家族や仲間で作ったという感覚、間慎太郎 ライブを意識した新作
INTERVIEW

家族や仲間で作ったという感覚、間慎太郎 ライブを意識した新作


記者:小池直也

撮影:

掲載:17年12月28日

読了時間:約14分

 シンガーソングライターの間慎太郎が去る11月22日に、ニューアルバム『YOU&ME』をリリースした。間自身によるセルフプロデュースで制作された本作は、バンドサウンドからアコースティックな雰囲気まで多彩な楽曲が収録されている。間は「ライブっぽいアルバムにしようとした」とコンセプトを話し、1曲目の「YOU&ME キミならいいぜ」について「この曲が出来て軸が定まった」と振り返った。演奏者など全て間自身が決めて活動しているという。間が「家族とか仲間で作ったという感じ」と話す、新作に込められた想いや経緯について訊いた。【取材=小池直也/撮影=村上順一】

こんなのやりたかった!と思えた

「YOU&ME」ジャケ写

――曲はどういう時に作られるんですか?

 いつでしょうね(笑)。作ろうと思って作りますよ。ふっと浮かぶことはあまりないです。メロディはすぐ出来るんですけど、歌詞が中々出来ないんですよ。だからメロディを作って、アレンジも作って、「何となくこんな感じの事を歌うわ」と演奏者に伝えて。レコーディングもしてしまうんです。今回は出来ている物もあったんですけどね。

 今年の頭に、秋にアルバムを出すという事はスタッフの方と話していて決めていたんです。ちょこちょこ曲も書いていました。

――今作を作るに当たって、コンセプトなどは立てられていたのでしょうか?

 前回のアルバム『この胸のざわつきを』は凄く大人っぽいアルバムだったので、今作ははじけたものが出来たらなと思って制作しました。ライブっぽいアルバムにしようというのもありましたね。

 1曲目の「YOU&ME キミならいいぜ」が出来るまではアルバムの軸がはっきりしなかったんですが、ご機嫌にはじけた曲が出来て定まった感じがありました。

 この楽曲は全体の中でラストくらいに出来た曲なんです。何か今までやってきた事の焼き増しみたいなものではないですけど、自分でしっくりきていないところがあって。この曲が出来た時に「こんなのやりたかった!」と思えたんですよ。

――それはセルフプロデュースという事も関係していますか?

 というよりも、アルバムだから「こういう感じの曲もいるかな」とか考えてやるのが嫌だったんです。「バラードが足りないから、バラード作らなきゃ」と考えてパズルを組み立てていくところから、はみ出したいと思って。漠然と4つ打ちのリズムが鳴っている曲のイメージはあって、それを「YOU&ME キミならいいぜ」という曲に出来たのが大きかったですね。すぐに1曲目にしようと思えましたし。

 この曲は、ギターを弾いていたら「キミならいいぜ」というフレーズが勝手に口から出てきたんですよ。なので、この言葉を言いたいなと。それで、この言葉を言うためには、コーラスが入ってきて、とサビから作っていきました。「き、き、ききっ君ならいいぜ」という「き、き、ききっ」というリズムが特に気に入っていて、メモしていたのも覚えています。

 ジャケットのデザインも「この曲だけ聞いてください」とお願いして作って頂きました。元々切り絵が良いなと直感で思っていたんですよ。探したら友達の友達くらいに切り絵ができるOLさんがいたので、紹介して貰いました。

 それに、セルフプロデュースにこだわったというわけではないんです。自然になってしまったという感じです。プロデュースして頂くと、色々なアイディアを出してくださったり、今まで開けた事のなかった扉を開けてくださる楽しみもあるんですけどね。

――3曲目の「朝が来たとき」は日本のR&Bっぽい曲調が独特に感じました。

 こういうバラードは結構好きです。アレンジではなく、大き目のバラードが凄く好きなんですよ。この曲はピアノで作りました。こういう曲は2、3年前だとエレキギターをガーンと鳴らして、ドラムをバンとやる様な感じで作っていたんですけど、違うアプローチが良いなと思ったんですよね。10年くらい一緒にやっているピアノの方と相談して「音数が少なくて、ピアノのインパクトがある曲調に仕上げたい」という方向性になっていきました。

 弦も1番最後に「入れたいな」と思って、ヴァイオリンの方に急きょお願いしました。やっぱりストリングスは凄いですよ。それだけで雰囲気が凄く変わるじゃないですか。僕は全くお任せで見ているだけでしたけど(笑)。何パターンか弾いてもらって「どれが良いですか?」という形でフレーズは決めていきました。

――ちなみにギターで作曲される時と、ピアノで作曲される時で違いというのはあるのでしょうか?

 メロディの持っていき方がピアノとギターで違います。僕はギターの方が長いのでコード進行の手癖みたいなものがやっぱりある。前もこんなの作ったなという風になってしまったりもします。

 ギターで作っていて「良い感じだけど、サビが出てこないな」という時も、敢えてピアノに差し替えて弾くとすんなりメロディが出来るという事がありますね。楽器を弾く事は基本的に好きなので色々試しています。

先輩の言葉に背中を押されている

間慎太郎(撮影=村上順一)

――収録曲で推し曲などあれば教えてください。

 どれも大事な曲なんですけど「人生、スパイスと共に〜広島汁なし担担麺のうた〜」ですかね。依頼を受けて作ったんですけど、自分が作った曲の中でもめちゃくちゃ良く出来たと思っていて。レギュラーをやっているテレビのディレクターさんが、汁なし担々麺を広めているんです。それで「汁なし担担麺の15周年を記念して作ってほしい」とお願いされました。

 依頼を頂いて「たーんたーんめーん」みたいな曲で大丈夫かなと最初は考えていたんですよ。でも、希望を訊いたら「疲れ切ったサラリーマンの方が『明日も頑張ろう』と担々麺を食べて思える様な曲にしてください」と。これは「たーんたーんめーん」と言ってる場合じゃないなと(笑)。

 希望に沿う為には大きな世界観にしなければいけない、とまず思いました。歌っている内容も結構前向きなので、ストリングスは入れようと。ピアノで始まったら良いなというアイディアも浮かんで、アレンジはすぐ出来ましたね。

――全体的な流れを聴くと、4曲目からドラムのビートではなく、パーカッションだったり、リズム楽器がいなかったりという構成になっていました。これについてはいかがですか?

 今までその事に気付いていなかったです(笑)。曲順はいつも悩むんですけど、今回は1週間くらいで出来ました。最初と最後が決まっていたので早かったですね。「ふたつの願い事」は出来た時から最後にしようと思っていて。

 「ふたつの願い事」自体は去年の秋くらいに出来て、すぐライブでもやっていたりしていたんですよ。演奏しながら、次のアルバムの最後に入れようと考えていました。曲が出来て、すぐサポートメンバーの人たちとスタジオに入って、デモ音源を作る段階でアレンジも出来ていました。

――レコーディングはいかがでしたか?

 今年の1月からちょこちょこ録って、ゆったりしていましたね。無理せずに健康的な感じでした。「夜遅くなる前にやめましょう」みたいな感じで。僕が指示を出したというよりは、メンバーと話しあってという様な感じでした。でも、最終的な判断はしなければいけないのでそこだけはしっかりやって、あとは“やいやい”言わなかったですよ。

 ライブを意識していたという事もあって、あまり録り直さず仕上げています。「直しとけばよかったかな?」と思う曲もあるんですけど、それはそれでその時のエネルギーがあったので、全然納得できる仕上がりになりました。演奏に関しては、気心の知れている人たちだったので良い演奏してくれたなという感じです。

 なので結構、家族とか仲間で作ったという感じがありますね。僕はいつも誰に演奏してもらうか、というところから全て自分で決めていて、スケジュール管理も自分でしています。「○○はいつが空いてるぞ」とか考えるのは、めちゃくちゃ大変ですよ(笑)。ライブが始まる直前まで翌月のライブの詳細をライブハウスとやりとりしている事もありますよ。

 でも自分でやる事以外、やった事がないんです。12年間マネージメントは全部自分でやってきました。そういうのをやっておかないと精神的にも良くないんですよ。急に他の人にお願いするのも、サイクルが狂ってしまいそうで。ただ、それをやっておくと、ライブハウスの方や企画者の方と関係が深くなるんです。力にもなってくれますし。

――気が早いですが、次回作などの構想はあったりしますか?

 やりたい事は沢山あるんですけど、核となるのは曲だと思うので。良い曲を作らないとなという気持ちはあります。とすると言葉は大事ですよね。作品として残しておく為には何か伝わる物がないといけないよなと思います。

 メロディラインも大事だし。良い曲って人それぞれ違うじゃないですか。「どんな曲が良いか」という事がわかっていたら、どんどん出来ると思います(笑)。それを探すために作っているということはありますね。その場の雰囲気もあるかもしれませんし。

 例えば、僕がいきなり演歌を歌い始めたら「きた!」と興奮する人もいるかもしれないじゃないですか。でもその時に自分が納得して、自信を持ってお届けできる曲が1番良いと思います。

――12月には山崎まさよしさんがホストを務める『三宅伸治 30周年 祝!大宴夜 in 大阪」にも出演されますね。先輩方と対バンされますが、こういう機会に関してはどの様な気持ちですか?

 とっても楽しいです。全てが勉強になる事ばっかりですね。佇まいもそうだし、音楽に対する認識も、ライブに対するモチベーションも凄い。自分も後輩が出来たら、そういう先輩にならないといけないなと思わせてくれます。音楽を凄く楽しんでいらっしゃいますし、力の抜け方も格好良い。自分がどういう音を出すべきなのかを常に考えていて、打ち上げになったらずっと飲んでいらっしゃる(笑)。それも格好良いんです。

 僕と山崎さんと三宅さんは、飲みますよ。すっごいです。でも3人とも記憶がない。楽しかった事だけは残しているんですけど(笑)。山崎さんは昔から良くしてくれています。飲みに連れていってくれたり、最近も『宮古島ミュージックコンベンション2017』で一緒に演奏したり。

 先輩方にさりげなく「慎ちゃん大丈夫やで」と言って貰えると、すごく安心しますね。難しいお話よりも「好きなようにやったらいい」という言葉に毎回背中を押してもらっています。

――後輩とのお付き合いはいかがですか?

 もちろんあります。ザ・ビートモーターズというバンドとかは仲が良いです。ボーカルが僕の3つ位年下なんですけど、良い歌詞書きますし、よく飲みにも行きます。彼らと音楽の話をしていると楽しいですね。

孤独は全く感じない

――アルバムを引っ提げたツアーである『間慎太郎 LIVE TOUR 2017-2018〜YOU&ME〜』も始まっていますね。感触はいかがですか?(取材日は11月下旬)

 もうアルバム全曲ライブで披露しましたよ。まだ広島を終えただけなのですが、初日にしてはとても良かったです。お客さんも良くて。1週間、毎日リハーサルを重ねたんですけど、本番の方が流れは良かった。この後は北陸に向かうんですけど、北陸はまた人が温かくて演りやすいんです。そこから京都や四国なので、それも楽しみにしています。

 東京はまだ決まっていないんですけど、来年はやりますよ。ファイナルは4月の地元・神戸です。どうなっていくんでしょうね。曲は自分で作った曲なので育てていかねばとは思っています。丁寧に1本1本やっていこうかなと。

 基本的に演奏はライブハウスからカフェ、バーなど、どこでもやります。大きいライブハウスなら照明の数も多いので曲が映えるなと感じますけど、小さい所でしか気づけない事もあります。

――色々な場所に旅に出ている間さんなんですけども、現在お住まいの東京はどのように見えていますか?

 地元よりも東京の方が住んで長いですね。東京は好きですよ。せかせかしていたり、人が多いですけど、それが嫌という事はないですね。僕が人ごみに行かないというのはあるかもしれませんけど。最初は「東京や!」という感じで街に繰り出したりしていましたが、今は何とも思わないくらいの感じになってきました。馴染んできたのかもしれません。

 ずっと関西に住んでいる友達は「上京」という事について「羨ましい」と言いますよ。「田舎があるとか、上京するという事が自分にはなかった」と。それを聞いて「確かにそうだな」と思います。

――「東京は孤独を感じる」ということもよく聞きます。

 「ひとりぼっちだな」という孤独は全く感じないですね。そういう意味で言えば、曲を作る時は常に1人なので。東京に憧れがあったからかもしれませんね。小学校6年生の時からずっと東京に行きたいと思っていました。

 箱根駅伝が凄く好きだったんですよ。そしたらオカンが東京でやっていると教えてくれて。だから東京は凄い所だとずっと思っていました。「めっちゃ面白いとこやん」と感じていたのをよく憶えています。生で見たいなと。何も知らないので「(駅伝は)2日間もやるんだ!」と驚いていましたね。

 「孤独」って嫌なものですかね? ひとりぼっちではないんですよ。ライブハウスに行けば友達もできるし、第3者的に自分を見て「切ないな」と思う事も嫌じゃないです。寧ろ、そういう時も大事なんじゃないですか。1人でご飯を食べられなかったり、注文出来ない人がいる、というのも信じられないです。

――離れてみて、ツアーファイナルの地元・神戸というのはどうでしょう?

 地元という事で大事ですし、特別な意識はあります。でも、やっぱりツアーが終わると「東京に帰ろう」と思うんです、毎回。だから改めて気づくというよりも、東京が僕にとって「リセットできる街」なんでしょうね。それに地元に帰りたいと思っていたら、既に帰っていると思います(笑)。

――最近、音楽以外に興味があることはありますか?

 ツアーもあるし、体調管理の為にプールに通ったりしています。ランニングもしますよ。運動は精神的にもやっぱり良いですね。やっぱり日々の生活です。ライブの時だけ一生懸命というのは嘘なので。日頃から整えておこうと意識しています。

(おわり)

作品情報

間慎太郎

「YOU&ME」

2017年 11月22日リリース
YRCN-95287 3000円
発売元:YOSHIMOTO MUSIC ENTERTAINMENT CO.,LTD.

01.YOU&ME キミならいいぜ
02.エブリデイ!!
03.朝が来たとき
04.クローズ
05.どうでもええけど
06.テイクイットイージー
07.R yan
08.空に唄う
09.人生、スパイスと共に~広島汁なし担担麺のうた~
10.ふたつの願い事

ライブ情報

『間慎太郎 LIVE TOUR 2017-2018~YOU&ME~』@千葉

【日程】2017年12月28日(木)
【会場】柏04
【出演】間慎太郎/ゲスト 高木芳基(ザ・マスミサイル)、秋葉正志(ザ・ビートモーターズ)
【OPEN/START】19:00/19:30
【前売/当日】 3,000円/3,500円(共に1ドリンク別)
【チケット予約】メール予約shintaro.liveyoyaku@gmail.com(お問い合わせ先: 04-7168-3688 )

『間慎太郎 LIVE TOUR 2017-2018~YOU&ME~』@佐賀

【日程】2018年1月19日(金)
【会場】佐賀GIN
【出演】間慎太郎/徳久望/唄人羽
【OPEN/START】19:00/19:30
【前売/当日】 3,000円/3,500円(共に1ドリンク別)
【チケット予約】メール予約shintaro.liveyoyaku@gmail.com(お問い合わせ先: 0952-27-2017 )

『間慎太郎 LIVE TOUR 2017-2018~YOU&ME~』@福岡

【日程】2018年1月20日(土)
【会場】福岡MusicBar Shangri-la
【出演】間慎太郎/徳久望
【OPEN/START】19:00/19:30
【前売/当日】 3,000円/3,500円(共に1ドリンク別)
【チケット予約】メール予約shintaro.liveyoyaku@gmail.com(お問い合わせ先: 092-713-2002 )

『間慎太郎 LIVE TOUR 2017-2018~YOU&ME~』@倉敷

【日程】2018年1月21日(日)
【会場】Cookiejar
【出演】間慎太郎/吉永拓未/UNBRANFORD
【OPEN/START】16:30/17:00
【前売/当日】 2,500円/3,000円(共に1ドリンク別)
【チケット予約】メール予約shintaro.liveyoyaku@gmail.com(お問い合わせ先: 086-425-9901 )

『間慎太郎 LIVE TOUR 2017-2018〜YOU&ME〜』@横浜

【日程】2018年02月04日(日)
【会場】横浜日吉Nap
【出演】間慎太郎
【OPEN/START】17:00/17:30
【前売/当日】 3,000円/3,500円(共に1ドリンク別)
【チケット予約】メール予約shintaro.liveyoyaku@gmail.com(お問い合わせ先:045-561-8872(16:00~22:00))

『間慎太郎 LIVE TOUR 2017-2018〜YOU&ME〜』@山口

【日程】2018年02月23日(金)
【会場】communitiy cafe & Liquor shop wakayama
【出演】間慎太郎
【OPEN/START】18:30/19:30
【前売/当日】 3,000円/3,500円(共に1ドリンク別)
【チケット予約】電話(0836-83-6761)【受付:月~土10:00~19:00】またはフェイスブックイベントページ、ホームページの予約フォームよりお願いいたします。

『間慎太郎 LIVE TOUR 2017-2018〜YOU&ME〜』@大阪

【日程】2018年02月24日(土)
【会場】大阪GANZ toi,toi,toi
【出演】間慎太郎
【OPEN/START】18:00/18:30
【前売/当日】3,000円/3,500円(共に1ドリンク別)
【チケット予約】メール予約shintaro.liveyoyaku@gmail.comまたはe+(イープラス) ※イープラス一般販売は10月21日(土)10:00~発売開始です。
(お問い合わせ先:06-6366-5515)

『間慎太郎 LIVE TOUR 2017-2018〜YOU&ME〜』@名古屋

【日程】2018年02月25日(日)
【会場】名古屋sunset BLUE
【出演】間慎太郎/他ゲストあり
【OPEN/START】17:00/17:30
【前売/当日】 3,000円/3,500円(共に1ドリンク別)
【チケット予約】メール予約shintaro.liveyoyaku@gmail.com(お問い合わせ先:052-325-3410)

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