉しい)。好きだからこそ稽古場では戦って、舞台上でも戦って最後まで走り抜こうと思いました」と意気込んだ。

 女性監督を務めた久住は「男勝りの役は今までやったことがなくて“自分に出来るかな”と思ったんですけど、稽古場からいっぱい怒られて『男に見えない!』と言われて“どうしようかな”と悩んだんですけど、稽古場からみんなで助けてくれて、なんとかきょう初日が迎えられたなと思います」と自身にとっては挑戦の役柄だったと明かした。

 野球経験はゼロだがバッティングセンターで鍛えたという白又は今回、頭を丸めて役柄に臨んだ。好きなシーンはどこかと聞かれ「舞台で描くのは夏大(夏の大会=甲子園出場をかけた地方大会)の1回戦目で桐青高校と僕ら戦うんですけど、(トーナメント式なので)1回負けたら終わりというのが高校野球の醍醐味。その時の桐青高校の主将、バッテリーの語りは凄く好きです。西浦高校としては、合宿が明けてチームとしての完成していくなかで、練習風景も舞台上で描いているんですけど、その練習風景もチームが出来上がっていく高校球児らしさが描かれているのでそこを見てほしい」と語った。

結束力の高さもうかがわせた。左から久住小春、猪野広樹、西銘駿、納谷健、白又敦

 “ムードメーカー”として紹介された納谷は「笑いの絶えない(稽古場だった)。楽しく稽古をさせて頂きました。初めの方から各々が稽古が終わった後もキャラクターとして(過ごしていて)、キャプテン役なのでみんなをまとめる発言をしてくれたりとか。僕自身も先輩を見習って場を温めていなかなければと思ったり。なかでも終わったあとに稽古場で柔らかいボールとバットを使ってみんなで野球したのが楽しくて。そういう稽古が終わったあともみんなと一つになっている瞬間があって、そういうところから絆が深まった」と稽古場の雰囲気を伝えた。

 一方、脚本・演出を手掛けた成井氏は、漫画原作の舞台化の難しさとして「一番苦労したのはまさに野球を舞台にやるということ。他のスポーツと比べて野球が一番難しいのではないか。理由はベースランニング。他のスポーツと比べて一塁、二塁、三塁、ホームと(位置が)決まっている。例えば舞台上でピッチャーゴロ。(バッターボックスと)一塁が近いからセーフになる。それをいかにアウトにするかをみんなで相談して、いろんな工夫をした。僕のアイデアだけでなくて役者にもいろんなアイデアを出してもらった。その結果、おそらくは野球の試合にみられると思う。お芝居の半分が野球の試合、その試合一つひとつが見どころ」と述べ、出演者も含めて作り上げた舞台であると明かした。

 そういう過程を経て初日を迎えた本舞台。“座長”の西銘は改めて「(この作品を)愛して下さっているみなさんにがっかりさせない思いで1カ月やってきました。自分自身も自問自答しながら役に向き合いながらやってきました。みんなで素敵な舞台にしたい。絶対に納得いくような舞台にしたいと思いますので応援をお願いします」と意気込んだ。

 舞台は12日に千秋楽を迎える。【取材・撮影=木村陽仁】

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