今やりたいのは人間的な音楽、Jazztronik 誰もできない音楽探求
INTERVIEW

今やりたいのは人間的な音楽、Jazztronik 誰もできない音楽探求


記者:小池直也

撮影:

掲載:18年02月03日

読了時間:約14分

高評価を得ようとすると同じ様な物ばかりになってしまう

――12月28日からは『Big Band Live〜Album「BB1」Release Live〜』もおこなわれますね。(取材日は12月中旬)

野崎良太(撮影=村上順一)

 実はビッグバンドでない時のほうが演奏での役割がとても多いんです。ビッグバンドはこれだけ人数が多いので、僕もそこまで前に出るシーンが多くない。鍵盤楽器が1人でやっても敵わないんです。華やかで、金ピカの楽器が勢揃いしていますから(笑)。

 ただ、その分他の人の演奏をよく聞く様になるんです。「あそこ間違えないかな?」と、そういうプロデューサー目線で見てしまう。それが自分では嫌なんですよ。もう少しライブを楽しみたいんですけどね。でも、間違いなく今年も凄く盛り上がるライブになると思うので楽しみです。これをやらないと、この年を終えた気がしない雰囲気ですよ。

――2018年にやりたいことなどはありますか?

 デビュー20周年としてのアルバムとかコンサートを再来年やろうと思っているので、来年はそこに向けての活動をもっと活発にやっていこうと思っています。GOODPEOPLEもそうだし、ビッグバンドもそこへの布石だと思って頂ければ嬉しいですね。

――これまでのキャリアを振り返って音楽シーンの変化などを感じますか?

 凄く沢山ありますね。レコード会社もここまで縮小するとは思わなかったですし、コンピューターがこんなに進化するとも思わなかった。もう全く違いますね。僕がデビューした、90年代後半は、コンピューター使えないエンジニアさんもまだいました。それこそ、テープを回しながらレコ—ディングしていた時代でしたね。それを観た最後の世代が僕の世代だったんですよ多分。

 今はネットでデータを送るのが普通になっていますけど、データを届けるという役目のためにニューヨークに行った事もありますからね(笑)。テープを持って、1泊3日で。戻って来てそのまま新潟でライブでしたよ。そんな時代でした。

 それに比べて、今は便利になりましたけど、その分色々な物がなくなってしまいましたね。必要だった人たちが必要なくなってしまったりして。だから、音楽についてはテクノロジーの進歩で恩恵を受けた部分と失った部分とで比べると、今は失った部分の方が大きく見えてしまっているかもしれません。

 特に、日本は物が売れる国だったので、ダウンロードとかストリーミングで売れなくなってしまったのは大きいですね。商売って、物が売れるのが一番儲かるので。売れないとアーティストが音楽を作る時にも予算が捻出できなくなる。なので、色々なところで今不具合が起きています。

――では、全ての制作をPCで完結できる現代についてはどうお考えですか?

 1人でやるスキルがある人がやったら面白いと思います。でも、僕はやっぱり音楽やる人が皆1人完結型になってしまったら、とてもつまらない。色々な人と一緒にやるから生まれる偶然的な物が音楽にはある。バンドが面白かったりするのもそういうところだったりします。逆に1人で作ったものをミュージシャンに演奏してもらう、という発想に向いたら良いと思いますけど。

 1人で作るのが悪い事では全くないですよ、僕もそうですし。でも、ミュージシャンの友達を作って、今回はサックスとトロンボーンとトランペットを録ってみよう、と今は手軽にできる時代になったんです。色々できる事をまだまだ使いこなせてない気がしますね。

 昔は機材がない分、知恵を絞って皆やっていました。何でも出来る分、工夫が要らなくなっているんですよ。今与えられている機材で発想を変えたら、もっと面白い事ができると思うんです。それが音楽に必要なんじゃないでしょうか。

――最近面白いと感じた音楽はありましたか?

 Bandcamp(米音楽サービス)が凄く好きで、インディーズアーティストの楽曲なんかを聴くんです。とっても面白い物もあるんですよね。そういう人たちは音質云々というよりは「やってみた」という感じがするんです。大体、海外の方が多いんですけど「音楽好きで色々やっています」という感じを受け取れるので、それを感じる人がもっと増えて欲しいですね。

 自分で作ったものって、SoundCloudやSNSで簡単にアップできるじゃないですか。皆の高評価を得られる様な物を作ってしまう時代なんですよ。そうすると、同じ物が出来てしまうんですよね。それが残念かなと。人間だったら、誰しも作った物を評価してほしいじゃないですか。こういう音源を上げた方がウケるんじゃないかな、と考えてしまいやすい世の中なのかもしれません。

――そんな中でユニークなアーティストを見つけるには、どうしたら良いのでしょう。

 難しいですよね。中々見つけられない、それが1番の問題です。なので、僕のプロジェクトで『Musilogue(ムジログ)』というプロジェクトを始めました。皆音楽をやりたいけど、自分の音楽の発表の術を知らないんです。そういう人たちを集めて音源を開発して、世の中に出すという事を今年からスタートさせました。

 個人じゃなくて、何か集合体があると見つけやすいんですよね。Bandcampくらいまで大きくならなくて良いかもしれませんけど。レコード会社も新人発掘とかやっていると思うんですけど、増えすぎちゃってわからないんですよ(笑)。以前はライブハウスや地方のプロモーターとかから「面白い人いるよ」と情報が入って、ライブを観に行って、ピックアップしていたんですけど。今はそれプラス、ネットで上ってくる情報の速さと多さが半端ないのでついていけないんです。

 僕も面白いボーカリストを探したいんですけど、見つけられない。「僕が探しています」という情報も歌いたいと思っている人たちに届かないと思うんですよ。皆が皆探しあっているのに、そこは意外と出会わないという状況なんじゃないですか。

――では最後に読者にメッセージをお願いします。

 今回は、打ち込みのダンスミュージックではないですが、聴いて貰えれば「こういうジャンルの音楽もあるんだ」と思ってくれる人もいると思います。「人間だけで演奏する音楽がこんなに迫力があるんだ」など、音楽を楽しんでいるというところを感じてもらえたらありがたいです。

(おわり)

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