ワンマンライブ『竜馬四重奏 2nd. アルバム発売記念イベント「THE LIVE SAMURIZE -review-」』をおこなった竜馬四重奏(撮影=近澤 幸司)

 竜馬四重奏が1日に、東京・原宿クエストホールでワンマンライブ『竜馬四重奏 2nd. アルバム発売記念イベント「THE LIVE SAMURIZE -review-」』をおこなった。竜馬四重奏が秋に発売するメジャーセカンドアルバム『SAMURISE』からの楽曲を発売日前にライブで披露するプレミアムライブで観客を魅了した。

 竜馬四重奏は、バイオリン奏者・竜馬と津軽三味線の雅勝(まさかつ)、篠笛の翠(すい)、鼓の仁(じん)からなる。それぞれが自身の楽器で名のあるプレーヤーとして活躍しつつ、2008年に結成。以後インディーズ・アーティストとして活躍を続ける一方、2014年にはスペイン「日本スペイン交流400周年」3都市ツアー、2016年には「JAPAN EXPO THAILAND」に出演するなど、国内外問わず注目を集め、2016年にアルバム『Neo Zipang』で、満を持してのメジャーデビューを果たした。

 近年、日本でも和楽器バンドなど、日本の音楽文化を再構築しようとする動きが現れつつある中で、メジャー・アーティストとしての本格的な活動もまだまだこれからという彼らの動向は、当然今後も注目の的となるだろう。この日のライブは、メジャーでは2枚目となるアルバム『SAMURISE』のリリースを記念しておこなわれた。演奏としても全曲初披露という特別なステージ。今後の彼らの行く先を占うという意味でも、重要なライブとなった。

想像力を掻き立ててくれるサウンド

(撮影=近澤 幸司)

 ステージ奥の左右には金屏風が置かれ、中央後方には仁の使用する太鼓などの和楽器。和の雰囲気を漂わせる会場に訪れた観客は、どちらかというと高めの年齢層の観客が集まっており、中には和装をしたファンも姿を見せていた。ステージ前に流れていたBGMで、シカゴやホイットニー・ヒューストンなどの、80年代アーティストによるスケール感のあるバラードがこの雰囲気をまた特別なものにしていた。

 この日のステージは第1部、2部と前後半に分けた構成でおこなわれた。ステージ開始前の静寂の中、青い光がステージから天井に向けて照射される。そしてSEで鳴り響く雷の音と同期して点滅。続いて流れてくる雨の音。その音に続いて、いよいよステージに竜馬が現れた。しばしステージ中央で立ち尽くしていた彼だが、やがて雅勝、翠、仁とメンバーがステージにやってくると、そのタイミングに合わせ、メロディーを奏で始める。そしてそのメロディーに追従するように翠と雅勝がそれぞれの楽器の音色を奏で始めた。

 この日のステージのオープニングナンバーとして鳴り響いたナンバー「大地」は、冒頭のSEによって表現されたイメージを、さらに膨らませるものだった。雷と雨、その厳しい気候の中に、まるで風の中を華麗に舞うように竜馬と翠の奏でるメロディーが響く。さらに、しっかりとした大地を表すかのように雅勝の三味線がリズムを刻み、そのイメージを仁の掛け声と鼓の音が、力強さを感じさせ、どこか遠い風景を彷彿とさせる。やがて彼の声は、馬で駆け回る者の声へと変わり、その大地がとてつもなく広い場所であることを想像させる程、スケールの大きなダイナミックな演奏だった。

 彼ら4人の演奏は、非常に聴く者のイマジネーションを掻き立ててくれる。4人の作り上げる音は、もちろんインストナンバーであることもその理由であるのかもしれないが、音自体に風景や、何かの光景を示す訴求力が非常に強く感じられる。それは音の一つひとつに深く意味を持たせている、そして無駄なものは一つもないくらいに洗練されたメロディー、ハーモニーとして、曲の中にそれぞれの音を成立させている。

 彼らの音は「バイオリンと和楽器という、ユニークな構成のバンド」というような単純な表現で片付けられるものではない。何らか自分たちが表現したいもの、世界観がある。楽器はたまたま各人がそれぞれのものに長けており、一番表現に適しているからであろう。第一はそれぞれの曲の聴こえ方がどのようになっているのか、それこそを彼らは自身にとって最重要事項と、いつも心にとめている、そんな印象すら感じられた。

ライブ感あふれるパフォーマンス

(撮影=近澤 幸司)

 第1部は雄大なスケールを感じさせる「Oriental Bird」やバラード調の「HIDE & SEEK」「月華美人」、そして楽曲制作のチャレンジとも見られる、文字通りファンキーな「幕末ファンク」、そしてゆったりとした16ビート調の「SAKURA」と、色彩感あふれるプレイが続く。「SAKURA」では後方で腕を振る陣の動きに合わせて、観客もリズムに合わせてワイパーの様に腕を振り、一体感を演出。対照的に第2部では、ステージスタートからいきなり4人がステージ前列に並び、ハードロック調の「風神」からスタート。続くナンバー「焔」まで、緊張感にあふれたサウンドを披露。

 さらに仁が掛け声と鼓で観客を煽り、第1部とは打って変わって興奮に満ち溢れた熱いステージを展開。途中「TSUBAKI−暁−」「彩雪」を挟みながらも、英ロックバンドのCOLDPLAYのカバー「Viva La Vida」から、さらに「Rising Sun」とヘヴィメタルを思わせるサウンドが爆発し、興奮は最高潮に。ギターソロの様に三味線のソロをバシッと決める雅勝の姿に皆視線をくぎ付けにし、称賛の歓声が飛ぶ。さらにタオル回しまで飛び出し、会場のボルテージもヒートアップ。

 そして、そんな興奮のひと時が過ぎると、いよいよステージはクライマックスへ。竜馬のバイオリンメロディーが、冒頭で感じさせた広大な奥行き感と同じ感覚を印象付ける雄大なバラード「once upon a time」でエンディングを迎えた。続くアンコールで選ばれた楽曲は、USA for Africaの「We are the world」、そしてBananaramaの楽曲で有名なダンサブルナンバー「Venus」と意外な選曲で楽しませた。彼らは自身のカラーにピッタリ合わせたサウンドを披露し、最後までステージを盛り上げた。

 今回リリースされる『SAMURISE』のタイトルは、SAMURAI=侍と、SUN RISE=「日出ずる国」という二つの言葉を掛け合わせた造語だという。竜馬はそのタイトルに「そんなジャンルがいつかできたらと思う」と彼らのサウンドをアピールする。日本のサウンド、日本人が作ったサウンド、侍の作ったもの…その言葉には、様々な意図が見えてくる。それは、彼らの作る音に明確なビジョンがあるから。その思いは、この日ライブで披露されたサウンド、パフォーマンスにそのまま表現された。初のツアーで、さらなる進化を続けることが予想される竜馬四重奏は、これからそのビジョンをさらに鮮烈に表現していくことだろう。

【取材=桂 伸也】

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