<記者コラム:オトゴト>
 ここ何年か人工知能、AI(Artificial Intelligence)という言葉がテレビやラジオ、ネット上で多く見られる。先日見たテレビ番組でも、AIがこの世の99パーセントの仕事を奪うということを紹介していた。ディープラーニングという機能が人間の脳を超え、なかなか難かしいと言われている漫才などもパターン分析で可能だというから驚きだ。

デザイン&インテリアに関する英メディア・dezeenが公開した動画のキャプチャー画像(Instagramより@dezeen)。「The Third Thumb」と呼ばれるサポート装具は音楽にも変化を与える?

 もちろん音楽の世界にもAIの波は訪れている。例えば10数年ほど前から自動的に作曲やアレンジをしてくれるソフトやアプリが登場し、当時はなんとなく“それっぽい”感じで、微妙なクオリティではあったが、AIによって現在はかなりクオリティまできている。

 ミックスダウンと呼ばれるステレオで聴けるようにする作業も、卓越したエンジニアが耳と経験で音を作り上げてきた。だが、現在はAIを使ったプラグインも登場し、その音源を解析し、音を構築してくれるという。

 例えば、素人の判断が難しいボーカルと他の楽器の周波数の被りなど、どこがぶつかっているかを解析し、最適なイコライジングを提案してくれる。こういったことがマスタリングでも同様におこなわれており、しかもなかなか侮れないクオリティだ。こうなってくると作曲もアレンジもミキシングも個性が求められ、かなりの人が淘汰されていくという恐怖を感じている。

 AIではないが筆者が驚いたのは、「The Third Thumb」と呼ばれるRoyal College of Artの学生が開発したという“3本目の親指”だ。英のデザイン&インテリアに関するメディア「dezeen」(オリジナル記事=dezeen/Controllable Third Thumb lets wearers extend their natural abilities)が報じたところによれば、Bluetoothで動作する装着可能なサポートマシンで、公開された動画や画像には、小指の隣に装着。ものを持ち上げたり、レモンを絞ったりするときの補助的な役割があるという。ギター演奏はその一例だ。

 これを装着してギター演奏している動画も公開されているが、音が流れておらず、奏法もコード進行だけであり、「The Third Thumb」が機能を果たしてるかは分からないが、このようなものもっと進化していけば、これを使用して楽器を弾くことも出来そうだ。指が一本増えただけでもテクニックなどの可能性は大いに広がるし、そこから新しい音楽も生まれるのではと期待感はある。

 もちろん手放しでは喜べない危機感もあるが、人間が持つアナログの価値観がより重要になってくるだろう。基本的に人は生き様などストーリーがあるものを好むし、我々はパターン分析では表現できにくいものを磨いていくしかない。【村上順一】

参考動画
Controllable Third Thumb lets wearers extend their natural abilities

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