誰でも奇跡は溢れている、Lenny code fiction 覚醒したサウンド
INTERVIEW

誰でも奇跡は溢れている、Lenny code fiction 覚醒したサウンド


記者:榑林史章

撮影:

掲載:17年12月15日

読了時間:約10分

 4人組ロックバンドのLenny code fictionが12月2日に、新曲「AWAKENING」を配信リリース。メンバーは片桐 航(Vo&G)、kazu(B)、ソラ(G)、KANDAI(Dr)の4人で、2012年に結成、昨年テレビ東京系アニメ『D.Gray-man HALLOW』OPテーマ「Key ‒bring it on, my Destiny- 」でデビュー以降、3作連続でアニメテーマソングを担当した。サウンドプロデューサーにONE OK ROCKなどを手掛けるakkinを迎えた楽曲は、スケールが大きくソリッドで、片桐 航のメッセージ性の強い歌詞とエモーショナルなボーカルが魅力。激しさとキャッチーさが融合した「これがLenny code fictionです!と呼べる、ど真ん中の楽曲」と話す。タイトルの通りバンドとして覚醒した音を聴かせる同曲について聞いた。【取材・撮影=榑林史章】

これがLenny code fictionです!

Lenny code fiction

――3rdシングル「Colors」リリース以降は、どんな活動を?

片桐 航 フェスに出て、ツアーもあったし。あとは新曲制作ですね。

kazu ワンコーラス分のデモがたくさんあったので、そこから各曲の方向性を決めてフルサイズにアレンジを詰めていくような作業でした。

――そんな中から生まれたのが、今回の「AWAKENING」という曲ですね。

片桐 航 歌詞は最近になって完成させたんですけど、曲自体はけっこう前からあって。実はデビュー曲を決めるときに、「Key ‒bring it on, my Destiny- 」と競ったくらい気に入っていて。結局デビュー曲は「Key〜」になりましたけど、この曲も良いタイミングで出したいと思って温めていました。“これがLenny code fictionです!”と言えるようなサウンドです。ポップさと、激しく力強いものの間にいると言うか。

 今ちょうどツアー中で、そのツアータイトルが「AWAKENING」というんですけど、今後に向けての起点となるツアーになっています。その大事なタイミングで、Lenny code fictionのど真ん中と呼べるような曲を出すのは、自分たちにとって大きな意味を持つと思っています。

――そもそもツアータイトルに「AWAKENING」と付けたのはどうして?

ソラ 僕が付けたんですけど…デビュー以降、いろいろなものを吸収して、それはすごく良いことだったのですが、結果的にどこに向かえば良いのか分からなくなってしまって。それで、何とかしたいという気持ちがある中でツアータイトルを考えていたら、今の自分たちには「覚醒」という言葉がキーワードになるんじゃないかと思ったんです。

 これなら、どういうツアーにしたいか、自分たちの意気込みも感じてもらえると思ったし。最初は「レニーの覚醒」だったんですけど、ちょっとダサイということで、英語で「AWAKENING」と。それで、その言葉に引っ張られるようにして、今に至っているという感じです。

kazu 「レニーの覚醒」って、何かの映画のタイトルで聞いたことあったし(笑)。でも覚醒という言葉は、今の僕らにぴったりだと思いました。前回のツアーは成功したけど、至らなかったところもあって。それを乗り越えて、変わろう、進化しようとしている気持ちが感じられます。

KANDAI ライブをやっていても、自分たち自身どこか楽しめていないところがあったんですね。それで、自分たちが楽しいと思える自由なライブをまずやろう、と思いました。結果、初日を迎えてすぐ「覚醒が始まったんじゃないか?」と思えるようなライブが出来て。それで、ツアーをやりながら今もまだ覚醒し続けているという感覚です。

――星5つのレアカードをレベルマックスにして、星6つにする作業みたいな。

ソラ 確かにそんな感じです。

kazu 今、『遊戯王』が頭によぎりました(笑)。

全員が覚醒した

片桐 航

――曲として作ったときは、どんなイメージだったのですか?

片桐 航 歌詞はもっと別の世界観だったんですけど、サビのメロディが頭に残る感じで、サビから始まる構成は最初に作ったときのままです。楽器のアレンジは、最初とはだいぶ変わりました。

――メロディは、シンプルでスッと入ってくる親しみやすさがあって。それとは対照的に、楽器陣が暴れまくっていますね。

ソラ ギターの話をすると、3rdシングルで確立された暴れ馬感じゃないけど、1曲を通してギターソロのようなフレーズが散りばめられています。頭から最後まで、ずっと違ったメロディを奏でています。

 ギターの師匠からも、「こんなにたくさんのフレーズは覚えられない」と言っていただきました。今のバンドシーンで、ここまでリードギター感をぶちこむギタリストはいないんじゃないかなというところで、僕は勝負したいと思っていて。それが表れたギターだと思いますね。

――師匠からはどんなことを教わっているんですか?

ソラ ニュアンスと言うか、ちょっとした弾き方でプレイの幅が広がるというところです。今までは優等生的に、綺麗にミスらず弾くことが大切みたいな考えで、ピッキングもしっかりフレーズを弾くための弾き方だったんです。でも、もっと個性を出していくべきだと思ったし。レッスンと言っても、ギタリストとしてのアイデンティティみたいな、精神的な部分の話も多いです。右手の当たり方一つで魂の乗り方が変わるということも教わりました。やっぱり魂を込めた音は、お客さんに伝わりますよね。今のツアーでは、それを実感しています。

――そういう覚醒があったわけですね。ドラムも覚醒を?

KANDAI 曲全体の雰囲気が、激しさと同時に急に開けるような、空気が変わる感じがあって。2番のAメロはドラムがドカドカ鳴っていて、手数を多く入れていますけど、逆にサビはシンプルな演奏にしていて。Dメロの開ける感じでは、難しいことをせずに世界観を大切にしています。細かく変化するんですけど、出すところと抜くところで、メリハリに気をつけて演奏していますね。

ソラ

――ベースはギターとドラムより控えめですよね。

kazu これまでのシングル表題曲の場合は聴きやすく、わりと抑えめでやっていて。でもこの曲は、僕らを代表するライブチューンにしたいと思ったので、今までのカップリング曲のような攻めの姿勢でアレンジをしています。

 ギターは第2のメロディくらいの感じで鳴っていて、ドラムもすごく手数があるので、いつもはそれらを引き立てるように意識しているんですけど、この曲はちょっとした隙間を見つけてベースをどんどん前に出すようにしていて。あと、自分が気持ちいいと思うフレーズを入れています。だから、ただのシングル曲という感じではないものに、仕上がっていると思います。

――そういうサウンドのレベルアップに押されて、歌ももちろん覚醒している。

片桐 航 はい。やっぱりサビがしっかり聴こえるようにということもありつつ…。AメロBメロの、サビまでに行く低いトーンのところでも歌詞がけっこう力強いので、低いトーンのメロディだから歌もテンションを下げるのではなく、力強さも意識するようにしていて。それに対してメリハリの効いた、ちょっと開けるDメロでは、歌詞とメロディに寄り添う感じで歌っています。

 だから歌うときは、滑舌やトーン、力強さまで細かく意識しなくてはいけなくて、すごく難しかったんですけど、決して苦しかったわけではなくて。でも、今まででいちばんっていうくらい疲れたけど(笑)。いろんなニュアンスで歌うことを試せたのは、すごく有意義な時間でした。

――ずっと一辺倒に歌うのではなく、歌詞の言葉に合わせて、1曲の中で熱量や感情の出し引きを考えるみたいな。それによって、よりドラマティックに聴こえるわけですね。Dメロの前の英語のコーラスも、パッとシーンが切り替わる感じがあってすごく良いですね。あそこは何を歌っているんですか?

ソラ そこは歌詞にも書いていないので、僕も気になっていました。

片桐 航 そこはもう一人の自分が、自分自身に問いかけている感じです。歌詞は、耳を澄ませて聴いてもらえれば(笑)。

誰の日常にも奇跡が溢れている

kazu

――歌詞には<息をしている>というフレーズが出てきて。テーマとしては、どんな感じですか?

片桐 航 生きることと、死ぬことがテーマになっていて。生きてることの証が呼吸だし、活き活きとしていることの例えにもなっています。例えば新しい世界に飛び込んでいって、その世界の空気を吸うということ。何かに生きがいを感じている人が、それに携わっているときだけが息をしていると感じるとか。ただ生きているのではなく、その人が存在している、その人がそこで生きているという意味もプラスしたかったので、そういう表現をしました。

――みなさんは、この音楽シーンで息をしているわけですね。

片桐 航 そう。そういうことです。ステージを降りたら、息をしていないかもしれない(笑)。

――後半に<あいつら>という言葉もあって。やんちゃな雰囲気が出て良いですね。

片桐 航 そこは学生時代を思い出して、そんな表現をしてみました。あいつらが誰のことなのかは抽象的で、ムカつくヤツとか腹立つヤツとか。好きなヤツのことを<あいつら>って、使うこともあるけど、基本的には敵対している相手に対して使いますよね。

――倒すべき相手、挑む相手がいることで、余計に燃えることもありますからね。みなさんは、歌詞について思うことはありますか?

ソラ 個人的には<戦い続けてる君を誰も見ない日もあるだろう>という歌詞が、すごく好きです。頑張ってるのに認めてもらえなくて、それでも戦い続けなくちゃいけないときって、きっとみんな経験があると思います。そういう誰もが共感出来ることを、Dメロというちゃんと言葉が届く場で歌えているのは、すごく良いなと思いますね。

――言葉を伝えることを意識したと。

片桐 航 はい。だからここだけ一気に開けて、サウンドも静かめになっていて。Aメロでは自分自身と戦って、直前の2番のサビでは<あいつら>と歌ってマイナスな感情も出しているので、ここだけは自分自身寄り添うと言うか。優しさがかいま見えるメロディだったし、それに合う言葉を映えさせるサウンドを意識しています。

kazu それにこの歌詞は、一発目に<奇跡>という言葉が出て来るんですね。それが印象的だし、僕たちの中では<奇跡>という言葉もテーマとしている一つです。ここは昔に出来たときから変わっていないところで、すごく好きですね。

KANDAI 僕も<奇跡>という始まりが好きです。聴いて、「はっ!」とさせられる言葉だし。レニー的に大事な言葉で、そこに“航らしさ”が詰まっている印象です。

片桐 航 1行目は当時からお気に入りのフレーズだったので残して、それ起点にして以降を広げていった感じです。

KANDAI

――バンドとして求めている奇跡とは?

片桐 航 僕は、日常にいっぱい落ちているものが奇跡で、ありふれた一個一個の現象を奇跡だと、気づかせるようなことを今までもずっと書いてきています。過去の挫折もそうだし、今ここにいることもそう。そういう誰の日常にも奇跡が溢れていることを気づかせたいと思っています。

――2018年は、何か豊富はありますか?

片桐 航 2017年を振り返って、前半と後半はまったく別人と言えるくらい、意識が変わって。フェスに出たくらいで、バンドのあり方をメンバー内で話し合う機会を設けて。そのときに、本当に自分たちが求めているものを求めてみようと。前は知らないことが多すぎて、あれもこれも欲しいと欲張ってしまって、ちょっとゴチャゴチャしてしまったと言うか。

 そのいっぱいかき集めたものを、一回整理していく作業を後半からやるようになって。ゴチャゴチャしていたものがスッキリして、バンドはこれだというものが、今はしっかり見えている感じです。

 部屋がめっちゃ汚かったけど、掃除が完了しましたみたいな感じなので、2018年も部屋を綺麗なまま保ちたいですね(笑)。必要なものと不必要なものが明確になったので、また余計なものを増やして散らかさないようにしたいです。

作品情報

Lenny code fiction
Digital Single「AWAKENING」
12月2日配信リリース

ライブ情報

12月15日 福岡・福岡天神graf(ワンマン)
12月24日 東京・恵比寿リキッドルーム(ワンマン)

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